自分のケツも拭けないオトナたち

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全国の労働者に守ってもらいたいことがある。会社を退職する際は、最後の最後まで礼節をもって行動してほしい。「もうすぐ辞めるから」という理由で、無断欠勤や一方的な連絡による欠勤(ほぼ無断欠勤と同じこと)は、頼むからやめてもらいたいのだ。

 

「残された者の身になって考えてくれ」とは言わない。そんな小学生でもわかるようなことを、いい年した社会人にわざわざ伝える必要などないわけで。

そもそも会社や同僚に迷惑をかけることなど、承知の上での行動だからタチが悪い。「もう二度と関わらない人たちだから、関係ないね!」…そう思っているのだろう。たしかにそうかもしれない。だがそれとは別の話で、本当に迷惑だからやめてもらいたいのだ。

 

もしも転職先がリファレンスチェックをすれば、最悪の場合内定が取り消されるだろう。当たり前だ、去り際の汚い人間など信用できるわけがない。

逆に信用できる人間というのは、入り口も出口もキレイに通過していく。

誰だって、入社前はいい顔をしていいことばかりを並べる。そして退職となると、会社に対するやましい気持ちと言い出しにくさも相まって、コミュニケーションが乏しくなる傾向にある。

「退職届を出したんだから、これでいいだろ!」

退職の意思表示としては正しいが、それで終わりなわけがない。後任への引継ぎや身辺整理を済ませることで、ようやく退職日を迎えることができるのだから。

 

もちろんこれらは義務ではない。だが、こういったことが当たり前にできない人間は、恋愛でもなんでも自分の都合が悪くなったら、コソコソ逃げたり嘘をついたりするだろう。

プライベートで都合の悪い状況に置かれて、きっちりと対処できるメンタルとキャパシティーを持っていれば、会社を退職する際にも同じように常識ある行動がとれるはず。それを、自分が矢面に立たされるのを避けるべく、退職代行業者に依頼をしたり、親や兄弟、配偶者、恋人に頼んで代理で退職の手続きを進めたりと、目を疑うほど無責任な方法で逃げ切ろうとする人間があまりに多いのだ。

 

さらに退職届を提出したが最後、スケジュールを無視して一方的に休暇の申請をしたり、ほぼ音信不通状態で欠勤したりと、やりたい放題。

とはいえ、退職を決意するまでには色々な事情があっただろう。本人の問題ではなく会社に原因がある場合も少なくないわけで、退職を宣言したが最後、そのままピューッと逃げ去りたい気持ちになるのも分からなくはない。

しかし世の中には、やっていいことと悪いことがある。キミは、恋人や配偶者との別れ際にも、こうやって別れのセリフや離婚届だけを突きつけて逃げるのか?・・・うん、きっとそうするのだろう。そんなズルくて卑しい人間だからこそ、今こうして他人に迷惑がかかる状態を平然と貫いているわけで。

 

「退職予定者の好き勝手を、許容するしかないんですか?会社内部が崩壊しそうなほど切羽詰まった状況なのに、私たちは我慢するしかないんですか?」

 

人事労務担当の女性が泣きながら訴えかける。本来、こんなことが許されてはならないのだが、労働法は労働者を保護する法律のため、これといって効果的な対処は存在しない。

もしも退職の予定がなければ、それこそ懲戒の対象となる事案だが、あと少しでいなくなる人間への懲戒処分など焼け石に水。さらに、退職予定者へ損害賠償請求をしたくとも、特定の業種・職種以外は損害額を計算するのが非常に困難。

こうなれば、会社側が泣き寝入りするしかないのである。どんなに理不尽だと嘆いても、それに対する救済措置はないのだから。

 

・・こんな泣き言をわたしが言うのも変だが、個人単位で変えていかなければならないことであり、ヒトとして覚悟を決めるべきことでもあるので、「自分のケツは自分で拭く」くらいのことはやってもらいたいと、強く思うのである。

全国の労働者、中でも退職を検討している人々よ、どうか、現実を受け入れられないような、弱くてずるい人間にはならないでもらいたい。そういう人間が増えれば増えるほど、日本という国は衰退していくのだから。

 

Illustrated by 希鳳

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