リュックの紐 URABE/著
オレはリュックの紐だ。紐といっても肩紐のことではない。 リュックの紐と聞けば、背負う者の肩を保護するための太くてクッションの効いた立派な肩紐が、真っ先に思い浮かぶだろう。そしていつだってアイツにばかり注目が...
オレはリュックの紐だ。紐といっても肩紐のことではない。 リュックの紐と聞けば、背負う者の肩を保護するための太くてクッションの効いた立派な肩紐が、真っ先に思い浮かぶだろう。そしていつだってアイツにばかり注目が...
今日ほど現実逃避を考えた日はない——。 まさかとは思うが、地方出張で目的地へ到着する時間に目が覚めるとは、思ってもみなかったからだ。 * オレはたしかに、朝の6時に目覚ましをセットした。しかも、携帯電話とア...
俺は自他ともに認めるズボラ人間だ。とにかく面倒くさがりで、わざわざ何かをするくらいなら何もしないほうがマシだと思っている。 その典型が料理だろう。俺の唯一無二の趣味は"食べること"ではあるが、決して料理はし...
シンデレラにガラスの靴を履かせた王子様は、こんな気持ちだったのだろうか——。 ボクは、シンデレラのしなやかな足を全身で包み込んだ。あぁ、なんと細くて美しいおみ足なんだ。 ——そしてボクは、彼女...
——私は、眠り姫にでもなったのかしら。 気が付くと深夜0時、なんと私は20時間も眠っていたらしい。アイマスクのせいで、寝ている間はずっと真っ暗闇。おかげでいつまでたっても夢の世界をさまよっていたんだ。 安眠...
(・・・おぉ) 近所のカフェで優雅にコールドブリューを味わっていたところ、ガラス張りの壁の向こうを一枚の枯れ葉が舞った。 まだ9月の半ばだが、もう秋が近づいてきたのか——。 タンクトップに短パ...
バカげた話ではあるが、俺はこの目で見たんだ。人間を殺す新聞紙が存在するということを——。 最初は単なる事故だと思っていたが、アイツは、あの新聞紙は意思を持ってターゲットを定め、静かにそして確実...
首都高から新東名高速道路を進み、路面状態の悪い旧道を乗り越えて建設途中の中部縦貫自動車道を突き抜け、わたしは福井県勝山市に到着した。 道中、何度か休憩を挟んだため、片道500キロの移動に7時間半を費やしたが...
最近よく来るこのオトコ、とにかく気に食わねぇ。商社マンだかなんだか知らねぇが、カネに物言わせて偉そうな態度とったり、ノーブランドを見下したりする精神が許せねぇぜ。そんなクソみてぇねオトコに引っ掛かったオレら...
僕は山手線のシート。しかもドアに隣接するシートだから仕切り板がついていて、そこへもたれかかることができるんだ。 僕たち電車の座席は、やはり端っこが圧倒的な人気者となる。さらに、僕のように仕切り版を従えるシー...
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