ほぼ毎年、最低賃金が引き上げられる。
昨年は新型コロナの影響により全国平均で1円という僅かな上昇だったが、今年は「より早期に全国平均1,000円の最低賃金を目指す」ということで、全国平均で28円の引き上げとなる予定。
これにより、現在の平均賃金902円が一気に930円となる。
ちなみに、現在トップをひた走る東京都は1,013円から1,041円に。
さすがに最低賃金である1,013円ギリギリで雇用している企業は少ないかもしれないが、それでも時給換算すると1,020円程度は多々ある。
東京都のアルバイト求人では、飲食業のホールスタッフでも1,100円を超えるのが基本。1,013円の時給では応募者はゼロ。
むしろコンビニやレジスタッフの方が1,050円程度でも応募があるため、時給単価は低いといえる。
「低賃金」と騒がれる介護や保育に関しては、1,200円が最低ラインだろう。つまり、政治(選挙)目的でこれらの職種の賃金や労働条件が劣悪だと捏造されていることが分かる。
介護保険が源泉となる介護事業は、コンプライアンスの徹底が介護事業所指定申請の条件となるため、労働環境からすると飲食業などに比べてかなりホワイトといえる。
この「最低賃金引き上げ」を知って喜ぶのは労働者。
のはずだが、よーく考えると労働者の中でもとばっちりを食う人もいる。
同じアルバイトで、ド素人の高校生とその道10年のベテランがいたとする。
これまでは高校生1,013円、ベテラン1,100円だったが、最低賃金の引き上げに伴い、高校生1,041円となる。
最低賃金が上がったからといって、企業の売上げが上がるわけではない。そして人件費の割合が増えるわけでもない。
そうなると今後、ベテランの昇給は見送られることとなる。
ベテランに限らず、最低賃金ギリギリで雇用していた人数が多い場合、全体的に昇給や賞与は見送られる可能性が出てくる。
なぜなら、業績に関係なく人件費が引き上げられたからだ。
最低賃金の強制的な引き上げは、企業の生産性を向上させるといわれる。
その側面はあるにせよ、コロナのせいで様々な規制を課せられるなかで、人件費を膨らますことで雇用の維持が図れるのだろうか。
補助金や助成金を大盤振る舞いすることで、少しでも穴埋めをして文句が出ないよう、帳尻合わせをしているようにしか思えない。
ーーはらわたが煮えくり返りそうになっていたところ、なんとも斬新なクレームが飛んできた。
「ウチは外してもらいたいよね、東京都の最低賃金から」
恐れ多くも声の主は、東京都西多摩郡某村の会社社長。
某村は都心から2時間程度の距離にある立派な東京都。そしてアパートを借りたとしても、2LDKで5万円という破格の安値。
(たしかに、この村も最低賃金1,041円の負担を担わなければならないのか・・・)
同じく、八丈町や三宅村といった島嶼部(とうしょぶ)までもが、東京都ということで最低賃金1,041円を強要される。
同じ都道府県とはいえ、あまりに温度差がある。東京都港区で2LDK5万円は、築50年の事故物件でもあり得ないわけで。
とはいえ、埼玉県民や千葉県民に住まいを聞かれれば、
「東京です!」
と、しれっと答える東京都田舎地域住民。
そう考えると、東京都民としての恩恵を受けている部分もあり、共に最低賃金の十字架を背負おうではないか、となる。
他の都道府県でも、
「なんでウチの市が!ウチは辺鄙な田舎なんだから、都会と一緒にしないでよね!」
という声が聞こえる。
だが時には、その県のおかげで優越感に浸れることもないとは言えない。
結局のところ、最低賃金は都道府県ごとでいい、ということか。
Illustrated by 希鳳
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