約束を反故・・いや、約束の「質」を反故にしたくないのだ

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なんの取り柄もないわたしだが、「怪我の治りが異常に速いことが、自慢であり特技である」と自負している。

そのせいか、よく「怪我してるのに柔術の練習をするなんて、すごいね」などと言われるが、実際のところ痛みを堪えているわけでもなく、痛くない程度のことしかしていないので、その範囲内ならば普通に練習できるのは当たり前なのだが。

 

ちなみに、右手を怪我したならば右手を使わずに動けばいいし、首を痛めたならば首に負担のかからない動きをすればいい。膝を痛めたならば絶対に膝を使わなければいいだけで、むしろ負傷部位のみに意識を集中させることは、それはそれでいい練習となる。

それでいて、怪我の治りも尋常じゃない速さなので、全治2カ月ならば3週間、全治2週間ならば3日くらいで治ってしまうのだ。

 

なお、スパーリングの途中で怪我をした場合、怪我のランクによって「20秒か2分」で復活できるのも特徴。20秒間しっかりと負傷部位を押さえていると、それこそが手当て!と言わんばかりに、痛みが和らぎ元通りに戻すことができる。

これよりも重症の場合は、とりあえず2分ほど様子をみると”怪我のランク”が明らかになるので、練習を続けられる程度なのか大人しく帰るべきなのかを、2分後に判断するのだ。

 

このように、怪我の治りがめっぽう速いわたしにとって、ただ一つだけ懸念すべきことがある。それは、数日後に病院や治療院の予約をした場合、その当日にはすでに回復に向かっている・・ということだ。

 

先週、右膝を痛めたわたしだが、そこまで痛みを感じなかったことから、だましだまし練習を続けていた。しかし、ふと「これ以上悪化すると、本当に使えなくなる恐れがあるんじゃ・・」という不安を覚えた。

これは怪我に限らず、ネガティブな事象というのは「いかに早く回避できるか」が、失敗を最小限に抑えるカギとなる。現実を真摯に受け止めて、それ以上進まない勇気を持てれば、それこそ火事をボヤで終わらせることができるのだ。

だらからこそわたしは、大きな怪我に発展する前に手を打っておこう・・と、行きつけの治療院へ予約をいれることにした。だが金曜日の時点で、「空きがあるのは、翌週、月曜日の夜」と言われたため、土日は大人しく過ごして予約当日となる月曜日を迎えたのである。

 

 

(・・まずい、金曜日ほど痛くない)

 

これは喜ぶべき事実である。土日を安静に過ごしたことで、怪我の治癒が早まったのかもしれない。いずれにせよ、驚異的な回復力により膝の痛みがある程度おさまったのだから、むしろいいことではないか——。

しかしながら、あれほど大げさに「膝が痛くて曲がらない!」と訴えたにもかかわらず、週末を超えたら急に良くなりました・・では示しがつかない。いやいや、先方(治療院)も当然ながら喜んでくれるに違いない。少しでも状態が良くなるように治療を行うわけで、それが自然と回復したのならば「よかったですね!」」と言ってくれるに決まっている。

 

それでも、予約を入れたにもかかわらずキャンセルをするのはさすがに気が引けるし、言い換えれば「約束を破る」ことになる。だからこそ、予約の時間に治療院を訪れるには訪れるが、もしかするとわたしよりも深刻な状態で治療を望んでいるヒトがいた場合、わたしはそれこそ酷い野郎じゃないか。

仮に「深刻な怪我で治療を望んでいるヒト」がわたしだった場合、治療の必要性が低い”勘違い野郎”が予約の枠をおさえていると知ったら、ぶん殴ってでも予約を奪い取るだろう——そう、トリアージの考えからすると、優先順位の高い者に譲るべきなのだ。

とはいえ、そんな怪我人がタイミングよく現れるとも限らないし、変に気を遣うよりも「かなり良くなってしまってごめんなさい!」と言いながら、治療を受けるほうが誠意を示せるのではなかろうか。

 

 

最終的には「状態が改善してよかった」ということで落ち着くのだろうが、約束を反故にする・・いや、正確には「約束の質」を反故にすることが、わたしにとっては後ろめたい気持ちでいっぱいになるのだ。

(どうせなら、金曜日よりも痛くなっててくれよ・・)

 

なぜか右膝に恨み節をこぼす、月曜日の夜であった。

 

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