マンションのエントランスにて、外壁修繕を行う施工業者の男性と出くわしたわたしは、エレベーターが到着するまでの間、長年モヤモヤしていた「とある疑問」をぶつけてみた。
それは「なぜウチのマンションのコーキングは、固まらずにベタベタしていたのか」ということだ。
コーキング(一般的には「シーリング」と呼ばれることが多い)とは、ドア枠や窓サッシと壁の間をシリコン素材のボンドで埋める作業および材料のこと。身近なところでは、バスタブと壁との間を這うように塗ってある「弾力性のある白いライン」がそれにあたる。
ちなみに、建物の内外装にコーキングを施す目的というのは、防水性や気密性を高めることで雨水やホコリ、はたまた虫の侵入を防いだり、建材の伸縮を吸収することでひび割れを防いだりと、建物を長持ちさせるために必須の作業といえる。加えて、結露やカビの発生を防止し冷暖房効率を高めることで、快適な居住空間を維持させる目的もある。
そんなわけで、コーキングは建物にとって必要不可欠であり、適当な作業をしてはならない部分であるにもかかわらず、我がマンションのコーキングは誰がどう見ても明らかに失敗していた。
具体的には、見た目が荒波のようにデコボコかつ枠からはみ出ており、指で触れればシーリング剤がベタベタくっ付いてくるほど未硬化なのだ。
前回の作業後、エレベーターホールのコーキング箇所を指で押してみたところ、強力かつ強固なベタベタが指先にまとわりつき、石鹸で洗っても落とせないほどこびりついてしまった。さらに、部屋の空気を入れ替えようとドアガードをストッパー代わりに立てたところ、ドア枠周囲のコーキングに当たってしまいドアガードの頭がベッタベタに汚れてしまったのだ。
このように、どれだけ素人であっても「これはさすがにおかしいだろう」と感じるほどの失敗状態で、なぜ何年ものあいだ放置されていたのかは分からない——いや、なんとなく見当はつくが、とにかく打ち直しをすることなく放置されたのである。
そんな、コーキングにおいてあってはならない「未硬化状態」が、ここへきて解消された。
正確には、これまでの杜撰なコーキングが剥がされ目地があらわになった・・というのが現在の状況ではあるが、その後きちんとしたシーリング材を打ち込む予定のため、もう二度とあのベタベタに触れることはないだろう(そう願いたい)。
——ということで、業者の男性に「なぜ未硬化だったのか」について尋ねてみたところ、
「2液型(のシーリング材)だと思いますが、主剤と硬化剤の比率が間違っていたか、攪拌(かくはん)が甘かったか、そんなところだと思います」
との回答が得られた。なるほど、ホームセンターで売っているような1液タイプではなく、施工業者は2液タイプを使うため、配合ミスや攪拌不足によってシーリング材が未硬化になるのか。
さらに、「未硬化のまま放置するものなの?」と追及したところ、
「うーん、普通なら溶剤をかけるか工具で剥がすかすると思いますけど・・」
と、同業者を悪く言うのも気が引けたのだろう。最後は言葉を濁しつつ「でも今回は大丈夫だと思いますよ」と、山積みになった1液のシーリング材の段ボール箱をチラ見しながら説明してくれた。
それにしても、未硬化のコーキングを放置・・しかも、建物すべてのコーキングがベタベタでグニャグニャであるにもかかわらず、打ち直すことなく何年も放置できる神経が理解できない。
「取りあえず隙間は埋めてあるし、問題ないっしょ?」という感じなのだろうか。いやいや、見た目もボコボコで指紋(手袋の跡)が残っているほど劣悪な状態なのだから、あれが「プロの仕事」だと言われたら、驚きすぎてアゴが外れるレベルである。
それでも素人にとっては・・というか部屋を賃借している者からすれば、気になるのは自宅の室内だけで、外壁や共有部分などどうでもいいのかもしれない。コーキングの未硬化が原因で5年後10年後に歪が出ようとも、「その時にはここを出ればいいじゃん」ということなのだろう。
(・・まぁ、そんなもんか)
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というわけで、コーキング未硬化事件の真相と思われる情報(知識)を入手したわたしは、今まで以上に現場作業員へのリスペクトが増すのであった。




















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