酵素浴とは、微生物に身を委ね、安らぎと活力を与えてもらう儀式である。

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(・・あぁ、わたしはいま微生物らの宴を楽しんでいる)

友人が"酵素浴"なるものをオープンさせたので、さっそく体験に訪れたわたしは、生き物に包まれる温かさと安心感を全身で味わった。

 

フカフカでしっとりした、ヒノキのおがくずと米ぬかのベッドに横たわると、友人によって静かに埋もれていくわたし。

(なんていうか、カブトムシの幼虫になった気分だ)

酵素浴のベッドは完全なる天然素材であり、目に見えない数の微生物がせっせと発酵することで熱を発生させるのだが、その自然な温かさときたら、人間でも孵化の喜びを感じてしまうほど。

ヒノキのおがくず&米ぬか布団の発酵熱は60~70度だが、空気に触れることで体感温度は40度強といったところか。体温よりもやや高いであろうフカフカしっとりの布団に包まれたわたしは、米ぬかの匂いを嗅ぎながらぬくぬくと温まっていた。

 

母ハイエナの懐で温まる子ハイエナは、こんな感じで身を委ねているのだろうか——。人工的には作り出すことのできない、柔らかくもずっしりとしたおがくずと米ぬかの感触は、まさに野生動物の母親の懐のような、ある種の逞(たくま)しさと圧倒的な安心感を与えてくれる。

そして耳を澄ますと・・といっても耳栓をしているので、音というよりも肌で感じているといったほうが正確かもしれないが、何らかの音を感じるのだ。あぁ、これこそが発酵にまつわる音なのだろう——!

 

酵素浴の熱源である発酵熱は、米ぬかで活発に生きている微生物たちが発する熱だが、彼らが発するのは熱だけではない。そう、独特の"発酵臭"も放っているのだ。

その匂いはお世辞にも「いい匂い」とは言えない。嗅いだだけでヨダレが出るパンや焼き肉と比べたら、悲しいかな「残念な匂い」に分類されるだろう。だがこれこそが、生命力を示す強い匂いなのである。

 

腐敗と発酵の違いは、人体にとって有害か無害かで決まるが、多くの人間はその違いが分かっている。その証拠に、ブルーチーズや納豆の強い匂いを「いい匂」いと感じる人は少ないが、見事に発酵したそれらの食品を「クサい」と一蹴することもないわけで。

同様に、米ぬかの発酵集はどこか本能に働きかけるような、心地よい香りに感じるのだ。おまけにこの店は、おがくず&米ぬかを毎日メンテナンスしているため、"発酵が新鮮"であることが本能的に分かるから不思議。

 

さらに、使用するおがくずは奈良県吉野の高品質なヒノキを使っており、米ぬかと丁寧にブレンドしてできた「天然高級布団」は、どんな既製品をも上回る温かさと心地よさ。

そんな贅沢な布団にくるまっていると、いつしか人間であることを忘れるほどに、沸々と野生が湧き上があってくるのである。

(なんか、体の奥底からチカラがみなぎってくる気がする・・)

ウォォー!!!と、米ぬかから飛び出てドラミングしたいような、奇妙なパワーを感じるのはわたしだけだろうか。しかしそれほどに、この米ぬかの発酵臭と発酵熱は、動物的な感性に触れてくるのだ。

 

おまけに、米ぬかに含まれるビタミンやミネラルを皮膚から吸収できるため、肌や髪だけでなく体調が上向く効果も期待できるのだそう。

そもそも、40度強の熱でじんわり熟成された体は、体温上昇にともない免疫力が爆上がりし、腸が温められることで腸内細菌も活発に動き出すとあり、至れり尽くせりのいいこと尽くしである。

(とんでもない量の汗が頭皮を滴っている・・)

15分ほど横たわっていると、頭頂部からダラダラと汗が噴き出していることに気がつく。たしかに、40度の湯船で半身浴をしていればいつしか発汗するように、酵素浴でも大量の汗が出るのだ。

 

天然高級布団で汗だくになりながら、ちょこんと顔だけ出しているわたしは、一匹の小さな羽虫を発見した。——そうか、虫もこのご馳走の匂いに誘われてやってくるのか。

羽虫に嫌悪感を抱かない者は少ないだろう。いつだって忌み嫌われる存在の羽虫だが、この栄養満点な天然酵素のご馳走に釣られて姿を見せた彼らは、紛れもなくこの布団が「天然である」ということの証である。

 

他の酵素浴サロンでは、米ぬかの下に電熱線を引くなどして温度調整を行っているところもあるのだそう。そして、そういった店では羽虫は発生しない。要するに、自然発酵の熱で出来上がった酵素浴の土壌だからこそ、羽虫も現れるのだ。

例え話で、「澄み切った水の湖と濁った水の湖があって、美しい湖の水を飲む動物は一匹もいないが、薄汚いほうは賑わっている。どちらの水を飲むか?」という状況判断の例があるが、米ぬかに集まる羽虫の理由も正にそういうことだろう。

 

嘘もおべっかも使えない小さな飛翔性昆虫こそが、質の良い天然酵素に対する"評価"なのである。もしもそれを毛嫌いする者がいれば、本質を理解できない残念なヒトだろう。

 

 

帰宅して6時間以上が経過するが、わたしの体はポカポカに温まっている。外気16度で窓を全開にしているが、タンクトップに短パンという真夏の格好であるにも関わらず、上半身がポカポカなのだ。

暑い・・というより、体の芯から熱を発しているような、柔らかい温かさに包まれている。これが酵素浴の実力ってやつか——。

 

体温が1℃上がることで、免疫力は5~6倍に上がるのだそう。加えて、諸説あるがガン細胞は42.5℃で死滅するとのこと。これらの理由からも、体温を上げることにメリットこそあれど、やらない理由はない。

・・そんなことで、腸内で活躍しているかわいい細菌たちのためにも、体温上昇を心がけようと思うのであった。

 

酵素浴サロン「WARM」・・・シロダーラやよもぎ蒸しもあるよ。白金台一丁目にある、女性専用のプライベートサロン。

 

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