年を取るにつれて環境や生活様式が変化する。それにより、望むべき人生も変わってくる。
分かりやすいのは、異性の好みだろう。
学生時代など若い頃は、誰がなんと言おうが「顔面偏差値」がすべてを左右する。
まれに顔面を凌駕するほどの運動神経や学力の持ち主が現れるが、8割方、顔である。
とはいえ持って生まれた顔面だけでなく、髪型や体格、ファッションでも見た目は大きく変わるため、純粋に顔面がイケてるだけではないのだが。
そして社会人となりアラサーに差しかかると、誰もが見た目の変化、すなわち「劣化」に見舞われる。
男性ならば髪の毛が薄くなったり、腹回りに脂肪が蓄えられたり。女性ならば目尻のシワやほうれい線が気になったり、顔色がくすむ原因のシミが目立ったり。
急に劣化が気になる年頃となり、もはや顔面偏差値などにこだわってはいられない。
そこで、次なる指標は見た目ではなく、背後に控える「バックボーン」が重要となる。
これは主に女性から見る男性について言えることだが、
「ゴールドマンサックスで働いています」
「実家が大病院を経営しています」
「アメリカン航空のパイロットです」
などと自己紹介をされれば、たとえデブでハゲで鼻毛が飛び出ていようが、どれもご愛敬となる。
アラサー世代は職業や資産に関する情報が、「見た目」に替わって大きな比率を占めるようになる。
加えて、
「包み込むような優しさ」
「一緒にいて安心する」
といった歯切れの悪い妥協案からは、恋愛なんぞに金や時間を費やすことに辟易した女たちの本音も垣間見える。
アラフォーともなると、もはや相手が男ならばなんでもいい!という境地に至る。「誰でもいい」ではない、「なんでもいい」だ。
金があろうがなかろうが、若かろうが年寄りだろうが、女の人生の一瞬を彩るアイテムとして適当な男をつかまえる。
この時点で「恋愛感情」という青春の象徴である四文字は、跡形もなく消え去っている。
残るは「人生の破片」という、なんとも廃れた要素しかない。
それ以降の年代では、上へいけばいくほど「看取り人」として適任かどうかが決め手となるだろう。
アラフィフ以降の世代ともなれば、他人に対して期待をすることもなくなるわけで、余生の邪魔をしない人、ゆくゆくは自分の最期を看取ってくれる人が選ばれやすいのでは、と想像する。
このように人生のキャリアを積めば積むほど、人生についての考え方や接し方が変わるもの。
であれば企業のカラーもそれぞれあっていいはずだ。
収益の増加が比較的容易な業種は別として、一カ月の売上げに上限のある介護業界などは、昇給や賞与といった給与設計が困難な場合がある。
ある程度限られた予算内でどう分配するのか。また、キャリアパスをどのように捉えるのかーー。
今までは、
「たくさん稼げるのがいい仕事」
「たくさん働くのがいい従業員」
という考えで労働市場が成立していたが、これからはそうはいかない。
生産性を求める業種であれば、いかにスピーディーに確実に納品できるか。サービス業であれば、いかに個のスキルを金銭的価値として提供できるか。
また、すべての労働者が「就職したからお金がもらえる」などと寝ぼけたことを言っている場合ではない。
会社の売上げが立ってこそ、その一部である人件費が賄えるということを、忘れてはならない。
労働者としての権利を主張するあまり、本末転倒となるケースが近年多発している。
そもそも昭和20年代のように、労働者が使用者に強制労働させられるような労働環境は存在しない。いくらでも逃げ道はあるし、むしろ労働者のほうが立場が上といっても過言ではない。
そういった労働環境の変化や日本の経済成長の停滞、そして生活様式の多様化などを配慮した結果、わたしはとあるユニークな福利厚生制度を思いついた。
外資系企業のような目ん玉が飛び出るほどの給与提示は無理だが、たとえば有休を法定日数の倍与える、というのはどうだろうか。
フルタイム労働で半年間勤務すれば、法律上10日の有給休暇が付与される。それを一気に20日与えてしまうのだ。
6年半継続勤務すれば20日の有給休暇の権利が得られるが、それがなんと40日になる。となると週休2日の会社ならば、ほぼ週休3日が実現するのだ。
労働者によっては「お金が稼ぎたくて働く」という目的以上に、
「その仕事が好きだから」
「無理なく続けられる仕事だから」
といった理由で就労している人もいる。
そういう人にとって、「昇給」というのは魅力的なワードではあるが、だからといってガツガツ働くことを望んでいるわけでもない。
であれば、その会社に所属したいと思わせる何かがあれば、それはそれで十分なエンゲージメント(会社への貢献、約束、愛着)となる。
そこで「有休」の登場だ。
法律上付与しなければならない日数の、倍の有休を与えることで、ワーク・ライフ・バランスの向上、ダブルワークや学び直しへの取り組みを後押しできる。
そして会社側が、できる限り「有休を使いきること」を推奨すれば、十分に実現可能だろう。
福利厚生費(実際は人件費)として換算しても、定期昇給を設定するよりはるかに支出を抑えることができ、さらに従業員の満足度も高められる最強策だ。
もう一つのアイディアは、
「仕事に関係のない資格や免許でも、取得したら費用の半額を会社が負担する」
というもの。
これもプライベートの充実を狙った考えだが、仕事に関係する資格を取得するならば、会社が費用を補助する取り組みはすでに広がっている。
だが仕事とまったく関係のない資格や免許を取得するには、仕事を休まなければならないし費用を捻出することも難しい、ということで断念する人は多い。
何かのインストラクターの資格でもいいし、士業の資格でもいい。オフィスワーカーであってもアーク溶接やボイラー技師の免許を取得して、プライベートでDIYや副業で銭湯など経営できたら面白い。
なんなら自動車の運転免許取得もアリだ。
従業員自身のスキルアップや成長が、仕事のモチベーションを高めるかどうかは、正直どうでもいい。
そんなことより、プライベートの資格取得をサポートしてくれるような勤務先を、誇らしく思わないわけがないということが重要。
そしてそのくらいの費用負担、継続的な定期昇給と比べたらなんとお安いことか。
わたし自身、仮に「報酬を上げるからこの会社にいてくれ」と言われたとて、やりがいも愛着もない会社に所属し続けるのは、気持ちが萎える。
どうせなら居心地のいい会社で働きたい。
そして「働く」ということにフォーカスしすぎず、その会社のメンバーとして在籍したいかどうか、という部分が重要だと考える。
金が稼ぎたいのなら、稼げる会社に転職すればいい。もしくは自営業として自ら仕事を取ってくればいい。なにより、そういう働き方を選べばいい。
会社へのエンゲージメントは、もっと底辺で泥臭い部分にあったりするんじゃないか、と思うわけだ。
サムネをありがとう、ホナウド!
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