マルチタスクの罠にまんまとハマった愚者

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突然だが「マルチタスク」という行為は、われわれ人間の脳を疲弊させ破壊する恐れがあるのだそう。今年の5月、「現代ビジネス|講談社」に、とある興味深い記事が掲載された。それは「マルチタスクがもたらす恐ろしい弊害」について、言語学者の堀田秀吾氏が寄稿したものだ。以下、記事より抜粋し紹介させてもらおう。

 

「スタンフォード大学の神経科学者であるオフィールらによると、私たちが『2つのタスクを同時に行っている』とき、実際には、脳が猛スピードで複数のタスクを連続的に切り替えているだけだそうです。」

「あるタスクを行いつつ、別のタスクを行うとき、脳は一度停止し、情報を再編成し、新しいタスクや思考のために回路を切り替えることを余儀なくされるため、結局は時間がかかり、疲れてしまうのです。」

つまり、人間が同時に行えるタスクは最大でも2つで、その「たった2つの処理」でさえ脳にものすごいダメージを与えているのだ。おまけに、マルチタスクを敢行することで脳が疲れると、前頭前野の機能が低下し、忘却や集中力低下、判断ミス、自律神経の乱れなど心身の不調が表れやすくなるのだそう。

(よく「オレはマルチタスクが得意な、スーパー・タスカーだ!」とか自慢する奴がいるけど、あれは結局、脳に対する自傷行為を自慢していたわけか・・)

 

さらに記事を読み進めると、もう一つの面白い実験について触れられていた。

「(中略)ミシガン州立大学のアルトマンらの研究では『300人の学生に、パソコンで集中力が必要な作業をさせ、その途中でさまざまな秒数の広告のポップアップ画面を出して作業を中断させる』という実験を行い、どの程度の時間で学生の集中力が途切れるかを調べました。」

「その結果、ポップアップによって作業が2.8秒中断されると、ミスの発生率が2倍になり、4.4秒中断されると、ミスの発生率が4倍になることがわかったのです。」

これには頷ける人も多いのではなかろうか。現にわたしは、ネット検索や記事の読書、または動画の視聴途中で強制的に広告が入ると、途端に気分を害して先へ進むのを止める傾向にある。それは、単に広告が不快というだけでなく、そこまで維持していた感情やテンションが一気に崩れ去るからだ。

ちなみに、記事の途中で広告のバナーを挟むケースも似たような不快感を覚える。視界に広告が入った瞬間、それまで保っていた心理状態が崩壊し、再び記事のテンションに戻るまでに何秒かの時間を要する。だからこそ「読み物」は、純粋に読みきれる状態で提供したい・・と、素人ながら思うのである。

 

 

とかなんとかカッコイイことを並べたところで、今のこの状況はどうにも否定できない。何をしているのかというと、友人から勧められたアニメをスマホで観ながら、ピアノの練習をしているのだ。

しかも、我が家のピアノは消音装置を付けているため、ヘッドフォンの片耳をずらすことで、ピアノの音とアニメの音声の両方を聞き取ることができる。よって、譜読みをする際は目で楽譜を追いつつ指を機械的に動かし、全神経を耳に集中させながらアニメをチラ見するのである。

もちろん、アニメだけでなく国内外のニュース動画や情報番組などを視聴することもあるが、いずれにせよ目で動画をチラ見しつつ耳で音声を聞き取りながら、ほぼ無意識に指を動かし鍵盤を叩いているのだ。

 

「練習の時間くらいピアノに集中しろ!」と自分でも思うのだが、哀れにも障害が残るわたしの指は思うように動いてはくれない。頭では理解しているのに指がそのように動かないのだから、真剣に練習したところで苦痛に耐えるだけで時間の無駄。

であれば気を紛らわせるついでに、動画でも視聴しながら指だけ動かすほうが精神衛生上「健全」といえるだろう。そう考えたわたしは「アニメを見ながらピアノを弾く」という、一見、荒業にみえる作業を行っているのである。

 

実際にピアノの上達速度はどうなのかというと、指をある程度動かせるようになるまでは、ピアノだけに集中しようが動画を見ながらであろうが、さほど変わりはないように感じる。要するに、そこまでの期間は「指の運動能力を上げる時間」なのだろう。

スポーツでも、心拍数を上げたりストレッチで筋肉を伸ばしたりするように、障害を抱えたわたしの指が普通程度に動かせるようになるまでは、単純動作として指の運動が必要なのだ。そして普通に動かせるようになったら、ピアノと楽譜に正対し真摯に取り組めばいいのだ。

(よし、もう少し指の準備運動が必要だから、次のエピソードを見るか・・)

 

——いや、絶対に間違っている。どんな練習であっても、マルチタスクなど非効率で脳を痛めつけるだけなのだから。

そもそも、脳と指とを連動させることがピアノにおいて重要な作業であるにもかかわらず、そこから逃げようとするわたしはいつまで経っても上達など見込めない。それでも、アニメ視聴の欲望に勝てないわたしは、なんやかんや言い訳をつけてマルチタスクを敢行している。そしてこれこそが、マルチタスクの恐るべき弊害なのではなかろうか。

 

・・などと呟きながら、やはり必死に動画を見ながら指を動かすわたしがいるわけだ。まぁ、バカは死ななきゃ治らないのである。

 

サムネイル by 希鳳

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2件のコメント

なんか、この世の中でマルチタスクせずに生きてくって難しいですよね?
仕事でもマルチタスクじゃないパターンがいまいち
想像つかない…

ね。つまり、ある程度のミスは許容範囲!って認識でいないとダメだろうね。人間ならば

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