「フードロス」という日本が抱える大きな闇を別視線から

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フードロスについて調べる機会があった。

結局のところ、いま現在取り上げられている取り組みは「現状維持にはどうすればいいか」の答えであって、将来的にフードロスを減らすことにはつながらない

 

フードロスの根幹は、一次産業にある。

農家の多くはJAの傘下にあり、JAにコントロールされながら生計を立てている。

 

例えば苗を買うにも、肥料を買うにも、農薬を買うにもJAから購入する。

 

JAグループの販売と購買を統括する全国農業協同組合連合会(全農)は、肥料で7~8割、農薬で約3割のシェアをもつ、圧倒的なプライスリーダーと言われている。

 

ホームセンターへ行けばもっと安く買える肥料や農薬もあるが、JAを通して買い続ける。

 

そんな「JAにおんぶにだっこ」の農家にも問題がある。

一般的な事業主のように、事業計画やお金の見方・考え方などまるで気にしていない。

なぜなら、

「農作物をつくれば、JAが買い取ってくれるから」

という珍回答。

 

さらに農作物には「出荷規格」なるものがある。

これは国が定めた基準でもなんでもない。

JAが定めた規格だ。

 

もちろん、流通の合理化や消費者のニーズに合わせた規格を設けることで、より安全にスピーディーに農作物を運び、店頭に並べることができる。

 

しかしその「規格」のせいで、味はまったく同じ “B品” が誕生するのだ

 

 

友人の一人が、農家と小売業の間に入り、美味しくて珍しい野菜や果物を全国へ流している。

 

最初のきっかけは、茨城で最高に美味いと評された「奇跡のいちご農家」の再編に携わったときだ。

いちごはデリケートな商品ゆえ、運搬が難しい。

かつ、クール便でなければならないとなると、運搬費用だけでもバカ高い金額が発生してしまう。

 

友人は考えた。

 

茨城には大洗漁港がある。

しらすや近海漁業が盛んな地域だ。

そこから全国へ運んでいる活魚トラックがある。

そのすみっこへ、いちごを乗せてもらえないだろうか。

 

友人はすぐさま交渉に行き、運送業者から快諾をもらった。

 

徳島行きの水産物専用の冷蔵コンテナの空きスペースに「奇跡のいちご」を乗せ、途中、ところどころで市場の人にピックアップしてもらい、徳島までのルート途中のさまざまな地域へ、新鮮ないちごを届けられるようになった。

 

ちなみに、物流コストは一般的な配送業者の十分の一で済んだそう。

 

 

「ニンジンて先が細いイメージじゃないですか?

あれって、土のせいなんですよ」

 

ニンジンは三角形が普通なんじゃないの?と思っていた私。

 

「栄養分が先端まで行き届いていないから、先細りするんですよ。

肥沃な土壌で育ったニンジンは、先までまるまると太ってます」

 

ニンジンにかぎらず、どんな野菜でも養分が末端まで届いていると、先細りせずまるまると太っているらしい。

野菜が太っているのは、土作りが成功している証なのだそう。

 

「土作りがちゃんとできてる農地からは、ロスになる野菜なんて生まれないんですよ」

 

これは、裏を返せば農家の怠慢だ。

 

どんな野菜でも、とりあえず毎年作ってるんで今年も作りました。

JAの規格に合わせて作ったんで、買い取ってもらえてラッキーです。

規格外は毎年2割程度でるので、その分も見越して作ってます。

 

収穫時点でロスとなる2割がもったいない。

 

ロスの原因となる農作物の形状異常の一つに、根菜が二股になる「股根」がある。

これは、根が育つ方向に石や土の塊などの固いものがあると、根がそれらにぶつかり分かれてしまうために起きる。

 

では、股根を防ぐにはどうすればいいのか。

 

「土を深くまでしっかりと耕すことです」

 

至極当然の答えだ。

土作りの手を抜かないことで、地中深くにある障害物を取り除くことができる。

さらに肥料や堆肥の分解も早まる。

 

そうすることで、必ず出るロスなどというものは消えるのだ。

 

 

「仮にネジのメーカーが『2割は不良品が出ます』なんて言ってたら、商売にならないですよね?

気候の変化を受けやすい農業ですが、2割のロスなんて本来ありえないんです」

 

農家サイドのビジネス感覚の無さも、ロスを発生させている原因の一つだろう。

しかし肥料や農薬を選ぶことも含め、JA支配下の農家にとっては馬耳東風。

 

たとえばスペインは国内にマーケットがあり、輸入資材に頼らず自前の施設で圧倒的な低コスト施行が実現しており、農業部門の成長が著しい。

 

国を挙げての取り組みが必要な分野だが、JAが君臨するゆえ難しいのだろう。

 

 

漁業関係者にとって「山」が大切なことなど、知らなかった。

 

「山が枯れると海も枯れるんです。

だから間伐は絶対に必要。

間伐しなければ樹木はいずれ死にます。

そうなると、土がむき出しの山になってしまいます」

 

樹木が枯れて荒廃した山からは、土の混じった汚い水が海へと流れ出る。

それにより、牡蠣や昆布などの養殖業を営む人々が多大な影響を受けるのだ。

 

そのため、いまでは全国の漁業関係者が「植林」を行っている。

なぜ漁師たちが植林をしなければならないのだろうか。

国主導でやればいいのではないか。

 

そう思い、私は日本の森林面積を調べてみた。

 

日本の国土の実に7割弱が森林である日本。

なかでも、私有林は58%と半分以上を占めていた(ちなみに国有林31%、公有林11%)。

 

(これじゃ国も公費投入してまでやりたいとは思わないわな)

 

さらに友人いわく、

 

「私有林のほとんどが、個人というより製紙会社とか企業が持ってるんです。

でも今は海外からの輸入がほとんどなので、山は手入れがされず荒廃しきってるんです」

 

製紙会社にとったら、海苔や昆布、牡蠣がどうなろうが知ったこっちゃない、ってことか。

 

聞けば聞くほど「フードロス削減!」なんて声高に叫ぶ人らに、もっと根底に目を向けたらどうかと教えてあげたい。

 

現時点で実行可能な対処や行動は、もちろんすべきだ。

家庭でできるフードロス対策も、いくらでもある。

 

しかしもっと規模のデカい、金もかかる、厄介な分野へのテコ入れが必要であることを知ってしまったわけで、その闇は深そうで気が滅入る。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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