英語圏の友人と話していて、「とはいえ、これは学びようがないな・・」と思うことがあった。それは、スラングの使い方についてだ。
スラングとは俗語のことで、大幅に短縮したり本来の意味からは想像もつかない使い方をしたりと、辞書を引いてもたどり着かない場合が多いから難しい。
とはいえ、海外ドラマや映画、歌などで頻繁に使われていると、英語が苦手な日本人でもなんとなくそのイメージを掴むことができるだろう。たとえば、fuckという単語は下品で無礼な単語ゆえに、正式な場ではタブーとされている。だが、fucking cuteと言った場合には「クソカワイイ」といった感じで、決してネガティブな意味とはならない。
それを「fuckは粗野で失礼な単語」とだけ覚えていれば、fucking cuteは最悪に貶していることになり、大きな誤解と齟齬を生むに違いない。そんな「言葉が持つニュアンスやイメージ」というのは、分厚い辞書をいくらめくったところで、探し当てることができないものなのだ(稀に、補足されている場合もあり)。
そして今日、第一言語が英語である友人から"流行りのスラング"について教えてもらった。
「イマドキの十代が使うスラングにはついていけない」という前置きをした上で、二十代の彼女がいくつかのスラングを教えてくれたわけだが、少なくともわたしにとっては初めての使い方に驚きと斬新さを覚えたのである。
まず一つは「cook」だ。普通に考えれば「調理する」的な意味だろうが、You are cookedと言われたら、それは相当マズい状態なのだと察しなければならない。つまり"すでに料理された状態"ということで、日本語に訳すならば「ヤバい」「マズい」「詰んだ」といったところか。
とはいえ、cookという単語を知っているわたしからすれば「そういう意味でも使われるんだ」という程度の認識だが、逆に友人から「これを日本語にするならば、なんて言えばいいの?」と聞かれた時には答えに困った。わたしのニュアンスからするろ「ヤバい」だろうが、場合によっては「オワッタ」かもしれないし「死んだ」かもしれない。——日本語のほうが複雑じゃないか。
次に教えてもらったのは「cap」だ。単語の意味は野球帽のようなキャップのことだが、You are cappingと言われたら慌てなければならない。なぜなら、capは「嘘」や「大袈裟」を意味するからだ。
ネットスラングとして発祥したことから、チャット相手が嘘をついていると思ったら、テキストではなくキャップ帽の絵文字を贈ることで「嘘つき」を現わすこともできるのだそう。——とはいえ、相手がこれを知らなければ???となるだけだが。
なぜ「cap」が「嘘」という意味になるのかは諸説あるが、帽子をかぶる=頭部を隠す=真実を隠す=嘘をつく・・という解釈が有力な模様。
その後、会話の途中で「fire」を使われたわたしは、話が通じなくなりその意味を尋ねた。一般的には「燃えている」とか「クビにする」といった意味で有名な単語だが、彼女はそれを「めっちゃカッコいい」という意味で使ったのだ。
(coolと似てるニュアンスっぽいけど、fireとcoolって真逆の性質な気がするが・・)
さらにfireには「めっちゃ」「最高」という感じの強調する意味合いが含まれているため、普通にカッコイイではなく"もの凄くカッコいい"しかも"見た目がセクシーでカッコいい"という感じなのだそう。ちなみにcoolは、外見というより雰囲気や内面のカッコよさに重きを置いている・・と言われれば、なんとなく合点がいくか。
そしてこれも「日本語で教えてほしい」と言われたので、やはり「めっちゃカッコいい」と答えたが、もしかすると「クソイケメン」とか「眼福レベル」なのかもしれないわけで、やはり日本語のほうが難しい気がする。
すると今度は、「なにか日本語のスラングを知りたい」と言い出す彼女に対して、しばらく考えたわたしは「ガチで」という単語を伝授した。英語にするならばseriouslyやliterallyあたりが合致すると思うが、これだと「マジで」と同義となる。
ガチとマジならば、なんとなくガチのほうがガチな気がするが——この微妙なさじ加減こそが、ハイコンテクストな日本語を象徴しているのかもしれない。
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というわけで、単語の意味を知っていてもそれをスラングとして使った場合の意味を知らないと、くだけた話し方や若者との会話において「壁」を感じることとなるかもしれない。
そういった点からも、外国人とのコミュニケーションには学びが多いものだ・・と、改めて感じるのであった。
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