不正受験で全国トップに輝いた私が思う「真の不正」とは

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高校2年のとある土曜日。

バスケ部だった私は、試合でどこかの地域へ遠征していた。

 

その日は、全国統一模試が行われた。

進学校であるうちの学校の生徒らも、例外なく模試を受験した。

ただし、試合や遠征が重なる時期だったため、体育会系の部活に属する生徒は、ほとんどが受験できなかった。

 

全統模試は、どうやら全校生徒が受験しなければならないらしい。

つまり、試合や遠征で当日受験できなかったメンバーは、後日、自宅で受験することとなった。

 

ーー後日

 

たしかあれは日曜日だった。

気持ちのいい朝で、高校生ながらもカフェラテなど片手に、優雅な模試前のひとときを過ごしていた。

 

試験たるもの、冷静さが必要。

万全な状態で臨んでこそ、日ごろの学習の成果が発揮できるというもの。

 

私はマグカップを置くと、さっそく、シャーペンを握った。

 

 

自宅模試から2週間ほどたったある日の午後、校長室へ呼ばれた。

そこには、担任と学年主任、ほかにも見覚えのあるメンツが立っていた。

みんな若干、青ざめている。

 

「模試は、自宅で受験したんですよね?」

 

校長は、緊張した面持ちで私に尋ねた。

 

「はい」

 

なぜこのような当たり前のことを聞かれているのか、理解できない。

 

「最近は、勉強を頑張っていたのでしょうかね」

 

またもや、意味不明な質問をされた。

 

「いえ、とくには」

 

回りくどい言い方ばかりせず、単刀直入に聞いてもらいたい。

只事(ただごと)ではないことくらい、高校生の私でもわかる。

大のおとなが雁首そろえて青ざめた顔をしていれば、なにか事件が起きたことくらい察しが付く。

 

そんな重々しい空気を切り裂くように、学年主任が口を開いた。

 

「この前の全国統一模試で、おまえが全国5位だったんだよ」

 

 

ーーま、まさか

 

 

もはや言葉は出なかった。

県内でもトップなど取ったことのない私が、全国で5位?

 

そんなはずない、と自らが思うならまだしも、この学校の教師らは誰一人として、私がそんな高成績を出すとは、微塵も思ってもいない様子。

 

あげく、県教育委員会から「感謝の言葉」が届いたらしく、教員一同、青ざめたらしい。

 

ここまで信頼されていないのも珍しいが、裏を返せば、絶大な信頼を得ているということかもしれない。

 

ーーなぜなら、教師らのその反応が正しいからだ

 

県内トップどころか、校内トップすらとったことのない私が、なぜ模試で全国トップがとれるのか。

 

「うちの学校の顔に泥を塗ってくれたな・・」

 

担任は絞り出すように言葉を吐いた。

 

 

なぜだ。

自校の生徒が全国トップの成績を収めたのだから、喜ぶべき快挙のはずだ。

それがなぜ、こんな重苦しい空気になっているのだ。

 

 

「模試は、どのように受験したのですか?」

 

校長は努めて冷静に質問した。

 

「ふつうに、家でテーブルに向かってやりました。

たまに寝っ転がったりしたけど」

 

それを聞いた担任は顔を紅潮させたが、私は無視した。

 

「非常に聞きにくいのですが、カ、カンニングなど、してないですよね?」

 

 

ーーこれか。

こいつらは全員、この質問の答えが知りたかったんだ。

舐めやがって。

 

 

「してません。

まる一日使って埋めましたけど」

 

私はいけしゃあしゃあと答えた。

こうなったら、カンニングが「真の不正」なだけで、カンニング以外の手段ならば「セーフ」といえる空気感だ。

 

だれが自宅でカンニングなんかするか。

私にはカンニングにおける強いポリシーがある。

正々堂々と、命がけで行うのがカンニングだ。

カンニングは己の人生を賭けた闘いなのだ

誰も見ていないような平和で安全な場面で行うカンニングなど、カンニングではない。

それこそ単なる不正行為だ。

 

 

怒りに震えながら、舐め腐った教師どもを睨み返した。

 

 

幼気(いたいけ)な高校生の私は、傷ついた。

しかしその失敗をバネに、実際のセンター試験では、英語・数学・国語の3科目で満点を叩きだしてやった。

 

そう、私はマークシートの鬼だったのだ。

 

記述式ではボロが出るが、マークシートの勘は凄まじく冴えていた。

さらに、マークシートはカンニングがしやすい。

 

もはやマークシートのテストなら、ぶっつけ本番でもかなりの確率で突破できる気すらする。

(完全に気のせい)

 

 

ーーこうして私の学習方法は、学ぶことよりも、いかに完璧なカンニング力を身につけるかに偏っていった

 

 

※これらはすべてフィクションです

 

Illustrated by 希鳳

 

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