ピスタチオ容疑者

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ここへきて再び、紛らわしい事件が勃発するようになった。こういうのを「なりすまし詐欺」とか「景品表示法違反」というのではなかろうか——。さすがにそれは言い過ぎかもしれないが、こちらからすると「言い過ぎ」とはいえないほど騙されているわけで、もういい加減に分を弁(わきま)えてもらいたいのである。

昨日も、帰り道に立ち寄ったコンビニで、喜び勇んで手を伸ばした先にあったのは・・・ニセモノ。

(チッ、デカい面しいて陳列されてんじゃねぇよ!!)

さらに、その隣もその下も並んでいるのはすべてニセモノ——。この世はいったい、どうなってしまったんだ?

 

ここまでわたしを蹂躙(じゅうりん)し、ちゃぶ台返しをしそうな勢いで苛立たせているのは——そう、抹茶のフリをしたピスタチオである。あたかも抹茶であるかのような佇まいで、抹茶さながらの緑色を纏(まと)ってシレっと居座るその姿は、もはや詐欺罪に当たるであろう悪意ある図々しさ。

そんなピスタチオ容疑者、かつての勢いは鳴りを静めたように感じていたところ、ここへきてにわかに復調の兆しを見せているのである。

 

ピスタチオは、ウルシ科カシューナッツ属の落葉樹に実る種子(ナッツ)で、ミネラルや各種ビタミン、カロテンなど豊富な栄養素に加えて、美しいカラーリングの種子と高貴な風味(?)から「ナッツの女王」とも呼ばれている——そんな話は聞いたことがないが。

そんなピスタチオの収穫シーズンは、夏の終わりから10月頃にかけてとのこと。よって、冬場にピスタチオのスイーツやジェラートがお目見えするのは仕方がないにせよ、今は梅雨のシーズン・・いや、夏の手前なのだから、ピスタチオにとっては最も身を潜めている時期のはず。

それなのになぜ、コンビニではピスタチオの菓子がこぞって並べられているのだろうか。しかも、そこは抹茶の菓子が並ぶであろう場所なのに、なぜ紛らわしい色合いのピスタチオなんぞを前面に押し出しているのだろうか——。

 

(お、抹茶ショコラか・・)

陳列棚の上のほうから、美しい緑が映えるウエハース菓子を取り上げたところ、なんとパッケージには「ピスタチオショコラ」と書かれてあった。どこをどう見たって抹茶がこなすべき役割を、ピスタチオの野郎が横取りしたとしか思えない違和感に、わたしは思わず目を疑った。

さらに、その隣に重ねられている深緑色の個包装を手に取ったところ、こちらには「ザクザク食感のピスタチオ&クッキー」と書かれているではないか。そもそも、チョコレートとの相性がいいのはピスタチオではなく抹茶だ。にもかかわらず、色の系統が同じだからといってチョコに手を出すとは、非人道的かつあるまじき行為である。

 

おまけに、明らかに抹茶を彷彿とさせる緑色の袋に包まれたチョコ——そう、かの有名なリンドールまでもが、ピスタチオの魔の手に落ちたのだ。リンドールといえば、抹茶とホワイトチョコの絶妙なハーモニーが売りだったはずなのに、今となっては緑色のパッケージは抹茶ではなくピスタチオに取って代わられているではないか。

(うぅ、リンドールの抹茶が食べたい・・)

 

そして極めつけはアイスだった。立派な化粧箱に収まった緑色のアイスといえば、辻利かパルムかハーゲンダッツに決まっている。だが、そんな常識を覆すかのように「チョコレートバー・ピスタチオ」と書かれたアイスが、本来ならば抹茶がいるべき場所を占領しているのだ。

(こんなこと、あってはならないだろう・・)

 

巷では、某国からの難民やアジア圏からやってきた旅行客のマナーの悪さや事件が問題視されている。

あれと同じくらい、わたしからすると穏やかな日常を荒らされたあげくに侵食されているわけで、日本の誇りである”抹茶の気品と威厳”が、ピスタチオなどという外国のマメに奪われつつある事実に、ショックと憤りを隠せないのである。

 

チョコもアイスもクッキーも、緑色のスイーツの何もかもがピスタチオに侵略されている——もう、抹茶が治める天下泰平の世は戻ってこないのだろうか。

 

 

見渡す限りピスタチオの緑色に侵されたコンビニのスイーツ棚を眺めながら、日本の行く末を案じずにはいられない、小市民たるわたしなのであった。

 

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