クリスマスといえばシュトレンなわけだが・・・

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クリスマスといえば、やはり"シュトレン"だろう。

シュトレン(Stollen)はドイツ・ドレスデン生まれの伝統菓子。洋酒に漬けたドライフルーツやナッツを練り込んだ生地を発酵させて焼き上げ、表面に溶かしたバターをたっぷりと塗って、仕上げに大量の粉糖をまぶす・・というか塗り固めて、真っ白なカマンベールにすればできあがり。

この、たっぷりバターと大量の粉砂糖によるコーティングの効果で、シュトレンは驚くほど長持ちするのが特徴。そもそもホリデーシーズンを乗り切るための菓子なので、長いもので2~3か月の保存が可能だったりする。

 

ちなみにシュトレン誕生の歴史は古く、1329年に"キリスト司教へのクリスマスの贈り物として、シュトレンを贈呈した"と、文献に記されているのが最古の記録だそう。また、発祥の地であるドレスデンでは、12月の第一土曜日に"シュトレン祭り"が開催され、シュトレンの名店で腕を振るうマイスターたちのオリジナルレシピで作る、まさに「特別なシュトレン」を味わうことができるのだ。

ちなみに食べ方は、大きなシュトレンの塊を薄くスライスして、少しずつ食べるのが本来の食べ方。本場のドイツでは、クリスマスイブまでの4週間のあいだ、スライスされたシュトレンを食べながらクリスマスを心待ちに過ごすのだそう。なんと素晴らしい文化だろうか——。

 

このように、長期保存が可能かつ毎日少しずつ食べる焼き菓子なのだから、カロリーオバケであるのは言うまでもない。小麦粉、大量のバター、大量の砂糖、洋酒に漬けたドライフルーツにナッツ・・これらがローカロリーのはずはないわけで、だからこそ「少しずつ」食べるのだ。

そしてわたしは、過去にシュトレンを一本まるごと食べたことがある。まぁ、美味かったのだからしょうがないが、パウンドケーキのようにシュトレンを両手で包むと、粉砂糖をボロボロとこぼしながら一心不乱に食べ続けた結果・・食べ終えてしばらくすると、想像以上の膨満感に襲われたのだ。

(な、なんだこの超満足な感じは・・・)

満腹というより、胃袋の内側から押されるというか胃袋の膜とバターが合体したかのような、異様で不思議な感覚だった。どちらかというと、胃もたれってやつか——?

 

そんな経験もあるわたしは、毎年友人が与えてくれる美味しいシュトレンを、今年も無事入手することに成功した。さっそく、真っ白なハード系のパンのようなシュトレンを包装袋から取り出すと、コンビニでかっぱらってきたナイフとフォークで薄く切り始めた。

このシュトレンは、井荻にある"グランモンターニュ"というベーカリーのもので、ものすごく食べやすいのが特徴。色んな店のシュトレンを食べてきたが、千葉にあるピーナッツ菓子の名店・とみいのシュトレンとタメを張る美味さで、日本人好みの風味と軽やかな後味が、わたしの手を止めさせてくれないのだ。

 

過去の失敗(?)を糧に、ナイフとフォークを使って薄くスライスすることで、一気に食べるリスクを軽減させる作戦を思いついたわたしは、慎重にシュトレンにナイフを入れると、薄っぺらいラスクのような一枚を口へと運んだ——うん、一年ぶりの美味さだ。

シュトレンはガッチリとした硬さのため、安物あるいはプラスチック製のナイフだと、なかなかうまく切り分けることができない。さらに、生地の途中にはナッツがゴロゴロと控えているため、ユンボで地面を掘っている最中にバケットに岩が当たって進めない・・というような感じで、頓挫してしまうのだ。

 

それでもわたしは、根気強くシュトレンを切り分けては口へと運んだ。食べ過ぎに気をつけて、なるべく薄くスライスすることを心がけながら、少しずつ咀嚼と嚥下を繰り返した。その結果——言うまでもないが、シュトレンは姿を消した。たったの30分で跡形もなく消え去ったのである。

 

(あぁ・・・また来年会おう)

 

 

そして今、わたしはまるで胃袋の筋トレをしているかのように、摂取量以上の重みを感じている。

ズッシリとした妙な重さと、脂質ならではのプレッシャーに似た存在感を、言い方によっては"十二分に堪能している"わけだが、これぞシュトレンの本領発揮といったところか。なんせ、4週間かけて食べるべきものを30分で食べ尽くしてしまったのだから、間違った食べ方に対する罪の報いを受けた・・という感じか。

 

それでもきっと、来年もまた「一本食い」をしてしまうのだろう。だって、美味いんだもん——。

 

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