不潔生活がもたらす精神崩壊から復活までの道のり

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久しぶりに真面目に仕事をこなしている。

外圧がないと自ら動こうとしない、私の悪い癖だ。

 

業務のボリュームが多い分にはむしろ快適なのだが、ボリュームが少ないとサボりだす。

これは学生のころからずっとそうだから、こういう性質の人間なのだろう。

 

 

コロナショックにより人間が受ける最悪なインパクトは、無気力になることだ。

 

人間は体力が低下することで、精神力も低下する

それに気付かず、

「なんか体調がすぐれない」

と、ダラダラ過ごすことで、体力と精神力の低下が加速する。

 

 

これは本当に恐ろしい現象だ。

私は6日間、風呂にも入らず顔も洗わず歯も磨かず、誰にも会わずに過ごした。

 

――そう、白金在住高級ホームレスの誕生

 

 

病気で寝込んだりすると、2~3日風呂に入らないことは誰にでもあるだろう。

しかしその間も、ウェットタオルや汗拭きシートなどで、可能な限りの清潔を保とうとする。

 

なにより健全な人間ならば、不潔な状態に耐えられないものだ。

自主的に、風呂やシャワーで汗を流し汚れを落とすだろう。

 

ところが、だ。

精神力が低下すると、その感覚すら麻痺するから恐ろしい。

 

かく言う私も、不潔生活3日目までは意外と普通に生活を送っていた。

 

(まぁ不潔だが、誰にも会わないし外出もしないし、いいだろう)

 

この程度の気持ちで、ベッドとトイレとデスクを往復する生活を送っていた。

 

食事はもちろん、得意のウーバーイーツで賄っていた。

玄関から手だけ差し出し、食糧を受け取って終了。

 

 

一人暮らしの私は、他人との接触を一切断絶することが可能なため、不潔生活を続けても何ら支障はない。

 

まれにオンラインミーティングが開かれるが、その時はパーカーのフードを目深にかぶりマスクとメガネ、完全に犯罪者の風貌で参加する。

 

こうして、あっという間に不潔生活は4日が経過した。

 

 

気持ちの変化が起きたのは5日目のこと。

 

昨日まで、不潔に対してやや後ろめたい気持ちを抱えていたことがウソのように、なにか吹っ切れた、開放的な気持ちを感じ始めた。

 

身体に付着した汗や脂や垢といった汚れなど、まったく気にならない。

 

むしろ、体表を何かがガッチリ覆ってくれている安心感すらある。

(それこそが「汚れ」なのだろうが)

 

ーーなんとなく無敵になった!

 

勘違いも甚だしいが、恐れるものなど何もない感覚に見舞われた。

それと同時に、他人との一切の交流を不快に感じ始めた。

 

携帯が鳴っても、無視。

SNSの連絡も、無視。

仕事のメールすら、無視。

 

社会人として、個人事業主として、士業者としてあるまじき行為だ。

だがその時の私はすでにおかしくなっていたため、なんの違和感もなかった。

 

何度も鳴る携帯の画面には「東京労働局雇用保険電子申請事務センター」の文字。

 

仕事なのはわかっている。

わかっているが、手が出ない。

 

私はただ、その文字をじっと見つめていた。

 

 

不潔生活6日目、そこはもうホームレスの世界。

怖いものはなにもナイ。

 

「不潔?なんのこと?」

 

清潔とか不潔とか、その言葉に何の意味があるの?

と、これ見よがしの勢いで精神が崩壊していった。

 

東京の一等地のマンション内でホームレス(?)生活を送っている人間など、私しかいないだろう。

しかし今の季節なら、これが公園でもゴミ捨て場でも、同じことができる。

そんな変な自信に満ち溢れていた。

 

 

ではなぜ、完璧な「ホームレスマインド」を身につけた私が風呂に入ったのか。

 

それは、一塊の書類だった。

 

 

ホームレス生活を開始した6日前、まだ締め切りに余裕があるから、とデスクの隅っこへ押しやった書類に目が留まった。

 

某助成金の書類だ。

 

助成金は申請期限が厳格なため、1日でも期限を過ぎると受け付けてもらえない。

そうなると、提出代行を受任した社労士の過失となり、損害に対する賠償責任が発生する。

 

ーーそれだけは無理だ

 

損害賠償金が払える払えない以前に、クライアントや友人の信頼を裏切ることが出来なかった。

 

 

私は重い腰を上げ、風呂のスイッチを押した。

数分後、嫌々ながらも風呂に入った。

 

6日ぶりの風呂はとくに快適とも思わなかったが、気づくと2時間ほど湯船に浸かっていた。

 

 

そして風呂から出ると、なんだろうこの感覚は。

身体が軽くなり、自分がキラキラと輝いている気がする。

顔がかわいくなり、スタイルも良くなった気がする。

 

(みんな、私を見て!!!)

 

アイドルにでもなったかのような、そんな不思議な妄想に包まれ、外出したくてしょうがなかった。

 

滅多にしない化粧をし、一張羅(いっちょうら)に身を包み、私は颯爽と出かけた(コンビニへ)。

 

助成金の書類をコンビニのポストへ投函すると、その足で近所を歩き回った。

片っ端から店に入っては会話をし、すべての店で何か(食糧)を購入し、往復3分圏内の距離を1時間半かけて徘徊した。

 

トータル10,000円以上使い、地域貢献もした。

 

大量の食糧を買い込んだ私、

「これ、また引きこもり生活がスタートするんじゃ」

チラッと不安はよぎったが、いま気にすることではないと思考を止めた。

 

 

そんな壮絶で狂気に満ちた不潔な6日間を経験した私が、ここにいる。

 

いま原稿3本を500文字ずつ交互に書いている。

まったく関連の無い内容だが、気が向いた原稿に手を伸ばし、飽きたら別の原稿をちょこちょこいじって、の繰り返しだ。

 

やることがあるのは、幸せだ。

誰かのために何かをすることは、幸せだ。

強制的に動かされることは、ある意味幸せだ。

 

もし暇を与えられたら、私は不潔になり精神が崩壊し、死んでしまうだろう。

 

 

ーー数年後「白金のホームレス」が話題に上ることがあれば、それは間違いなく、私だ。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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4件のコメント

コロナは無気力をもたらしましたよね
私も強制的にやらなきゃいけないなにかないと腰があがりませぬ(やらなきゃいけないことあってもやる気起きませんが(笑))
でも毎日ブログ更新してるから素晴らしい!!

途中、過呼吸と酸欠で死にかけたりしてるけどね・・・。

続けることを目的にしたら終わるだろうね、すべてが。
だからいつかブログ更新できなくなったときは、アイツも人間だったんだ、って思って。

そうそう、マイバッハみにいこうぜ。

台所のゴキを素足で踏み潰し A

こちらに向かい飛翔して来るゴキを素手でキャッチし握り潰し AA

ゴキ天ぷらを食す AAA
(生は危ないから禁止)

サンダル履いているから Bだね

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