「焼肉ライク」が本気で力を入れたのは、肉じゃない

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わたしにとって「晩飯のおかず」といえば、焼いた肉こそが最高の贅沢であり、これ以上の対抗馬は現れないだろう。

 

決して京都をバカにするわけではないが、「お麩こそが最高どすえ!」だなんて、まぁ普通に考えてありえない。

状況によっては、たしかにお麩が相応しい場面があるのは否定しない。そしてお麩こそが、味わい深く情趣に富んでいると、思わないわけでもない。

 

だが、数ある肉料理の中でも「焼肉」という料理は、食べる前から「美味そうなニオイ」という攻撃が始まっている時点で、お麩に限らずいかなる料理と比べても、明らかに破壊力が違うのだ。

 

よって本日の晩飯は、焼肉に決まりである。

 

 

赤坂の歓楽街をトボトボと歩くわたしは、とある看板の前で立ち止まった。

(一人焼肉推奨店、焼肉ライク・・・)

わたしの生活圏内でよく見かける看板である。ガラス越しに覗いてみると、カウンター席がアクリル板で仕切られており、一人一台の無煙ロースターが割り当てられている。

 

そう、皆さんご存知の通り、好きな部位を好きなだけ一人で楽しめる、「焼肉ファストフード店」というジャンルを確立したのが、焼肉ライクなのである。

 

(先日、北海道でものすごく美味いジンギスカンを食べたばかりだが、東京の一人焼肉とやらの査定でもしてやるか・・)

 

こうしてわたしは、焼肉ライクの暖簾をくぐった。

 

先に言ってしまうが、わたしはここで「肉以外の大好物」に満足した。

まさかこの店で揃うとは思いもしなかったが、わたしの期待を裏切るかのように、ご所望の品がすべてテーブルに並べられてしまったのだから仕方ない。

 

たとえばTKG(卵かけごはん)、たとえばカレーライス、たとえば大盛りの白米――。

 

とはいえ、

「所詮、焼肉のファストフード店だろ?」

などと軽く見てはいけない。白米マニアのわたしを完全に満足させるほどの、高いポテンシャルを持つ米と炊き方だったのだから。

 

結局、わたしは一杯170円の白米を、大盛りで4杯頼んだ。そこへトッピングとして、TKGとカレーを注文した。

この組み合わせは王道であり、罠である。

まずは白米だけを満喫し、続いてTKGで幸せをかみしめる。そしてカレーでガツンと胃袋を刺激したら、仕上げに、肉汁で白米をいただいて終わり。

 

――この魔のローテーションにより、わたしの胃袋と脳は完全に満たされてしまったわけだ。

 

実をいうと、はじめは白米の大盛りを3杯しか頼んでいなかった。米の食べ方としては、ノーマル・TKG・カレーだけで十分だからだ。

ところが、焼肉ライクは一人一人のスペースが狭いためか、取り皿が置かれていない。

いや、探せばあったかもしれないし、頼めばもらえただろう。だが、そんな「めんどくさい客」のレッテルを貼られたくないわたしは、取り皿の代わりに「白米の大盛り」を追加注文し、気前のいい客を演じたのである。

 

こうして届けられた「てんこ盛りの白米」は、業務米どころか、岩手県産のブランド米「ひとめぼれ」だった。

炊き方は、あえてちょっと硬めにしてある。これは、焼肉との相性を考え抜いた末にたどり着いた、最高の「咀嚼満足度」とのこと。

 

(たしかに、米がべちゃべちゃしていないほうが、肉のジューシーさを邪魔しない気がする・・)

 

さすがは国産米である。どんな硬さで炊こうが、白米単体でも美味いし、肉を載せて食べればさらに美味い。

――これには思わず、唸らされた。

 

むしろ、カルビから滴り落ちる肉汁と脂を存分に吸収した、噛み応えのあるひとめぼれは、米の表面を上質なオイルで潤わせたかのように、するりと喉を通りすぎる。

そしてロースターいっぱいに肉を並べたわたしは、焦げた肉を次から次へと、取り皿代わりの白米の上に避難させた。

そこでようやく気がついたのだ。

 

(熱すぎる肉を冷まして、ちょうどいい温度にさせるための「待機所」みたいなものか!焼肉における米の存在というのは・・・)

 

今までわたしは、肉は肉、米は米という主義でやってきた。国産で上質かつ繊細な白米を、肉の脂やタレに汚されたくなかったからだ。

無論、肉は肉で高貴な美味さと安定の食べ応えを兼ね備えており、だからこそあえてほかの食べ物と合わせる必要がない、という考えに基づいているのは言うまでもない。

 

だが今日、わたしは「白米」という「取り皿」の使い勝手の良さに、気づいてしまったのだ。

さらに、焼肉ライクの白米に関しては、ダイレクトに米だけを食べるよりも、肉と一緒に食べたほうが明らかに美味いということを、身をもって知ってしまったのである。

 

ちなみに、必ずしも「肉と一緒」である必要はない。

熱々に焦げた肉を、白米の上でちょんちょんとバウンドさせて、余分な脂とタレを落としてから肉だけを食べるも良し。

そして肉汁やタレでコーティングされた白米を、後から急いで掻き込んでも良し。

 

――この店ならば、どうやって食べても「美味い米が食える」ということに、わたしはとうとう気付かされてしまったのだ。

 

 

そういえば、一つ気になったことがある。

焼肉ライクは「無煙ロースター」のため、煙は出ない。よって、焼肉特有の煙のニオイが気にならない、というのはその通りだった。

 

しかし、わたしのロースターからは、なぜかずっと火柱が立っていた。

 

何かが燃えているから火柱が立つわけで、まずは鉄板に乗っている焦げた肉を取り除いてみる。

それでもまだ火柱が立つので、鉄板の下に落ちたのであろう肉の残骸(?)をトングで突いて、木端微塵に成敗した。

・・・すると、当たり前だが火柱は止んだ。

 

両隣りの客のロースターから火の様子はうかがえないが、火柱が立てば目立つからわかるだろう。つまり、彼らは火柱を立てていないのだ。

――これは、わたしの調理方法が間違っていたのだろうか?それとも、わたしのロースターがおかしかったのだろうか?

この部分だけが謎ではあるが、とりあえずそそくさと会計を済ませると、駅へと向かった。

 

・・・おっと。焼肉の話をしようと思いつつ、米の話で終わってしまった。

だが「焼肉ライク」が本気を見せたのは、明らかに肉ではなく白米だった、という点に異論はないだろう。

 

サムネイル/ホットペッパーグルメ 焼肉ライク札幌狸小路店より引用

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