海外におけるトイレとパンツの価値観

Pocket

 

日本にいると、トイレのトラブルに遭遇することはあまりない。あるとしてもトイレットペーパーがない!!という緊急事態くらいだろう。しかし海外へ行くと、いかに日本のトイレ文化が最先端であるかが身にしみて分かる。

 

間違いなく、日本のトイレ文化は世界一だ。

 

**

 

文化や習慣の違い、貧富の差など要因はいろいろあるが、日本のトレイ事情に慣れてしまうと海外のソレに馴染むのに数日はかかる。

 

お隣りの国・韓国で初めてトイレを使ったとき、危うくトイレを詰まらせるところだった。韓国のトイレは一見、何の変哲もない普通の洋式トイレ。しかしゴミ箱ほどの大きな入れ物が、トイレの個室にある。女性であれば生理用品を捨てる入れ物かな?と思うだろう。それにしてはデカいな、という印象。

それが何を意味するのか知らなかった私は、トイレットペーパーを普通にトイレに流した。

 

私には何も起こらなかったが、2つとなりのトイレを使っていた外国人が「トイレを詰まらせた!」と騒いでいたので理由を聞くと、

「トイレットペーパーを(まぁまぁ大量に)流したら詰まった」

と言っている。韓国の友人にその話をすると、

「韓国はトイレットペーパー流しちゃだめ!となりに捨てる箱があったでしょ?」

なるほど。あのデカい入れ物はトイレットペーパーを捨てる箱だったのか。(詰まらせたのが私じゃなくてよかった)

 

友人は、

「少量のペーパーなら水をガンガン流せばセーフ」

とも言っていたが、試す気にはなれなかった。

 

 

トイレの個室に入るなり、5分ほど考え込んだのはイタリア(フィレンツェ)だった。なぜならトイレが2つある。

 

一つは普通の大きさで、もう一つは小さいトイレ。形は全く同じなので、大人用と子供用?という感じ。しかしなぜ2つ並んで設置されているのかが分からなかった。

海外でトイレでトラブルを起こすことは極力避けたい。そこで2つのトイレについてグーグル検索してみた。すると、

「大きい方は普通のトイレ。小さいほうはビデ(ウォシュレット)」

ということが分かった。

 

イタリア人はキレイ好きだからビデ文化が発達しているのだ、とも書いてあった。他のサイトを見ると、

「このビデの使い方はさまざまで、夏は果物をここで冷やしたりする」

 

(ウソだろ・・)

 

ビデの使い方が微妙に不明のため、普通のトイレだけ使うことにした。

 

 

同じイタリアでも、ナポリの田舎でトイレを使ったときに新たな衝撃を受けた。そこは山奥の射撃場のトイレ。

まず、トイレのドアにカギが付いていない。そしてトイレットペーパーはドアノブに挿してあり、便器からは届かない。あげくの果てには便器に便座がない。

どこをどう見ても座るところがない。目の前にあるのは、デカい口を開けたトイレの下の部分だけだった。これには悩んだ。かなり考えたがいいアイデアが浮かばない。仕方なくその場をいったん引き上げ、一緒に来ている友人に尋ねた。

 

「俺はトイレのフチに片足のっける派。スクワットみたいにしゃがむ人もいるし、空気椅子の人もいる。最後は脚力勝負になるね」

 

・・なるほど。いずれにしても、直接フチに触れることのないよう、空中に浮かせた状態で用を足すということらしい。

 

再びトイレに向かう。いろいろポジションチェンジしてみたが、どれもしっくりこない。かれこれ30分経過、そろそろ覚悟を決める必要がある。長考の末、私は「空気椅子」を選択した。

震える大腿四頭筋とふくらはぎ、用を足すのにこんなトレーニングを強いられるとは。

 

 

「人生観が変わる」とはまさにこのことか、と納得させられたトイレは、インドだった。インドといってもホテルや商業施設のトイレはほぼ安心。なぜなら普通のトイレだから。しかし一歩ローカルに踏み出すと、それこそがインドだった。

 

とある場末のマッサージ店へ行ったときのこと。薄暗い店内はジメジメしており清潔感がない。おかしいな、と疑う間もなくそこが「男性の下半身マッサージ」の店だと知った。そして問題のトイレはそこの2階にあった。

階段を上りきった目の前がトイレ、というそもそもおかしな構造。トイレにドアはなく、代わりにデカい板が立てかけてあるだけ。板をずらして中へ入ると、広々とした何もない空間だった。

大きな窓から強い日差しが差し込む爽やかな個室。そんな開放的な空間に存在するのは、

・四角い穴

・古びたアルミ缶

・地面から出ている蛇口

この3つだけ。

 

そこで真剣に考えた。私はいまトイレに来たはずだ。しかし目の前に広がるこの光景は何だろう。これまでのトイレの概念からは想像しがたいトイレだ。

 

――知恵を振り絞れ。どうすればこの3つのアイテムで用を足せるのか。

 

しかし妙案は浮かばなかった。最悪、用を足した後どうやってパンツを上げればいいのかが、どうしても分からなかった。やむなく私はグーグル先生を頼ることにした。やはり想像どおりの使い方だった。四角い穴へ用を足し、地面からチョロチョロ出る水をアルミ缶ですくい、ピシャピシャと手でお尻を洗う。

が、しかし。

その後どうするのかが書かれていない。そこが重要な部分だ。びしょぬれのお尻をどうやって乾かすのかが知りたいのだ。

 

と、そのとき。ポケットティッシュを持っていることに気がついた。日本では、ポケットティッシュを無料で配るという素晴らしい文化がある。

 

――私は難を逃れた。しかしどうしても疑問は拭えなかった。インド人は誰もがポケットティッシュを持っているのか?それとも店員がトイレットペーパーを渡してくれるのか?

この疑問について店員に尋ねた。するとこれまでの「パンツの概念」を覆す、驚きの答えが返ってきた。

 

「あなたは何のためにパンツを履いているの?お尻が濡れてるならそのままパンツを履けばいいじゃない。パンツが水分を吸収するでしょ?外は暑いし、すぐに乾くわ」

 

たしかにその通りかもしれない。インドのミミズは路上で5分とかからず息絶える。つまり、濡れたパンツなど数分で乾燥する。インドの街中でお尻にシミを付けた人を見かけたら、その人は「清潔」ということだ。お尻をバシャバシャ水洗いしてできたシミだからだ。

 

**

 

よく「インドで人生観が変わる」というキャッチフレーズを耳にする。私はこれとは別の視点で、人生観というかパンツの価値観が変わった。

 

とりあえず、日本のトイレが一番安心できるということだけは確かだ。

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です