15年前の彼氏の形見あるいは呪い

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15年前に付き合っていた、アイツの祟りか——。

久々に、昔のオトコを思い出した。なぜなら、嫌でも思い出さざるを得ない出来事が起きたからだ。

そして金輪際、アイツを思い出すことはない・・いや、思い出したくもないのである。

 

 

膝を傷めたわたしは、作業に集中できないため痛み止めを探した。だが、薬の世話になることなど滅多にない我が家には、常備薬なるものが存在しない。

それでも、もしかしたら1粒くらい転がっているかもしれない——そんな淡い期待を胸に、薬ボックスを漁ってみた。

 

案の定、ボルタレンのような鎮痛剤はどこにも見当たらない。数年前に歯医者でもらったセレコックス錠が2粒ほど発見されたが、これは万が一のためにとっておこう。

(そうやって、このセレコックスも3年が経過しているわけだが・・)

実際のところ、耐えられないほどの緊急を要する痛みではないため、「鎮痛剤があれば世話になりたい」という程度の気持ちだった。

そんな中途半端な思いで、あのジップロックに触れたことが大きな間違いだった。

 

 

いったい全部で何百錠あるのだろうか——。ずっしりとした重みのジップロックには、カラフルな錠剤が詰め込まれていた。

そう、これは15年前に付き合っていたオトコの形見・・というか置き土産の"薬の山"である。その当時は「せっかくの処方薬だから、いつか飲んでやろう」と思い、大事にしまっておいたのだ。

ところが滅多に薬を飲まないわたしは、ただただ大事にしまい込んでいるだけで、なんと15年も経ってしまった模様。

 

(いよいよ、こいつの恩恵に与るときがきたわけか)

久しぶりに当時の彼氏を思い出しながら、ジップロックから100錠ほどあるロキソニン60mgを取り出した。若干、ロキソニンの文字が古いフォントに感じるが、まぁロキソニンであることは間違いないわけだし、気にすることはない。

とはいえ、これらの薬はヘタすると20年前に処方された可能性もあるわけで、どこぞの"秘伝のたれ"ばりに品質のほどは大丈夫なのだろうか——。

 

いずれにせよ、服用してみなければ効果は分からない。色や見た目に異常は感じられないため、わたしは思い切ってロキソニンを一粒飲み込んだ。

(よし・・これで、しばらくすれば膝の痛みも治まり、仕事に集中できるだろう)

 

 

先に結果を述べておくと、服薬から4時間後に猛烈な腹痛と下痢に見舞われた。

だがこれは、必ずしもあの"古代ロキソニン"のせいとはいえない。他にも飲み食いしているため、それらのうちのどれか・・という可能性も十分考えられるわけで。

 

そこでわたしは、今朝も古代ロキソニンを服用した。仮に下痢がロキソニンのせいだったとしても、それで済むのなら大した問題ではない。とりあえず、膝の痛みが少しでも治まるならば——。

 

 

それから一時間ほどたった頃、わたしは半蔵門線の車内でとんでもない吐き気に見舞われていた。

実はわたし、今までの人生で吐いた記憶がないのだ。そのため、身体反応の中で「嘔吐」に最も恐怖を感じており、胃腸からこみ上げてくる物質はなにがなんでも押し戻すことで、嘔吐を避けてきたのである。

そんな誇り高き勇者が、まさかの強烈な吐き気に襲われるとは——。

 

目的地で下車したわたしは、すぐさまドラッグストアへ駆け込んだ。そこでソルマックと液キャベを購入すると、その場で2本とも飲み干した。

(二日酔いでもなんでもないのに、なぜわたしがこんな目に遭わなければならないのか・・・)

それでも吐き気は治まらず、ついに夕方になっても悪心の恐怖から逃れることはできなかったのである。

 

 

この流れだけを聞くと、

「15年以上前の薬を飲むなんて、とんでもない愚か者だ!」

とバカにされそうだが、じつはもう一つ思い当たる節がある。それは、昨日から兆候が見られる"気道の違和感"に起因するものだ。

 

わたしはこの時期、毎年かならず「咳喘息」を発症している。そしてその始まりは、いつも喉の違和感と全身の倦怠感が引き金となっていた。そのため、気道が腫れあがり閉塞する前に、吸入式のステロイド剤を使用し最悪の事態を防いできたのである。

今回のこの違和感、これはまぎれもなく咳喘息の始まりである。ならばいち早く、シムビコートを吸入しなくては——。

 

こうしてわたしは、ステロイドを吸いながら15年前の鎮痛剤を服用したのだ。まさかこの"組み合わせ"のせいで下痢や悪心が起きたとは思えないが、それでも、山ほどストックしてある処方薬を捨てるのは、どうにも忍びない。

なんとかして他のせいにしたいのだが、やはりどう考えても消費期限切れなのだろうか・・・。

 

「薬品も食品も同じだよ!口に入れるものには期限があるんだから、すぐに捨てて!」

薬剤師の友人が怒るのも、無理はない。

 

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