大きな怪我には意外と強いが、小さな怪我にはめっぽう弱いわたしは今、ズキズキと痛む小さな傷(?)に悩まされている。
というか、傷ではなく親指のツメの際から生えている「小爪」の痛みに、大のオトナが翻弄されている・・というのが正しい言い方か。
それにしても、骨折や靭帯・半月板損傷なんかより、こういう地味な痛みのほうが耐え難いのはなぜだろう。
思うに、デカい怪我は「怪我したんだから痛くて当たり前」と割り切れるからではなかろうか。なんせ、やってしまったことはいくら悔やんでも元には戻らない。だからこそ、諦めが肝心なのだ。
さらに、そういうマインドが強いわたしは、肋軟骨がペキッと鳴ったら「あ、折れた」と即座に把握し、その瞬間から肋軟骨をどのように庇(かば)いながら生活をするか考え始める。
そこで「痛い痛い」と泣きわめいたところで、傷に余計に響くだけ。なんせ、骨が折れているのだから痛いに決まっているわけで、それならば痛みを嘆くよりも、その先の人生のあり方を考えるほうがよっぽど建設的だからだ。
それに比べて、この「小爪」は厄介である。血が出るわけでもなく、見た目もなんら異常を感じさせず、ちょこっと飛び出た"ささくれ"のような小さなツノが、なぜかめちゃくちゃ痛いのだから。
ちなみにこれは、ささくれと混同されがちだがれっきとした"ツメ"である。そして、ささくれは皮膚が裂けたものだが、小爪はツメが裂けたもの。その違いは触れば分かるが、小爪は明らかに硬くて痛いのだ。
そしてこいつを放置しておくと、小さなツノが衣服に引っ掛かって激痛に見舞われるので、小爪が発覚したらすぐさまカットするようにしている。
それにしても、この小爪ってやつは想像しただけでもゾッとするほど痛い。
ささくれ同様に「ちょっと引っ張って抜いてしまおう」などと考えた日には、拷問級のとんでもない痛みに襲われることになるから、決してそんな気を起こしてはならない。
よく見なければ見落としてしまうような、わずか数ミリの小さなツノではあるが、こいつは明らかにニンゲンを脅かす存在であり、しかも突発的に現れるから油断も隙もないのである。
原因はどうやら「乾燥」にあるらしいが、そんなことを言っていたら手肌の乾燥やら踵のひび割れやら、どれも乾燥に由来するものであり防ぎようがない。
あとは栄養不足(主にタンパク質)とかツメへの衝撃とか、言われてみればそうかもしれないが、それらを完璧に回避することなど不可能な原因ばかり。
よって、憎き小悪魔(小爪)が発生したとしても、ニンゲンは黙ってその痛みを受け入れるしかないのだ。
(ニンゲンって、なんて弱い生き物なんだろうか)
何もしなくてもジンジンする親指の小爪を睨みつけながら、わたしは内心呟いた。
さっき、逆の指にくっ付いていたテーピングの糊を剥がそうと、無意識に小爪を携えた親指で引っ掻いていたところ、小爪周辺の肉が引っ張られたことで激痛が走った。
おまけに、湯をあてて糊を溶かそうとしていたことから、その水分が小爪とツメの間に流れ込んで、その奥に控える肉に触れたのだ。
(イッテェェェェェ!!!)
指先には神経が集中していることから、その他の鈍感な部分よりも痛みを感じやすいのかもしれない。とはいえ、こんなわずか数ミリのツノに脅かされるとは、まったくもって認めたくはない恥じるべき事実である。
さらに腹が立つのは、ジンジンと傷むこの小さなツノを指で抑えると、なおさら痛いことだ。
腹でもスネでも、痛い部分を手で押さえると「手当て」といって痛みが和らぐ。その原理で傷む小爪に触れようものなら、ツメの根元の神経を刺激するのか、またもや激痛が走るのである。
頭が痛いから頭痛薬を飲む。腹を下したから下痢止めを飲む。
そういう感じで、「小爪の痛みを抑える」とか「小爪を刺激しないような治療方法」というのは、ないのだろうか——。
どれほど科学や医学が進歩しても、こんな数ミリの小さなツノに翻弄される程度の発展でしかない・・という現実を、わたしは一人思い知らされるのであった。
コメントを残す