舞茸もやし豚バラ山

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友人のインスタで、見るからに美味そうな豚バラ料理を見つけた。そもそも、豚バラというのはそれだけで美味い。その豚バラが表層を担う内部に、舞茸とモヤシがぎっしり詰められているのだから、究極に美味い料理に違いない。

(この組み合わせがマズくなることなどあり得ない。どこをどうしたって美味いに決まっている——)

そう確信したわたしは、近所のスーパーへ向かうと豚バラ肉と舞茸、そしてモヤシを入手した。また、調味料の存在しない我が家では、味付けとしてドレッシングを買うのが恒例行事のため、「野菜がうまい醤油胡麻だれドレッシング」を購入した。まぁ、「恒例行事」といっても年に一回あるかないかの一大イベントなのだが。

 

帰宅するとすぐに、わたしは調理を開始した。調理器具の乏しい我が家で、唯一といっても過言ではない調理器具=耐熱ボウルを取り出すと、そこへ舞茸とモヤシをぶち込んだ。

(・・き、気持ち悪い手触りだな)

舞茸の塊を分解するべく揉みほぐしていたところ、なんともキノコっぽい菌類特有の手触りにゾクッとした。恥ずかしながら、キノコの塊を両手でぐしゃぐしゃにする経験は今日が初めてのこと。そのため、まさかここまで想像通りの感触だとは思いもしなかったのだ。

柔らかいというか湿っているというか、それでいて繊維方向にしか割けない頑丈さを持つ舞茸。生き物ではないが、まるで生きているかのような微妙な感触が、なんとも気持ち悪い。いや、そもそも菌糸でできているのだから、生きているといっても間違いではないのか。とにかく、独特のキノコの手触りに驚かされたわけだ。

 

それよりもさらに驚いたのは、豚バラ肉の掴み心地だった。過去にも豚バラと対峙する機会は幾度もあったが、素手で触りたくないわたしは毎回、肉に触れることなく処理してきたのだ。

具体的には、買ってきた豚バラ肉のラップを剥がすと、手首のスナップをきかせて器へ叩きつけることで、生肉に触れることなく盛り付けが完了する。それをレンチンすれば、あっという間に「疑似豚しゃぶ」が完成するのである。

こんな感じで豚バラと向き合ってきたわけで、まさか、この期に及んで素手で肉に触れることになるとは驚きだった。

 

なんせ、舞茸とモヤシをごちゃまぜにしてギュッと固めたら、その周囲に豚バラを巻きつけるようにして山を築かなければならない。よって、箸でツンツンする程度では頑丈な山肌とならないため、素手で肉を剥ぎ取り表層部分にペタペタ貼り付ける必要がある。

その際、耐熱ボウルと舞茸もやしとの間に豚バラ肉をギュウギュウ押し込んで、地表面の強度を上げるのだが、豚バラ肉というのがあれほどまでにヌルヌル、いや、ドロドロした物質だとは思わなかった。

たしかに、肉一枚のおよそ4割が脂身でできているのだから、触ればベタベタしているのも不思議ではない。だが、引っ張っても千切れないどころか弾力性に富んでおり、想像以上に指がヌルドロになった。

 

(やはり豚バラは、箸でつまむのが正解なんだな・・)

 

こうして出来上がった「舞茸もやし豚バラ山」に、命を吹き込む時がきた。そう、レンジでチンだ。しかし我が家にはサランラップが存在しないので、スーパーのサッカー台(購入品を袋詰めする場所)に設置されているビニール袋を、ラップ代わりに器へかぶせて加熱するのが常。

というわけで、本日は豚バラ肉が入れられていたビニール袋を使うことにした。だが、耐熱ボウルは口も広くて高さもある。それゆえビニール袋をかぶせることはできない。

そこでわたしはビニール袋を引き延ばし、破れない程度に広げて耐熱ボウルを覆うことにした。・・が、ビニール袋が思いのほか硬くて伸びない。これ以上引っ張れば、穴が開くかちぎれてしまうだろう——。

 

(しかたない、山頂にかぶせるか・・)

こうなったら、ビニール袋を帽子にするしかない。どうせ尖った山なのだから、そこへビニール袋を乗っけて肉を覆えば、ラップをするのと同じ効果が得られる。ついでに、ビニールの上から山の形を整えれば一石二鳥である。

・・結果的にこの方法が功を奏した。平らな皿に盛りつけた豚バラ山は加熱とともに崩落しがちだが、器がボウルであることとビニール袋で成形したこととで、山の表層面の強度が上がり、美しい山型を維持したまま食卓に並べることができたのだ。

 

山肌へドレッシングを垂らし、さらに、表面の肉を剥がし内側の舞茸もやしにドレッシングをぶっかけたところで、わたしのクッキングは終了した。味は言うまでもなく、非常に美味かった。

——豚バラ万歳。

 

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