わたしは霊を見たことがないので、実際にどのような形状のものがどのような表情で憑いているのかは分からない。だが、見える人には見えるらしいので、その話を聞いては「なるほど、そんな感じなんだ」と、脳内でメモを取っている。
そして、とある”霊が見える人”の発言を聞いたわたしは、思わず関心してしまった。なるほど、だから頭が割れるように痛いのか——と。
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そこには、見るからに薄幸な女性がいた。顔つきは無表情でのっぺりとしており、まるで能面のようで生気がない。そんな彼女は不運の連続で、ある時はコップが勝手に割れるといった超常現象にも見舞われる始末。
さらに、頻繁に起きる”頭痛”に悩まされていた彼女は、助けを求めて霊が見える知人の家へと向かったのだ。
しかしながら、その知人というのは霊が見えるわけではなく、何らかの未来が見えるタイプだったため、彼女の願いを叶えることはできなかった。だが、たまたま居合わせた別の男性が”見える”人であり、こんなことを呟いたのだ。
「あんた、お人よし過ぎるから悪い霊につけ込まれるんだよ」
数多くの悪霊にとり憑かれている様子だが、中には動物の霊もいるとのこと。しかも、彼女を悩ませる頭痛の原因が、なんとその動物の仕業なのだとか。
常日頃、彼女は頭がズキズキ・・いや、ガンガン痛むことで悩んでいた。おそらく、医療機関を受診したところで「原因不明」と言われるオチだろうが、その痛みについて男性は、
「笑っちゃいけないけど、頭痛の原因はアレなんだよな・・」
といって、彼女に憑いている動物の霊を指さした。なんとそれは——ラッコの霊だったのだ。
見ると、ラッコの霊が石のような物を持って彼女の頭をガンガン叩いているではないか。そりや、ラッコの習性である「貝を石で割る」を頭でやられたら、痛いに決まっている。それこそ「頭が割れるような痛み」に襲われているわけで、読んで字のごとく・・。
この「まさかの展開」を聞いたわたしは、思わず吹き出した。実際に”ラッコの霊に頭を叩かれることで、頭痛に悩まされている者”がいるとすれば申し訳ないが、「頭が痛い」と真剣に悩むその原因が、必死に貝を割ろうとするラッコの仕業だと思うと、さすがにシュールで面白い。
ヒトからすれば確かにいい迷惑ではあるが、ラッコにしてみればそれが生き甲斐(?)なわけで、頭痛から解放されるにはロキソニンやバファリンではなく、除霊一択となる。
要するに、この世で偏頭痛に悩む人々の何割かは、ラッコとは言わないが何らかの動物霊——たとえばキツツキやチンパンジーなどが、頭上でガンガンやっている可能性もあるのか・・と考えると、なんとなく痛みも和らぐのではなかろうか。
(いや、当事者にとっては笑いごとではないから、やっぱり除霊するしかないのだろう)
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——以上は、アニメの一コマを抜粋したものである。
これはあくまで”作られたストーリー”だが、もしかすると現実的に動物の霊が憑いている・・という可能性もあるかもしれない。そういったものが見えないわたしからすると、まさにファンタジーのような感覚なのだが、その反面、妙に納得できる”事情”でもあるから面白い。
(医学的、あるいは生理学的に原因不明な心身の不調が、まさかの動物の霊によるものだとすれば、それはそれで受け入れられそうだ・・)
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