病気というのは、自ら罹患しないとさほど興味も関心も抱かないもの。よって、誰かが病に倒れたと聞けば、心配そうな表情を浮かべつつ「あら、お大事に」の一言で終わらせるような、冷酷極まりないゲス野郎のわたし。
そのくせ、己が罹患して初めて「あぁこういう苦しさがあったのか・・」と、病の厳しさを実感するという、まさに経験からしか学ぶことのできない愚者なのだ。
だが今回、わたしにとって人生初の「痔(じ)」という疾病を知る機会を得て、一生のうちに一度も直視することのない自身の肛門の代わりに、他人のソレ——というか「痔らしき症状」を観察することで、他人事ながら色々と学ばせてもらった。
(これでわたしは、いつ痔になっても不安に苛まれることはない!)
*
「恥ずかしいんだけど、どうなってるのか見てもらいたいんだ・・」
そりゃそうだ、医者でもない素人のわたしに自らの肛門を披露するのは、どう考えても勇気がいる行為である。だが病気というのは、そんな羞恥心すらをも凌駕する底知れぬ恐怖と、未来への不安を抱かせる魔力があるのも事実。
そのため、自分自身で状態を確認することが困難な場合、誰かに助けを求めるしかないわけで、その相手として「あまりニンゲンっぽくないわたし」が選ばれたのだ。
ちなみに、この「人選の正しさ」というか最適な采配に、なんというか非常に得心が行った。
なんせわたしは、ヒトを人と思っていない——要するに、動物の一員としての”ヒト”という捉え方をしているため、倫理観や羞恥心といった人間由来の感情が欠如している。そのため、相手がどんな格好であろうがどんな体勢であろうが、興味があるのは患部のみ。
そのため、余計な気を使ったりオブラートに包んだ言い方をしたりすることはなく、的確な場面描写と状況判断で患部の様子を正しく伝えることができるため、いうなれば「感情のないAIに患部を観察させるのと同じ」なのである。
こうして、不安そうな友人を無視して肛門の状態に目をやったところ・・なにやら袋のような膨らみがあるではないか。
正直なところ、わたし自身が痔を患ったことがないので、これがいわゆる「いぼ痔」かどうかの判断ができない。だが、もしも何らかのニックネームをつけるとしたら、きっと「いぼ痔」と言いたくなる様相である——。
しかしながら、ここで早合点をしてはならない。まずはあの膨らみ・・すなわち「痔核(じかく)」と呼ばれる物体が、果たして肛門の内側から押し出されたものなのか、はたまた肛門の外で形成されたものなのか、それとも単にたるんだ皮膚(スキンタグ)なのかを判別する必要がある。
そこでわたしは、事実確認をするべく「いぼ痔の画像」をネット検索してみた。ところが・・というか「やはり」というべきか、肛門の画像など当然ながら”センシティブ判定”を下されるため、白くぼかしが入った画像ばかりで詳細が不明。
その代わり、多くの肛門科や製薬会社のサイトでは、代替策としてイラストによる痔の紹介がされていた。しかしながら、どれもこれも教科書に載っているような図柄ばかりで、実際にわたしが見ている「ソレ」が外痔核なのか内痔核なのか、はたまた肛門皮垂(スキンタグ)なのかが識別できないのだ。
(暴力とか性的表現とかグロテスクな描写とか、それ自体が有害と判断されることは理解できる。だが、実際に病気や怪我の参考資料として閲覧したい場合に、過度に制限されてしまうと事実にたどり着けない・・という、微妙な問題点への妥協というか融通をきかせてもらいたいものだが)
そんな無理難題に対する愚痴をこぼしながら、わたしは友人の肛門に現れた皮膚腫瘍を撮影すると、その画像とともにChatGPTへ質問してみた——ここでもセンシティブ判定されるのかな。
すると、驚いたことに「画像から読み取れる範囲で考えられる可能性」として、外痔核や肛門周辺の皮膚炎について、さらに緊急性が高そうな所見の有無についてなど、必要と思われる事柄について事細かに意見を述べてくれるではないか。
(画像生成の際に、ちょっとでもセンシティブな単語を入れると「コンテンツポリシーに抵触するため、生成できません」などと速攻で拒否するくせに、こんなリアルな画像の解析についてはサクサクとやってくれるのか——)
*
あくまで「参考程度」のやり取りではあるが、こちらが必要とする情報に手が届くことでヒトはスッキリするもの。そして、AIのサポートにより「おそらく外痔核ではないか」という着地点を得た友人は、ホッとした表情で病院へと向かったのである。
かくいうわたしは、痔および肛門・直腸に関する知識と情報を得たため、自分自身が痔になったとしても、不安や恐怖を感じない耐性(教養)を身に着けることができた。
それえと同時に、「やはり無知は罪であると同時に、人生において損をしている」と、ちょっと賢くなったことで優越感に浸るのであった。





















コメントを残す