夏、決して選択してはならないエアコンの「モード」

Pocket

 

一円でも電気代を節約したい・・と強く願うわたしは、ギリギリまで粘るも30度を超える暑さに根負けした結果、ついにエアコンの電源を入れた。

そして、本来ならば「冷房」を押すところだが、今回は「自動」ボタンを選択してみた。なぜなら、冷房や暖房で温度設定をするよりも、自動モードでエアコン自身に温度調節をさせるほうが、省エネになると言われているからだ。

ちなみに、一般的なエアコンの自動モードは、26度~28度で設定されているのだそう。とはいえ、外気温でその数字は普通に暑い気もするが、とりあえずは”快適温度”としてデフォルトで設定されているのである。

 

このような経緯から、しばらく自動モードで運転させた後にわたしは思った。

(室内がまったく涼しくならないんだが・・)

エアコンは相変わらずフル回転で稼働しているが、いかんせん出てくる風がぬるい。ぬるい・・と言っては語弊があるが、キンキンに冷えた風でなければ、そもそも天井が高いわが家を冷やすことはできないのだ。

(まぁ、もう少し様子を見てみるか)

しばらくすれば、空気が混ざり合ってそこそこ冷んやりするかもしれない。そんな物理現象に期待しつつ、わたしはしばし昼寝をすることにしたのである。

 

ヒトは、寝ると体温が下がる仕組みになっている。手足などの末端の血管が広がり、体外へ熱を放出することで深部体温が下がったり、そもそも筋肉の活動量が減ることから、エネルギー消費が低下して熱を作らなくなったり、なにより副交感神経が優位になるので、体温は下がる傾向にあるのだ。

そう考えると、この生ぬるい温度は皮肉にも昼寝に向いている可能性がある。わざわざタオルケットを取りに行くのも面倒だし、かといって寝ている間に体が冷えるのも困る。だが、部屋自体が涼しくなければ、睡眠により体温が下がることで、むしろ快適な状態を生み出すことができるかもしれない——。

 

こうしてわたしは、しばし夢の世界へと旅立ったのである。

 

 

(・・あれ、どのくらい寝たんだろう?)

ここ最近の睡眠不足が影響したのか、気づくと一時間半が経過していた。おまけに、コンタクトレンズをつけっぱなしで寝てしまったので、目が乾いてショボショボする。しかも、何だこの倦怠感と吐き気は——。

 

室内の温度は相変わらずの生ぬるさで、汗をかかない程度の暑さではあるが、それが逆に最悪の状態をもたらした様子。なぜなら、明らかに体内に熱がこもっているのに、発汗しないせいで体温が下がらないのだ。

火照りのみならず、身体は鉛のように重く怠い。それどころか、何も食べていないにもかかわらず胃がムカムカするではないか。胃腸の強さがウリのわたしが吐き気に襲われるとは・・まさか、これはいわゆる熱中症というやつでは——。

 

嘔吐というより胃に不快感を覚える吐き気というのは、それこそ重度の疲労か熱中症の典型的な症状である。しかも、体内にへばりつくかのような粘着質な火照りは、明らかに異常であることを示しており、「このままでは救急搬送案件になるかも・・」という緊急事態を覚悟するほど。

とりあえず、深部体温を下げるべく冷たい飲み物を・・と冷蔵庫を開けたところ、そこには備長炭と小袋マヨネーズが転がっているだけだった。

(これはマズい、我が家に冷たいものは存在しないのか・・)

こうなったら、脇・首・足の付け根など太い血管が通っている部分を冷やすしかない。幸いにも、冷蔵庫は空っぽだが業務用冷凍庫には大量の保冷剤が眠っている——ありったけの冷たさで体温を下げてやる!!

 

首筋、両脇、さらに股関節へ保冷剤を詰め込むと、動悸と吐き気に耐えながら体温が下がるのを待った。10分、15分・・20分くらい経った頃、徐々に体調が回復するのを感じたわたしは、おもむろにエアコンのリモコンを手に取ると「冷房」ボタンを連打した。

 

(・・なんだこの冷たくて気持ちがいい風は)

 

 

とにかく、改めて声を大にして伝えたいことがある。節約だのライフハックだの、調子に乗って電気代をケチったあげく熱中症で救急車を呼ぶくらいなら、最初から「冷房」を選択するべき。

なによりも、衣服を着こむことで体温調節が可能な冬ならば「自動モード」もありだが、どうやっても体温を下げられない夏に限っては、「自動」ではなく「冷房」を使わなければ命にかかわるわけで。

 

あえて勧めはしないが、猛暑日を狙って「(設定温度を下げた)自動」と「冷房(26度)」とを比べてみると、この二つはまるで別物であることが分かる。とどのつまりは、自動モードでは熱中症は防げない・・ということを、わたしが身をもって証明したのである。

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です