擦過傷の叫び URABE/著
オレは傷だ。右手小指の爪の付け根にできた、ちっぽけな擦り傷だ。 数日前、何かと擦れた際に皮が剥がれて、みずみずしい肉が現れた。こんな微妙な場所に傷をつくるとは、この人間はマヌケである。 ただで...
オレは傷だ。右手小指の爪の付け根にできた、ちっぽけな擦り傷だ。 数日前、何かと擦れた際に皮が剥がれて、みずみずしい肉が現れた。こんな微妙な場所に傷をつくるとは、この人間はマヌケである。 ただで...
いつも空いてるケバブ屋が、今日はなぜか混んでいた。土曜日の夕方だから?それとも夏の終わりだからか? まさかの行列が、店の入り口から歩道に溢れるまでつながっており、遠目にもその様子がうかがえた。 ...
私は都内で塾を営む、バツイチ四十代の男である。 だが塾と言っても学習塾ではない。男塾の現代版のようなもので、立派な社会人を養成するための「人間塾」を開いているのだ。 なに、大したことは教えてい...
(チッ、しみる) シャワーの湯が、オレのくるぶしのちょっと前にある擦り傷にかかった。擦り傷ってやつは、どうしてこうも沁みるんだ。切り傷は一瞬、ツキンと刺すような痛みで終わる。だが擦り傷はジンジ...
いつものごとくペーパーワークをするために、近所のスタバへ足を運んだ。偶然にも窓際があいていたので、ラップトップで席取りをするとコーヒーの注文にレジへと向かう。 スタバに限らずカフェのいいところは、焙煎された...
私の目の前にいる、大のおとなのオトコがあたふたとうろたえている。わずか数ミリの蚊の存在に、恐れおののいているのだ。 普段のあの勢いはどこへいった?強者の象徴のようなオトコが、刺されたところで何ら影響のない蚊...
突然だが、私は喪服だ。 ひとり一着は持っていなければならない、究極のマストアイテムである喪服。制服の学校に通う生徒ならばいざ知らず、いい歳した大人が喪服の一つも持っていなければ、笑い者どころか常識知らずの恥...
(オレはもう二度と、遅刻などしないだろう) そんな確信に近い手ごたえをひしひしと感じた。JR中野駅から数百メートルほど離れた道端で、オレは小さくガッツポーズをした。 * &nbs...
東京は摩訶不思議な都市だ。なかでも新宿は魔界である。 * 大学入学と同時に静岡から上京してきた俺は、都内の外国語スクールに就職して7年が過ぎる。人付き合いが得意なほうではないため、飲みに誘われても断り続けた...
見た目さえよければそれでイイ――そんな妄想が通用するのは、十代の若者だけじゃ。この世にはびこるモノのほとんどは、意味や価値そして役割がある。決して見た目なんかで製品の価値は変わらない。ちゃあんと適材適所で使...
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