ショパンのエチュード作品10-4を語る

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今日現在、弊ブログに4名の読者が存在する模様。

(先週より一人増えた)

そのうちの一人、千葉県在住のリチャードさんよりリクエストをいただいた。

 

「ショパンの10-4をお願いします」

 

貴重なリクエスト、誠にありがとうございます。

(しかし、これはピアノじゃないか)

 

**

 

エチュード/Etude(仏)・・・練習曲。しかし、どちらかというと演奏会で演奏する、技巧練習曲。ある奏法技術に特化した練習曲というか。

 

ショパンが20代前半の若さで世に送り出した「12の練習曲 作品10」という、「練習曲」というネーミングに決して騙されてはならない練習曲がある。

それの4番目の曲が、リチャードさんからリクエストをいただいた10-4である。

(分かりにくい)

 

もしかすると聞いたことがある、という可能性のあるエチュードと言えば、

・10-3「別れの曲」

(むかーし、”101回目のプロポーズ”というドラマで有名になった)

・10-5「黒鍵のエチュード」

(右手はほとんど黒鍵しか使わない、明るく軽やかな短い曲)

・10-12「革命のエチュード」

(ピアノを習っている人が、早い段階で弾きたがる曲)

あとは、

・作品25-11「木枯らしのエチュード」

(映画『グリーンブック』の後半で、主人公が場末のバーで弾くシーン、泣ける)

 

・・この辺りが、一般的に認知度の高い「エチュード」だろう。つまり、10-4は世間的には「知らん」と言われる曲だ。

 

(もう10-4について語れることがない)

 

・・いや、そんなことはない!のだめだ、アニメ「のだめカンタービレ」。主人公ののだめが、10-4を教授の前でサラッと弾いたシーンは有名で、それを聞いたことがあるという人もいるはず。

 

ちなみに弾く側からすると、コンクールの課題曲というイメージがある。そしてとにかく曲が短い。2分ちょいくらいか。私はそれを1分30秒で弾ききる、という挑戦を昔やったことがあるが、失敗した。

個人的には相性のいい曲で、勢いで弾ききれるところが気に入っている。

しかしこの「勢いで弾ききる」が、恐ろしい落とし穴となる。言い換えると、途中でつっかえればすべてが終わる、というわけだ。

 

そしてこれは私にとって、トラウマでしかない。思い出したくもない悪夢だ。

 

・・・以上で、ショパンのエチュード作品10-4についてを終わろう。

 

**

 

昨日はレッスンの日だった。1週間で7曲を練習してこい、という先生はドSだと思うが、さすがに45分のレッスンで7曲は弾ききれないので、こちらも「山を張って」練習に臨むことにした。

つまり、7曲すべてを練習する必要はなく、先週弾いた流れから「今週はこの辺りからだろうな」という流れを読み取り、さらにそこから、弾かされるであろう曲を導き出すのだ。

 

 

昔から「山を張る」ことに長けていた。大学入試でピアノ科を受験した時も、課題曲やら自由曲やら、トータル10曲近く練習しなければならなかった。ところが、そんなに練習したとて本番で指定されるのはたったの3曲。

こんな非効率なこと(試験なんだから当たり前)、できるか!と、練習を放棄しかけた私。しかし当時の先生と相談し、お互いの方向性が一致した。

 

「山を張ろう」

 

・・・こんな音大受検生(と指導者)はまずいない。だが私には無理だったのだ。そもそもそこまでの実力もなく、演奏技術もなく、なにより頭が良くない。

ちなみにピアノ科は、ピアノだけ弾けりゃいい、というものではない。ピアノのほかに、

・声楽(歌を歌う)

・楽典(イタリア語による、音楽に関する勉強)

・新曲視奏(初めて見る楽譜を、1〜2分凝視した後、楽譜を取り上げられて弾かされる)

・新曲視唱(新曲視奏同様に、歌わされる)

・聴音(ピアノで簡単なメロディーが流れるので、それを楽譜におこす)

などなど。これだけでも5教科5科目プラスプラスであり、どう見てもキャパオーバー。

 

――自分自身が崩壊しないためにも、山を張ろう。

(都合のいい逃げ、とも言う。)

 

当時の先生は正直、あきらめていた。それは薄々気づいていた。どうせ受からないと思われていたので、記念受験として山を張ってでも本番へ行こうではないか、というくらいのモチベーションだったと思われる。

ちなみに山を張る作業は、思いのほかすんなりいった。なぜか。

それは私が弾ける曲が、おのずと限られていたからだ。

 

(いま思い出したが、課題曲の中にショパンの10-4があった。しかしこれを本番で弾くのはリスキーすぎる。なぜなら、ただでさえ短い曲なのに、途中で失速したらもはやリカバリー不能だからだ。つまり10-4を選択した時点で、一度のミスですべてが終わることも約束されるのだ。これは弾いたことのある人、かつ、同じ被害にあったことのある人にしか分からない、恐怖なのだ。)

 

山を張った曲を黙々と練習した。トータル3曲だけなので、本来の10曲からすれば気持ちは晴れ晴れ、宙を舞うほどに心は軽く、本気で受験する気があるのか、というくらいプレッシャーとは無縁だった。

 

一日のうち7時間ピアノ、2時間楽典、1時間弱声楽、4時間くらい部活(バスケ)、残りが授業と睡眠という生活を送っていた。

やや計算が合わない気もするが、このくらいのタイムスケジュールで高校生活の後半を過ごしたわけだ。

 

受験の合否について興味はないと思われるので、割愛する。

 

 

そして昨日のレッスン。山を張った順にちょうどいいペースで弾き進んだ。こちらから質問などしながら、レッスン終了までの時間配分を調整した。

(よし、これで最後だ)

~演奏終了~

 

「じゃあ次の曲いって」

「え??」

「今日ね、次の生徒さんお休みなのよ。だから、はいどーぞ」

 

・・・チーン。

 

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山など張るべきではない。せっかくお金を払ってレッスンに通うのだから、対価に見合ったレッスンを受けるべきだ。そして、そのレッスンに見合った練習をするべきだ。

 

来週火曜日、またレッスンがある。あと6日もある!ではない。6日しかないのだ。

今日から真摯にピアノと向きあおう。

 

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「今さらそんなことができるようなら、高校の頃すでにそうしていただろうよ」

 

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