非課税の食事補助が、にわかに世間を騒がせている裏事情

Pocket

 

先月あたりから、社労士界隈でにわかに騒がれているトピックがある。それは、「食事補助に関する会社負担分を、報酬とみなすか否か」について——。

どういうことかというと、いわゆる福利厚生サービスの一環である「食費補助に関するカードやアプリの利用」が、税法上の非課税枠内であっても「会社負担分は報酬とみなし、社会保険の算定の際には含める」というものだ。

 

「食事(食費)の補助」といえば、交通費や健康診断といった”福利厚生のスタメン”と肩を並べる存在で、その昔は社員食堂やカフェテリアのような「食事をとるスペースを社内に設けるスタイル」が主流だった時代もある。

また、宅配弁当やケータリングといった、オフィスまで食事を配送したり敷地内でキッチンカーによる販売を行ったりするサービスも増えたため、都心の昼時にはあちこちで多くのキッチンカーを目にするようになった。

これらの他にも、社員食堂の延長で「オフィスコンビニ」と呼ばれる形態が増加している。コンビニに設置されているような大型冷蔵庫(商品棚)を企業へ貸し出すことで、サラダや総菜・サンドイッチといった新鮮かつ健康的な食事を、外出することなく手軽に購入できる・・という便利さがウリ。

 

そして今回、奇しくも白羽の矢が立った「カードやアプリによる食事チケットサービス」は、”食事補助のルーキー的存在”といっても過言ではないほど、利用者急増中の人気サービスである。

こちらは、専用のICカードへ会社が食費をチャージし、提携先のレストランやコンビニにて従業員が利用する・・というシンプルな仕組み。なによりも、食事補助には非課税枠が存在するため、会社からの支給額が限度額(3,500円)以内、かつ、従業員の自己負担が50%以上であれば、給与として課税されることはないという点が、労使ともに嬉しい事実といえる。

 

当たり前だが、「食事補助が非課税」というのは会社にとっても従業員にとってもwin-winな制度であり、利用に関する自由度の高い食事補助カード(アプリ)が注目されるのは当然。しかしながら、社会保険料の算定については「たとえ非課税の範囲内であっても、会社負担分は報酬とみなす」というのが、悲しいかな現状における日本年金機構の方針なのだ。

わたしも先日、この件について某年金事務所へ確認をしたが、その際に「少し前から、まったく同じ内容の質問が急増しているんですよ。なにかあったんですかね?」と、逆に職員から尋ねられる始末。

これにより日本年金機構は、相次ぐ同様の質問に対する統一見解をまとめ、全国の年金事務所へ内部通達を出した。それこそが、「会社負担分は社会保険料の算定に含める」というものだ。

 

ちなみに、令和8年度より非課税の上限が7,500に上がることが閣議決定されているため、そうなると会社負担を上げる=福利厚生を充実させる企業が増える可能性も高い。

無論、従業員にとっては嬉しい話であり、賃金以外の面での充実を図りたい会社側からしても、このような食費サポートが非課税で行えるならば喜ばしいに決まっている。よって、社会保険料に影響が出る可能性はあるが、だからといって躊躇するほどのものではない・・と、個人的には考えているわけだが。

 

なお、似たような福利厚生を挙げると、交通費社宅にかかる家賃などが同様の対応となるが、食事すらも報酬として見逃さない日本年金機構は、恐ろしい・・いや、「厳格である」の一言に尽きる。

その一方で、ICカードの利用先がコンビニの場合、基本的にはどの商品でも購入できてしまうため、必ずしも食事を購入したかどうかは分からない・・という「ルールの抜け穴」があることを、当局は把握していた。

 

もしもそのカードが、「就業時間内かつ食事にのみ利用できる」という機能的な制限を付与できるならば、食事補助として認定できるだろう。だが、現状のように便利さの度が過ぎてしまうと、この先、税法上の食事補助のルールに影響を及ぼさないとも限らないのではなかろうか——。

 

 

余談になるが、食事補助について労働保険料に関してはどのような扱いになるのかを、東京労働局へ尋ねたところ、

労働の対価には当たらないので、労働保険料の対象にはなりません

との回答を得られた。

 

まぁ、こちらも「現状での見解はこうである」というだけで、この先どのように変わっていくのかは分からない。時代の流れに沿ってアジャストさせていくのが「法律や規則」の本質なので、現実とかけ離れた運用となれば、当然ながら改正も必要となるだろう。

とりあえず、社会保険料の算定では食事補助の会社負担分を含むが、労働保険料の年度更新では含まない・・ということだけ、実務上の知識として覚えておこう。

 

Pocket