トライアングルチョーク(三角絞め)

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ーーこれはわたしが習っているのと同じ柔術なのだろうか。

 

RIZIN.28を観て、ホベルト・サトシ・ソウザとクレベル・コイケの「見事なセットアップ」に鳥肌が立った。

 

とくにサトシが、シングルレッグからの飛びつき(絡みつき)クローズドガードでマットへ引き込み、相手であるムサエフ(RIZINライト級トーナメント王者)が自分の左腕を引き抜く隙も与えずに、トライアングルチョーク(三角絞め)までのセットアップを行った時、本気で画面に喰いついた。

 

あれほど迅速かつ完璧な順序を経て、トライアングルチョークの最終形となる足首のロックまで持っていくのは、そう誰もができることではない、どころの話ではない。

サトシだからできるのだ。

 

しかも決まり手は「トライアングルチョーク」と公式発表されているが、わたしは「リバースストレートアームロック」の可能性もあると見ている。

 

RIZIN LIVEで一度だけ、ムサエフの右サイドからの様子が映し出された。

もちろん、ガッチリとトライアングルチョークを極められているのだが、空いている右手でサトシのわき腹へパンチを入れた際、すかさずその腕を捉えられてリバースストレートアームロックを極められたのだ。

(あぁ、これはやばいぞ!)

と思った瞬間、ムサエフの

「タップタップ」

という声と同時に、サトシがレフリーを見上げてタップの確認をした。

 

結果的にトライアングルチョークでのタップアウトと記録されたが、アームロックも確実に極まる体勢だった。よって、どちらにしてもムサエフに脱出の手段は残されていなかったのだ。

 

しかしあの引き込みからのセットアップの速さ・滑らかさは、サトシだからできたのだろう。

「コーカサスの死神」と恐れられるムサエフのプレッシャーをまともに受けながら、流れるようにササッと運べるのは「彼だから」だとしか思えない。

 

 

そんな感動に浸っていた一時間半後、朝倉未来とクレベル・コイケによるメインイベントが始まった。

 

朝倉未来・海兄弟はわたしが通うジム(トライフォース赤坂)所属の選手であり、今回のRIZIN.28でも大注目の兄弟。

だが偶然にも、クレベル・コイケとホベルト・サトシ・ソウザの2人も同じジム(ボンサイ柔術)所属で、同い年だが兄弟のような関係性。

サトシが試合後のマイクで

「ボクの弟の試合も応援してね」

と発言したのが印象的だった。

 

さすがに階級が違うため「兄弟対決」とはならないが、サトシと同じく柔術黒帯のクレベルは、KSW(ポーランドの総合格闘技団体)でフェザー級王者の座につくなど、実力は折り紙つき。

さらに「柔術界の鬼神」という、ありがたいんだかどうだかよく分からない通称名が付けられている。

 

そしてクレベルは下馬評も高かった。

 

朝倉未来といえば喧嘩無敗の「路上の伝説」。天才的な格闘センスと恵まれたフィジカルで、日本格闘技界のトップまで登りつめた。

だが相手は、海外2団体で王者となっている強者である。

 

そんな最強二人の戦いでどちらに軍配が上がるのか、誰もが期待と不安を抱きながら見守る展開となった。

 

ところが意外にも、いや、当然ながらクレベルの緻密な技術力が勝敗を分けた。

 

1ラウンド目はお互いに一進一退の攻防。2ラウンドに入り1分半が経過した頃、未来をクローズドガードへと引き込んだクレベル。未来は絡みつくクレベルの足を外そうと、左手でクレベルの右足を掴む。

 

ーー「柔術界の鬼神」はその瞬間を逃さなかった。

 

クレベルは未来の左腕をつかむと自分の足の内側へ押し込み、あっという間にトライアングルチョークのセットアップを完了させた。

 

そしてガッチリと足を組み直した瞬間、勝負はついたのだ。

 

 

総合格闘技において、柔術のテクニックだけで勝利を手にすることは難しい。

だが体に染みついた「確かなディテール」は、一瞬の隙も逃さず確実に再現されるのだ。

 

狙ってできるものでもないが、狙っていなければ当然できない。そしていつその時が来てもいいように、いくつもの罠を仕掛けておくのが柔術黒帯なのだろう。

 

(わたしも日ごろからこの恐怖を味わっている。師匠はわたしに対して、器用にも3カ所を極めながら様子をうかがってくる。どう転んだって「死」しか待っていない状況で、毎日、精神の鍛練をくり返している。)

 

 

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