ウシ科ウシ属偶蹄類、ヤクの実力

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東京都港区でありながら、冬はシベリアを彷彿とさせる極寒の我が家に住むわたしは、11月に入った時点で冬支度を開始した。具体的には、「ヤク」の毛でできた分厚い靴下を購入したのである。

 

ヤク(Yak)はウシ科ウシ属の偶蹄(ぐうてい)類で、インド北西部やチベット、ネパール、モンゴルといった標高三千~六千メートルの高地に生息する。ヤクを実際に見たことのある人は少ないと思うが、一般的な牛よりもやや大きく、体長2メートル・体重1トンを超える個体もいる。

見た目の特徴として、頭部には立派なツノが生えており、体表からはスカートを履いているかのような長い毛を垂らしているため、どことなくオシャレな雰囲気のウシといったところ。

ちなみに、ウシ科のヤクだが鳴き声はウシっぽくない。一般的にウシの鳴き声といえば「モー」と表現されるが、ヤクは「ブー」とか「ア゛ー」というような音を出す。鳴くというより唸るという感じか・・。

 

そんなヤクの毛は、モンゴルやチベットで暮らす人々の生活を支えている。マイナス30度の寒さにも耐えられる体毛は、硬くて丈夫な外側の毛と柔らかくてフワフワな内側の産毛とで構成されていおり、ロープやテントには外側の毛が、そして衣類の素材として産毛が使用されている。

この「ヤクの毛」について、じつは以前からかなりの高評価を得ていることをわたしは知っていた。温かさはさることながら、滑らかな肌触りと抜群の通気性、それでいて保湿にも優れているという、まさに最高の素材。おまけに、ヤクの毛自体に天然の抗菌効果があるため、頻繁に洗濯をしなくてもいい・・というわけで、ものぐさなわたしにとってうってつけの製品なのだ。

 

とはいえ、なぜかヤクのことを思い出すのが春や夏のため、半袖短パン姿で「寒くなったらヤクの靴下を買おう!」と誓いつつも、寒くなる頃にはそんなことすら忘れているのであった。

ところが今年はツイている。なぜなら、たまたま見かけた友人のSNSでヤクの靴下が購入できることを知ったからだ。

(よしっ!今年の冬はデカい面して乗り切れるぞ)

冒頭でも述べた通り、冬の我が家はシベリアと間違うほどの低温に見舞われるため、室内でもダウンジャケットを着用するなど防寒対策に余念がない。中でも、足元の保温は死活問題となるため、分厚い靴下をいくつも所持しているのだ。

 

だがどれも一長一短で、「これこそが最強!」という逸品に出会ったことはない。靴下は厚手の毛糸で作られているため、保温には優れているが通気性が悪かったり、かかとがカサカサに乾燥してしまったりと、イマイチ使い勝手が良くないのだ。

だからこそ毎年、「来年こそはヤクの靴下を試すぞ!」と息巻いていたが、なぜか季節外れに決意するため、しかるべき時には記憶から抜け落ちるのであった。

 

それが今年、とうとう念願が叶ったのである。

 

 

日中の気温は20度を超えるため、まだ半袖でも十分過ごせるこの季節に「ヤクの靴下」は時期尚早ではあるが、物は試しに届いたばかりの靴下につま先を通してみた。

——おぉ、たしかに柔らかい。フワフワの毛でできたタオルのようだ。

ウール特有のチクチクした感じはなく、どちらかというとコットンタオルのような手触りである。おまけに、かかと・つま先・足底部の生地が厚くなっているため、スリッパなど履かなくともこの靴下のみで室内を歩き回ることができる。

 

ちなみに、もうすでに6時間ほど着用しているが、その保温力のみならず通気性が抜群であることに驚く。この生地の厚さならば蒸れて当然だが、全くもって快適な足元が実現できているわけで、これは本気で冬が楽しみだ——と、小さくガッツポーズをする自分の姿を改めて見直すと、上は半袖下は短パン、そして足元はヤクの靴下という面白い格好であることに気付く。

そう、足先が「ヤク効果」で温まっているため、半袖短パンでも寒さを感じなかったのだ。・・でかしたぞ、オカモ(ヤクの友人)!

 

 

余談だが、わたしの足はデカくて広くてゴツイため、かかとまで覆われた靴(スニーカーやヒール)を履くのは非常に困難。そのため、ビルケンシュトックやKEEN、UGG、クロックスといったサンダルタイプの靴しか持っていない。

もちろん、真冬でもこれらのサンダルのみで凌ぐわけで、そのあたりの事情からも厚手の靴下の必要性は、他人と比べて圧倒的に高いのだ。そんなわたしだからこそ、ヤクとの出会いは必要不可欠だったのである。

 

あとは真冬の東京をこの靴下で闊歩してみて、ヤク信者となるか否かを決めようと思う。とりあえず現時点で、厚手の靴下暫定トップは「ヤク」である。

 

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