(カリフラワーのチャーハンみたいなものかな・・)
「カリフラワーライス」という文字を見た瞬間、わたしの脳内には、細かく砕かれたカリフラワーと白米をバターで炒めたチャーハンが思い浮かんだ。
とはいえ、カリフラワーのチャーハンというものにお目にかかったことはない。だが想像するに、決して相性の悪い組み合わせではないはずである。
そもそも、チャーハンというのは混ぜ物との相性というより、バターやゴマ油といった油脂によって左右される。
無論、味覇(ウェイパァー)や塩コショウなどの調味料も重要だが、個人的にはバターライスが好物のため、やはり油がしみこんだ米を目の前にすると、よだれが止まらないのである。
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近所にインドカレーというかネパール料理店があるが、そこの目玉商品であるシーフードチャーハンは、具材のメインがカニカマで、万能ネギとあさりのむき身が二粒入っている程度の貧相な内容だ。
それでも、わたしはそこのシーフードチャーハンに病みつきになった。味覇以上の隠し味が練り込まれている可能性もあるが、とにかく「どこがシーフードなんだ!?」と突っ込みたくなるほどの具材であるにもかかわらず、炒め加減が絶妙に上手いのである。
どんな油を使っているのかは不明だが、そんじょそこらのチャーハンとは比べ物にならないくらいに、二人前でも三人前でもぺろりと平らげてしまうほどの美味さなのだ。
そりゃ確かに、その店で初めてシーフードチャーハンを出されたときは、思わず絶句した。
(オイオイ、これはシーフードというか、カニカマを割いて散らしたものじゃあないか・・・)
シーフードというからには何らかの魚介類が入っているはずだが、ぱっと見で確認できるのはカニカマと万能ネギだけである。
よくよく考えてみれば、インドカレーだかネパール料理だかの店で、シーフードチャーハンがメニューにあること自体が不自然。百歩譲って店長の好みだとしても、南アジアの人間が作るシーフードチャーハンなど、所詮この程度のものだろう——。
わたしは半ばあきらめつつ、カニカマチャーハンをスプーンにのせると静かに口へと運んだ。
(・・・う、うまい!!!)
まったく期待していなかったことも相まって、予想以上の美味さに驚かされた。具材がカニカマと万能ネギだけだろうが、そんな付属品云々よりも、米の炒め方がめちゃくちゃ上手いのだ。
・・いや、むしろカニカマと万能ネギという安っぽい具材だからこそ、焼き飯のクオリティが引き上げられているのかもしれない。
もしも、このチャーハンに高級なタラバガニだのむきエビだのが入っていたら、そちらの味に引っ張られて焼き飯の味わいが損なわれる気がする。
だからこそ、あえて少量のちんけな具材を混ぜ合わせることで、米の炒め具合いを引き立たせているに違いない。
——このような"まさかの成功体験"も後押しし、わたしはさっそくカリフラワーライスを注文した。
といっても、カリフラワーライスを単品で頼んだわけではない。カオマンガイ(海南鶏飯)のライスを、通常の白米からカリフラワーライスに変更したのである。
(バターの香り漂う、熱々ふんわりカリフラワーチャーハンに、しっとり茹でられた胸肉のスライス・・あぁ、想像しただけで腹が鳴るぜ!)
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目の前には、カリフラワーライスのカオマンガイが置かれている。いざ、実食——。
スプーンを口に入れた瞬間の衝撃といったら、言葉にできないほどの驚きとショックだった。なんせ、カリフラワーライスは冷たかったのだから。
カリフラワーライスというのは、熱々のふんわりチャーハンなどではなく、ボイルしたカリフラワーのみじん切りだったのだ!!!
もちろん、それはそれでなかなか美味かった。カリフラワーの歯ごたえがライスっぽさを演出しているし、しっかりと咀嚼することで満腹感も得られるわけで、決して残念な選択ではなかった。
だがわたしは、勝手に勘違いをしてカリフラワーのチャーハンを想像し、舌も胃袋もその前提で待ち構えていたのだ。その落差というかなんというか、熱いはずが冷たくて米のはずが野菜で・・なんとも複雑な心境に陥ったのである。
とはいえ、なんだかんだでカリフラワーライスを完食したわたしは、これはこれで悪くない食べ物だ・・と密かにほくそ笑んだのであった。
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