ポプテピ風アプローチ

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言葉というのは、便利なようで役に立たない時がある。

単に状況を説明するだけならば、語彙力が豊富であればクリアできるが、自分の思いや感情を同じ熱量で他人に伝えるには、言葉という単語を並べるだけでは伝わりきらない。それは、同じ言葉でも異なる捉え方ができてしまうせいであり、それを補うには相手とのコミュニケーションを重ねるしかないわけで——。

もしも相手が目の前にいれば、顔の表情や声のトーンからある程度は”言葉の意味”を察することができる(いや・・それすらもできない者はいるが)が、テキストによるやり取りではそれができない。すなわち、相手の本心や真意を知るための情報源がぐんと減ってしまうのが、メールのようなメッセージツールの弱点ともいえる。

 

だが、その弱点を補ったのがLINEやDMといった「スタンプ」を使用できるチャットツールである。文字だけでは伝わりきらない感情を、多種多様なシチュエーションのキャラクターや画像を用いることで、言葉よりも正確にこちらの本意・・というか真意を伝えることができるからだ。

「そんなことは分かってるし、当たり前じゃないか!」

そう思われるかもしれないが、わたしは今になって”スタンプの有効な使い方”を実感しており、「あぁ、こうやってコミュニケーションを図れば不和が避けられるのか」と、改めて驚くのであった。

 

 

とある友人は、相手の気持ちを察することが苦手である上に、言葉の裏を読むことができない。言葉は単なる”与えられた情報”という認識で、その裏にある相手の真意までたどり着くことはないのだ。

そのため、ちょっと嫌味を言ったり暗に何かを示したりしても、それらの意図が伝わることはない。さらに、こちらからすると精一杯の皮肉や嫌味を込めた言葉が、ストレートに字面通りの意味で受け取られるので、逆にこちらが”はらわたが煮えくり返るような反撃”を喰らうこととなり、胸中穏やかではいられない。そのため、

「こんな苛立ちを覚えるくらいなら、会話などしないほうが精神衛生上健全だ!」

と、精神的ダメージを追うたびに毎回思うわけだが、なぜか対面で話をするとテキストでの違和感が解消されるから困るのであった。

 

面前で話をすると、相手の反応を顕著に視認できることから、理解不足や齟齬があると感じれば補足することができる。また、こちらの真意が伝わっていないようであれば、ダイレクトに説明することもできる。そうすることで、ある程度等しく双方の理解度が確保できるのだ。

だが、LINEなどでのやり取りに「相手の心境」を乗せられない友人は、目の前に相手がいなければ、なおさら「単なる文字情報」として受け取る傾向にあるため、対面時の感覚でやり取りをするととてつもない温度差に驚かされることに。しかも、文字で気持ちを表そうとすると、言葉が持つ”尖った部分”が際立つため、「なぜそんな方向に話が進んでしまうんだ・・」と、こちらが焦るほど細くて遠い暗闇へと落ちていくわけで。

 

——そんな不穏な違和感に疲れたわたしは、滅多に使わないスタンプを送ってみた。そこに深い意味はなく、ただ単に「こういうシュールなスタンプを送ったら、どんな反応をするんだろう」という程度の軽い行動だったが、それに対する友人の反応を見て「もしかすると、これが正しいやり方なのかもしれない」と思った。

無論、友人からの返事は適当なもので、さらに別のスタンプを送り返してきたり・・と、なんてことはない軽いやり取りだったが、これこそが「対面以外で顕著に本心を示す方法」だと感じたのだ。

要するに、テキストのみでの情報伝達よりも、視覚的な補足ができるスタンプや画像を使うほうが、事の詳細や真意には至らずとも、感情の温度差としてはかなり近いものを共有できる・・ということだ。

 

今まで幾度となくLINEでやり取りを重ねてきたが、ここへきて初めて、友人と同じ目線でチャットができている気がしたのである。

 

 

文字で伝わらないならばビジュアルに頼る・・という方法は、一般的には手抜きかつ安直なイメージを抱きがち。しかしながら、人間というひねくれた生き物が操る「言葉の真意」を伝えたいならば、文字情報に加えて視覚情報を組み合わせることで、対面に近い環境を構築できる・・ということを、今更ながら知ったわたし。

いかんせん、相手の身になって考える・・というのは、極論をいうと無理であり不可能である。であれば、双方が共感できる着地点を探ることで、共通の認識を得られるほうが幸せだろう。

 

だからこそ、すべてを理解する(させる)ことや受け入れる(受け入れてもらう)ことは諦めて、同じ感覚を共有できる「楽しさ」のみに注力すれば、仮に”まさかの反撃”を喰らったとしても「キーーッ!!」となることはないわけで、それこそが人間関係を円滑に保つ秘訣なのではないか・・と思うのであった。

 

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