4杯目は「幻」となったビスクカレー

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久々にもうやんカレーへ行こうとしたら、残念ながら定休日だった。そこでやむなく、近くの串焼き屋(ビストロ)へ入ることにした。

 

入店する時点でもうやんカレーのことは忘れたつもりだったが、なんとメニューに「ビスクカレー」という文字を発見してしまった。

ビスク(Bisque)とは、フランス料理の一つで、甲殻類を使ったクリームベースのスープを指す。よく見る料理として、オマール海老のビスクやビスク風パスタが有名。だが今回は「ビスクベースのカレー」ということで、非常に期待が持てる。

 

しかし不思議なもので、「カレー好き」と一括りに言っても種類がある。ちなみに私が好きなカレーは、「ザ・日本のカレー」だ。インドやネパール、タイなどのスープカレー的なやつよりも、テレビCMでウケそうな、あの家族団らんのカレーが好み。

その理由の一つとして、インド的なカレーは「ライスの質には一切こだわらない」という点が挙げられる。米っぽいものが添えられていえれば、もはや立派なカレーライスとなるわけで、その米っぽいものの質にまでこだわらないのが、インド的カレーの特徴ともいえる。

 

だが日本のカレーはそうはいかない。カレールーと同じくらい、いや、それ以上にライスが上質でなければならないのだ。

日本のカレーは、ライスだけでもどんぶり一杯は平らげてしまうほど米が美味い。しっとりツヤツヤの白米は、そのままでも海苔と一緒でも生卵と混ぜても、米の土壌が上質なおかげで何をしたって美味い。そこへ、トロッとまろやかなカレールーが覆いかぶさったとすれば、それはそれは「極上カレーライスの誕生」となるのは目に見えている。

 

そしてこの「ビスクカレー」とやらも、写真を見る限り日本のカレーである。やや赤みがかったビスクベースのカレールーは、スープストックトーキョーのオマール海老のビスクを彷彿とさせ、香ばしい匂いが漂ってきそう。

それが、ふっくらと豊かな白米の上に惜しげもなく寝かされているわけで、もうやんカレーを諦めたはずの私の心に、再び熱い闘志が漲った。

 

まずは一つ、注文してみる。うん、想像通りの味で美味い。たしかにカレーではあるが、ビスクの味もしっかりと効いており、海老の仄かな香りが鼻の奥を通り過ぎていく。

さらにもう一つ、注文してみる。上品なビスクの風味とともに、辛すぎず甘すぎずカレールーとふっくら白米とのコンビネーションに舌鼓を打つ。

 

(うぅむ、何杯でも食えるぞ)

 

3杯目を注文するにあたり、このカレーに「大盛り」が存在するかどうかを尋ねた。5分に一回の間隔でビスクカレーを注文される側としても、どうせなら一度で大量に運んだほうが無駄な労力を使わずに済むわけで。

すると、非常にショックな回答を得ることとなった。

「申し訳ありません、ご飯がもうないんですよ・・・」

なるほど、追加で米を炊くには時間が中途半端だ。しかしこれは、もしかすると他の客への配慮かもしれない。

 

――コイツ、このままだと何杯でもカレーを食べるつもりだ。そうなると他の顧客の分まで食い尽くす恐れがある。それだけは死守すべく、米がないことにしよう。

 

(たしかにこれほどまでに美味いビスクカレー、メニューの隅っこに記載しておくのはもったいない。より多くの客に味わってもらうべきだ)

女は引き際が肝心。そこで私は、本日ラストのビスクカレーを注文した。

「米はあるだけでいいので、カレーをありったけかけてください」

――最後の悪あがきとともに。

 

言うまでもなく、3杯目のビスクカレーも美味かった。いま思えばあの店はビストロなわけで、肉やワインがメインのはず。つまりビスクカレーは隠れメニュー的な存在だろう。

だが飲食店あるあるで、隠れメニューこそがイチ推しだったりするもの。

 

そうだ、次回はランチあたりに突撃してみよう。ライスがない、と言われないために――。

 

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