昨年末、奇しくも社労士界隈をざわつかせた話題といえば、エッグフォワード株式会社による助成金不正受給のニュースだろう。各都道府県の労働局から公表されている数字だけでも、19億円超の不正受給が明らかになっており、表面化していない案件も含めると金額はさらに膨れ上がると予想される。
わたしは正直なところ、「助成金」という制度が好きではない。なぜなら、そう簡単に手に入る仕組みのものではないにもかかわらず、多くの素人経営者および無資格コンサルタントたちが、助成金の存在を甘く見ているからだ。
当然ながら、事業主からすれば「タダでお金がもらえるんだから、もらえるものはもらっておきたい」となるのは理解できるが、大金持ちが道楽でばら撒くカネではないのだから、なんらかの条件や負担があるに決まっている。言い換えれば、「リスクにもなり兼ねない責務を負ってまで、そこまでしてカネが欲しいのか?」と、疑問に思ってしまうのだ。
無論、事業主側になんら負担を強いることのない助成金というのもある。たとえば「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」がそれに当たる。
ハローワークからの紹介で、母子家庭の母や父子家庭の父、高年齢者(60歳以上)、ウクライナ避難民等(出入国管理及び難民認定法第61条の2第2項に規定する補完的保護対象者の認定を受けている者を含む)、身体・知的・精神障害者に加え、アイヌの人々、沖縄失業者休職手帳所持者(45歳以上)、漁業離職者求職手帳所持者(45歳以上)、中国残留邦人等永住帰国者、北朝鮮国被害者等を雇い入れて6カ月間雇用すると、当該助成金の申請ができるというものだ。
この助成金の着目点は、「母子家庭の母や父子家庭の父の雇用」というのは、その人が持つ能力と「ひとり親であること」は何ら関係ないため、就労時間の調整等が可能であれば思いもよらぬ優秀な人材を確保できる場合があることだ。
同じく「身体障害者」についても、職種によっては障害などまったくもって関係ない場合もあるので、労働者に求める能力がこれらのハンデと無関係な場合、逸材を採用した上で返還不要かつ消費税不課税のカネがもらえるとあり、お得な制度といえるだろう。
また、高年齢者(60歳以上)についても、すべての者を一概に年齢で区切るのはおかしなことで、年齢が若いからといって元気で体力があるとも限らない。むしろ、わたしの周りにいる60歳など、見た目も若くて活動的でビジネスでも第一線で活躍する人が多いため、60歳を高年齢者と定義すること自体に違和感を覚えるほど。そのため、元気で優秀な高年齢者を雇用できたら、助成金以上にラッキーである。
ちなみに、助成金対象者の条件となる後半の人々について、そこまで特別視(優遇)する必要があるのかどうか、今一度検討の余地があるように個人的には感じている。
とはいえ、雇用する側に立ってみると、就労に制限が必要だったり労働力として不足する面があったりすると、通常の採用では「お断り」の可能性が高いゆえに、単発とはいえ助成金が支給されるのであれば、採用しやすくなるのは確かだろう。
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というわけで、ハンディキャップに対する助成金は大賛成なのだが、いわゆる”不正が可能(安易に不正を思いつくなど)”なもの——巷で流行りの「人材開発支援助成金(DXやリスキリング)」や「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」などをゴリ押しする、非常識コンサルタントには不信感と殺意を抱いてしまうわたし。
冒頭で触れたエッグフォワードの不正受給スキームなど、ちょっと考えればアウトであることくらい誰にでも分かる杜撰かつ稚拙な手口。あれと同様に、とある企業が「キャリアアップ助成金(有期→正規)を上手く使って、どんどん社員を増やしている」と自慢げに語っていたが、社労士からするとそれも「不正受給」である。
どこが不正かというと、採用の時点で「(助成金のために)書面上は有期雇用とするが、実際は期間の定めのない契約だから問題ない」という説明をしていることだ。
この助成金の対象となる労働者は、
「正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等でないこと。(正社員求人に応募し正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた者ではないこと。)」
という条件があるため、現実的には該当者は少ないのではないかと思う。なぜなら、求職者は”正規雇用”を希望しているわけで、それを「有期雇用ならば採用します」と言われたら、生活の安定などを考えると他の会社を選ぶ可能性が高いはず。そういったことからも、中小零細企業における「有期→正規」は、数としては少ないように思うのだ。
ところが、先述した通り「書面上は有期だが、口頭で無期を約束している」場合、言葉は悪いがバレようがないことから、助成金が受給できてしまうのだ。
当然ながら、良識ある社労士がそのような不正に加担することなどあり得ないが、その企業は「社労士を入れている」と言っていたので、それが事実ならば由々しき事態である。
一方で、エッグフォワード事件における唯一の救いは、会社の代表が社労士ではなかったことだ。あれで社労士の資格を持っていたら、それこそ信用失墜行為であり我々の品位も地に落ちる。だが無資格者であれば、素人の浅知恵で編み出した不正受給スキームということで、「己の不勉強および不誠実に加え、社会やビジネスを舐めていました」のオチで片付けられるだろう。
(大体において、パワーワードや綺麗事を並べる経営者・コンサルタント・政治家というのは、中身が空っぽで薄っぺらい人間であることが多い。そもそも、ヒトという生き物に”綺麗事やパワーワード”が通用するほどの一貫性があるとは思えない。そんなことより、本質を突き詰めてそれに沿って進むほうが、よっぽど重要で真理だと思うわけで)
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ということで、助成金という「国が配るカネ」は、コンサルが言うほど簡単に手に入るものではないということを、肝に銘じてもらいたいのである。





















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