早朝から新幹線での移動を強いられたわたしは、まるで仕事がデキるビジネスパーソンの雰囲気を醸しつつ、新幹線のグリーン車へと踏み込んだ。
——と、このように文字にすると非常にカッコイイ感じなのだが、実際のところは散々な状況だった。
まずは、いつも通りの無鉄砲なギリギリスケジュールにより、何か一つでもミスがあれば遅刻確定、すなわち「新幹線に乗り遅れる」という恐るべきチャレンジャーは、顔を洗いコンタクトを装着するとパソコンとタンブラーを片手に家を飛び出た。
・・そう、もうすでにこの時点でおかしなことになっていたのだ。わたしは、大都会・東京をウロチョロし新幹線に乗車するという、大それた行動をとらなければならないというのに、まさかの部屋着で出てきたのだから恥も外聞もない。
もちろん、こうなった責任はわたし自身にある。出発ギリギリまで作業を止められなかった決断力のなさ・・いや、だらしなさと、「どうにかなるだろう」という甘い考えが、このような醜態を晒す羽目となった原因なのだから。
それでも、なぜかギリギリ新幹線に間に合ってしまうことで、これまでの失敗を省みることなく「上手くいった」という記憶しか残らない→性懲りもなく同じミスを繰り返す、という”愚者のループ”を永遠にたどっているのである。
すこし話が逸れるが、昭和の時代では当たり前の光景ともいえる、体罰や身体的な罰を伴うしつけについて。今となっては「しつけ」であっても親が子どもを叩いたり、強制的に何かをさせたりすることは「暴力」にあたるため禁じられている。
とはいえ、限度はあるにせよ「ある程度の刺激」とセットのほうが、ヒトの記憶力や認知能力は向上するように思うのだ。
たとえば同じ曲を聞いたとしても、失恋した時に泣きながら聞いていた曲と、なんの変哲もない日常の最中(さなか)に聞いていた曲とでは、想起される思い出や感情はまるで違うはず。
他にも、味や匂いといった感覚を刺激することで、より鮮明かつノスタルジックに当時を思い出す・・という経験は誰にでもあるだろう。
これらと同様の理論でいくと、ものすごく怖い思いをしたとか痛い思いをすれば、それがいかに「ダメ」であるかを体感的に理解するわけで、同じことを繰り返す率は下がるのではなかろうか。
稚拙な理屈ではあるが、このような持論を展開するわたしは、「ヒトは痛みとともに成長するものだ」と考えている。だからこそ、ダメな時は痛い思いをするべきなのだ。
にもかかわらず、怠惰かつ傲慢の塊であるわたしは、いつもギリギリセーフ(実際には全然セーフじゃない場合も含めて)で生き残ってきたため、未だにこのような体たらくを繰り返しているわけで。
これまた堂々巡りになるが、このような性格や考え方が良くないことくらい、自分でも十分理解している。しかも、改善する気持ちも意欲もあるというのに、結果としていつもギリギリのスケジューリングしかできないのだから、これはもはや「病気」といっても差し支えないだろう。
——などという、言い訳のような許しを請うかのような自問自答をしながら、わたしは新幹線へと乗り込んだ。
ちなみに、ここでもダメージをくらうこととなった。なぜなら、早朝であるにもかかわらず普通席と指定席はすでに満席、残すはグリーン車とグランクラスだけ・・という謎の混雑っぷりだったのだ。
(こんな朝早くに、なんで民族大移動するんだよ!!)
しかしながら、どんなに悪態をついたところで乗車できなければ元も子もない。哀れなわたしは、なけなしの財産からグリーン車の料金を支払うと、ダッシュで改札を通過したのである。
部屋着姿でパソコンとタンブラーを手にしたガタイのいい女が、グリーン車へ侵入——事件勃発の要素が満載のわたしではあるが、そんな疑念を払拭するべく座席へ直行し、静かに腰を下ろそうと肘掛けに手を伸ばした瞬間。
(イテッ!!!)
なんと、ひじ掛けに触れると同時に静電気が指先を襲ったのだ。
新幹線のひじ掛けは、合皮というか樹脂というか、少なくとも金属ではない柔らかな感触であるにもかかわらず、なぜ静電気が発生するのだ?!
納得がいかないまま、とりあえず手でも洗おうかと洗面所へ向かったところ——またもや、まさかの攻撃を喰らったわたし。今度はなんと、水道水に触れた途端に指先で静電気が発生したのだ!!
この二つの刺激を受けて、わたしは思った。
「あぁ、これこそが天罰なのだ」
実のところ、静電気が与える刺激というのは、わたしにとって「もの凄く嫌な痛みの筆頭」といっても過言ではないくらい、恐怖を感じる刺激なのだ。
打撲や骨折のような、ある意味「受け入れられる痛み」とは異なり、マジで不要な痛みではないか。あんなもの、この世から消えてなくなればいい!人体にとって静電気というのは、悪影響しか及ぼさないではないか!!
——おっと、冷静さを失ってしまった。
いずれにせよ、人生というのは最終的には帳尻が合うようにできているのだ。遅刻ギリギリがよくないことを、憎き静電気が教えてくれたのだから。
*
それにしても、よくよく考えると今シーズン初ではなかろうか。静電気による攻撃を喰らったのは。




















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