（危なっかしいな・・・） 高校生くらいだろうか——。アルバイトを始めたばかりと思われる、真っ黒に日焼けした坊主頭の新人店員が、トレーからコーヒーを持ち上げようとして少しだけこぼした。 背の高いスラッとした若...

  （要するに、自分の筋肉で自分の骨を傷めつけた・・ということか） 静かにあばらを撫でながら、わたしはそう呟いた。さっき、アルマジロのようにギュッと丸まった瞬間、あばら骨のあたりから板チョコを割ったような鈍いク...

  本日は所用で、上野・・というか御徒町にある「PARCO_ya（パルコヤ）上野」へ向かわなければならなかった。わたしにとって上野界隈は疎遠な地域であり、御徒町などさらに未知の土地といえる。そんな「山手線右上エ...

  わたしは今、呆然としている。なぜなら、食べ物がないからだ。 今日はなにかと忙しかった。そのおかげで、クライアントとの電話をすべて後回しにしたところ、夕方から深夜まで途切れることなく通話し続けるハメ・・いや、...

  天井が高いわが家には、シーリングファンなるプロペラが設置されている。購入当時は「こんな、オシャレカフェでグルグル回っているようなアイテム、所詮は見た目だけのお飾りに決まっている」と高を括っていた。だが、スイ...

  わたしは今、トウモロコシを食べている。サツマイモ・・というか焼きイモ好きで名を馳せるわたしだが、それと同じくらいトウモロコシも大好物なのだ。 ただ一つ、トウモロコシがサツマイモに勝てない理由があるならば、そ...

  （あれ・・・わたしってジャイアンか？） ふと、そんな考えがよぎった。当たり前の如く伸ばした手を見ながら、そう思ったのである。   ＊   「お土産買ってきたんです・・これ」 そう言いなが...

  「恵比寿駅ぃ、お出口は左側です」 混雑する山手線車内に、穏やかな車掌の声が流れた。大勢の人間が乗り降りする中、わたしの目の前で的確な指示が響く。 「前のお客さまに続いてお進みくださぁい」 耳を澄まさなければ...