果物ランキング下位のスイカ

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念のためハッキリさせておくが、わたしが好きな果物は、桃と葡萄と苺と梨である。もちろん、果物全般になんでも好きだが、その中でもどれが好きかと言われれば、この4種類が挙げられる。

 

さらに、桃の中でも一番は白桃だ。桃太郎が生まれてきそうな大ぶりの、薄ピンク色が美しいそのお尻は、外皮など剥くことなく皮ごと齧りつくほど愛おしい。そして果実の中心に君臨する、大きな種の表面にこびりつく繊維の一本までしゃぶり尽くすのだ。白桃というのは、まさに天が授けし果物の女王なのである。

とはいえ、実は甲乙つけがたいもう一人(?)の桃がいる。そう、ネクタリンだ。白桃とネクタリン、値段は雲泥の差かもしれないが、手頃な食べやすさと果肉の歯ごたえ、そしてジューシーな果汁量は、白桃よりもネクタリンに軍配が上がる。その上、ネクタリンは一パック4個か5個で売られているため、1個か2個ずつ売られている白桃よりもボリュームで勝るのだ。

 

果物界における二位は葡萄であり、中でも断トツでシャインマスカットが好物だ。とくに、大粒で張り裂けんばかりの黄緑色の果実は、わたしだけでなく人間を虜にする恐ろしい魅力を放つ。皮ごと食べられる上に種も存在せず、しっかりとした果肉と糖度抜群の甘みは、他の追従を許さない。シャインマスカットは高価な果物だが、値段に見合った価値があると断言しよう。

だが、果物界の二位である葡萄にも二番手が存在する。それはナガノパープルだ。シャインマスカットよりも大きな果粒は、ゴム風船に入った「玉羊羹」を彷彿とさせる。巨峰とリザマートを交配してつくられたナガノパープルは、上品で濃厚な甘みが特徴的。しかし残念なことに、こちらもシャインマスカット同様に高級果実であるため、いつでもポイポイ食べられるわけではないのが玉に瑕(きず)。

 

ちなみに三位と四位の苺と梨は、正直どちらでもいい。桃と葡萄が抜きんでているだけで、その他は特筆するほどの思い入れがあるわけではないからだ。

とはいえ、苺は一年の半分は購入できるため、長年連れ添ったパートナーのように「食べられて当たり前」であり、かつ、「絶大なる信頼を寄せている」といえるだろう。ただ、果皮が非常に薄くて繊細なため、店頭に並ぶ苺の多くは傷がついていたり、潰れていたりすることもある。市場へ流通させるためには多少のリスクは致し方ないが、少しでもあの子たちの安全を守ってやりたいものである。

 

こんなにも果物に対する愛情を語ってきたが、冬場の主役はポンカンとデコポンだった。指先のみならず顔面までまっ黄色にさせて肝機能障害まで疑われたあげくに、血液検査で超健康体であることを証明してみせたわたしは、桃や葡萄には劣るとはいえ、金額的にもボリューム的にも圧倒的なコスパを示すポンカンとデコポンを寵愛していた。

だがこれらの柑橘類を、果物の上位に指名することはない。彼ら彼女らには大変申し訳ないが、ここだけはどうしても譲れない「純愛的な想い」があるからだ。

 

 

というわけで、他にもいくつかの果物を挙げた後に登場するであろう順位の果物が、スイカである。

夏の風物詩ではあるが、一玉の大きさや外皮の残骸、そして食べる度にプップと吹き飛ばさなければならない種の存在は、果物ランキングの上位に名を連ねるには、どうしてもネックとなる。

つまり、そこまでスイカに愛着を感じているわけでも、ずば抜けて気に入っているわけでもないことは理解してもらいたいのだ。その上で、わたしは今日、大玉のスイカを購入したことを報告する。

 

包丁もないくせに、どうやってスイカを割るのか?・・フフフ、そう思ったアナタは思考が停止している証拠である。

真夏のビーチを思い出してみるがいい。オニューの水着に身を包んだ若い男女のグループが、目隠しをして木製バットを振り回し、キャッキャキャッキャとスイカ割りを楽しむ光景が浮かぶだろう。

そう、あの要領でスイカを割ればいいのだ。とはいえ非力なわたしがパンチやチョップをしたところで、スイカが割れるはずもない。木製バットもそれに近い棒も我が家には存在しない。ではどうすれば――。

 

レジ袋の口をギュッと結んだわたしは、大理石風の床へとスイカを叩きつけた。

なんともいえない、まるで殺傷事件が起きたかのような鈍い破裂音が耳を刺す。だがそれと同時に、大玉スイカには見事な亀裂が走っていた。

(よし、これでスイカが食える)

シンクにボタボタと果汁を垂らしながら、わたしは一心不乱にスイカにかぶりついた。そして前歯を巧みに操作し、外皮と果肉のギリギリにこびりつく白い部分まで削り取った。

 

念のため、再度宣言しておくが、わたしが好きな果物ランキングにスイカは入っていない。それなのに二日連続で大量のスイカを摂取したのは、思うに、スイカには依存性のある麻薬のような成分が含まれているのだろう。

そうとしか考えられないのである。

 

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