彼氏も彼女もいるセクシー女優に「抱いて」と迫られる深夜3時

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深夜2時過ぎ、沙羅からラインがきた。

 

「いまなにしてる」

 

「仕事」

 

仕事に集中していた私は、短くぶっきらぼうに返信した。

と同時に、

 

「いまから行っていい?」

 

 

ーーいや、本当に今日はやめてくれ。

どうしても、明日の朝までに仕上げたい仕事があるんだ。

 

そう思った私は、既読スルーした。

 

その数分後、沙羅から電話がかかってきた。

 

ーーもはや逃げられないわけか

 

電話に出ると沙羅はただ嗚咽を漏らしていた。

何を聞いても何も答えない。

 

(これは非常に迷惑な状況だ)

 

電話をスピーカーにして仕事を続けようとしたとき、最悪の発言が出た。

 

「いまから行くから、住所おしえて」

 

集中力の切れた私は、自宅の場所をピンしたデータを送った。

そしてすぐさま、部屋の片付けを始めた。

 

 

「タクシー降りたけど、どこかわからない」

 

沙羅を迎えに外へ出た。

マンションの最上階から地上を見下ろすと、暗闇でもハッキリとわかるセクシーな格好をした女がウロウロしている。

 

「上、みて」

 

ラインを送ると、セクシー女優がこちらを見上げた。

 

 

エントランスまで出迎えに行った私を見るなり、沙羅はぐしゃぐしゃの顔でこう言った

 

「おねがい、抱いて」

 

 

ーー私は、女を抱く趣味はないのだが

 

 

エレベーターに乗ると、沙羅は鼻水をすすりながら近寄ってきた

 

「せめてハグして」

 

ただでさえ酒臭い女が抱きついてきた。

私はしかたなく、沙羅の肩を抱きしめた。

 

なんで夜中の3時近くに、化粧が落ちてお化け屋敷の演者みたいな顔をした、酒臭い嗚咽オンナの肩を抱かなければならないのだろうか。

 

私はただ真面目に仕事をしていただけなのに。

 

 

部屋に入ると、沙羅の本日の出来事を聞かされた。

 

要約すると、

 

・初対面の美人と飲み歩いたあげく、自宅に連れ込まれて押し倒された

・今日は生理だから無理、と断った

・沙羅はパンツ履いたままでいいから大丈夫、と言われた

・私、好きな人(女)いるからと伝えた

・美人はキレて沙羅は追い出された

・彼氏には言えないからこのまま(号泣中)じゃ家に帰れない

 

こんなところだ。

 

沙羅には彼氏がいる。

そして、彼女もいる。

さらに、別の女性からも迫られた。

 

これはつまり、単なるモテ自慢か。

夜中の3時にモテ自慢を聞かされ、仕事を途中放棄させられた私の立場とはいったい。

 

しかしここまで号泣し続けるには理由があり、どうもその美人との会話で、沙羅の元カノの話題が出たらしい。

 

美人と元カノは、偶然にも知り合いだったのだ。

 

もうすっかり忘れたはずの元カノの近況を聞いた沙羅は、つい、気持ちが揺らいだ。

 

沙羅の心にあいた穴をいまの彼氏と彼女で埋めたつもりが、穴は予想以上にデカかった。

 

思うに、相手が男でも女でも失恋の傷は深い。

沙羅なりに新たな人生を歩み始めたが、まだ傷は癒えていなかったのだろう。

 

 

時刻はもう5時になろうとしている。

私は朝から予定があるため、速攻で寝たい。

 

ぐずる沙羅をソファに寝かせつけ、黙って電気を消した。

 

「まだはなし終わってない!

かってに電気消さないで!」

 

泣き叫ぶ沙羅を無視して私はベッドに横になった。

 

その数秒後、

 

グーー、グーー。

 

私より先に、眠りについた沙羅がいた。

そのいびきがうるさくて、結局私は眠れなかった。

 

 

三大欲求(食欲・性欲・睡眠欲)の中で、最も耐えられない欲が睡眠欲ではないだろうか。

 

「知らないうちに」

という表現が使えるのは、睡眠だけだからだ。

 

失恋に傷ついてドロドロの顔になろうが、部屋を暗くすれば眠りの世界へ一直線。

 

明日は笑顔で恋愛を謳歌してもらいたい。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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