一応、社労士であるわたしは、毎月届く「月刊社労士/12月号」に目を通しながら、刻々と変化する年金や社会保険に関する改正法について考えていた。
今年6月に成立した年金制度改正法が、来年(令和8年)から順次施行されるが、予定されている法令改正事項を見ていると「いよいよ世も末なんじゃ・・」という気がしなくもないわけで——。
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まずは、来年4月に施行される「在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げ」について。
これは、そもそも老齢厚生年金を受給中の被保険者にしか関係のない話となるが、賞与込みの月収額が現行の基準額である51万円を超える場合、年金額の一部が減額される仕組みとなっているのを、4月からは62万円に引き上げることになった。
改定の理由は、言うまでもなく人材確保や技能承継の観点から、高齢者の労働環境を確保するためだろう。その結果、これまでは年金月額(厚生年金のみ)+給与(賞与含む)が51万円を超えないように調整された労働条件で働いていた高齢者が、プラス10万円分稼いでも年金が減額されないとなれば、今よりも活躍の場が増えるのではないか・・という目論見と思われる。
とはいえ、老齢厚生年金と給与を足して51万円を超える者・・ということは、仮に月10万円の老齢厚生年金を受給していれば、給与は月額40万円となる——まぁまぁな金額じゃないか・・なんて思うのはわたしの収入が低いせいかもしれないが、支給停止基準額を大幅に引き上げるのだから、それなりのニーズがあったということなのだろう。
続いて、来年10月に施行される「短時間労働者の被用者保険加入支援措置」について。
こちらは、社会保険(専門用語で「被用者保険」が正式名称だが、一般的に知られていないので「社会保険」と呼ばせてもらう)の被保険者50人以下の企業で働く短時間労働者で、企業規模要件の見直しなどにより新たに社会保険の加入対象となる者、かつ、標準報酬月額が12.6万円以下の者に対して、被保険者の保険料負担を軽減する・・というもの。
端的にいうとこうなのだが、実際の保険料負担の軽減方法はというと「被保険者の負担を軽減し、その分を事業主が追加負担する」という、政府御用達の”事業主による先払い方式”である。先に納付をさせた後に、事業主の追加負担分を制度全体で支援する・・ということだが、現在のところ具体的にどう支援するのかは決まっていない。
ちなみに、この支援は3年間の特例的・時限的措置であり、3年目の軽減割合は半減されるとのこと。また、令和9年10月に社会保険加入の企業規模要件(被保険者の人数)が現行の51人以上から36人以上に縮小されるため、支援措置を利用する事業主が増えるとの見込みだが、いずれにせよ中小零細企業に忍び寄る社会保険適用拡大の流れは、どう足搔いても止められないのである。
最後に・・といっても文字数の都合上最後にするだけで、令和8年施行の法令改正事項はまだまだあるので悪しからず。
話を戻して、来年10月から解禁となる「第1号被保険者の育児期間の国年保険料免除」について。
これまでも第1号被保険者・・すなわち自営業やフリーランス(もちろん、無職も含む)など”国民年金被保険者”は、第2号被保険者たる厚生年金被保険者と比べて、保険料や保険給付に差があったわけだが、その最たるものが「育児期間の保険料免除がなかったこと」だろう。
厚生年金被保険者の場合、事業主経由で育児休業期間中の保険料免除を申請できたり、育休終了後に保険料等級が1等級でも下がれば随時改定が可能だったりと、なにかと優遇されてきた。対する国民年金被保険者は、2019年に「産前産後期間の免除制度」が始まるまで、それこそ臨月だろうが産後すぐだろうが、否応なしに保険料を徴収されていたのだから可哀そうである。
それが来年10月からは、子が1歳になるまでの期間について父母いずれも国民年金保険料が免除となる。しかも、育児期間中の就業の有無や所得の状況などは問わない・・ということで、安心して育児および仕事に励むことができるだろう。
——よって、これに関しては手放しで喜べる法改正といえるわけだ。
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以上は、ざっと見て目に留まった主な施行内容だが、第1号被保険者の育児期間中の保険料免除以外は、当事者や企業によって少なからず負担が増える内容となっている。
今のご時世を見ていれば負担増は致し方ないことではあるが、自分が「高齢者」と呼ばれる世代になったとき、果たして社会保障制度はどうなっているのか・・なんて、今はまだ考えたくない案件である。




















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