音痴ながらもなぜか支持率の高いポールから、URLが送られてきた。
開くと、競輪のレースの映像だった。
(なんだ、自分の歌じゃないのか・・)
競輪を知らない私は、動画を見てもあまりピンと来ない。
ただ、タイトルが「レジェンド」となっているので、この人たちは競輪界における重鎮、あるいは偉業を達成した方々なのだろう、くらいは分かった(棒読み)。
レースは、白ユニフォームの人が一着だった。
この人は、ラスト一周を先頭のまま逃げ切ったから、強い選手なのだろう。
途中で、緑 や 黄 も怪しい動きをしていたが、最後、失速して終わった。
きっと、作戦が失敗したのだろう。
顔も名前も分からないので(棒読み)、とりあえず「色」で見るしかない。
白、黒、赤、青、黄、緑、橙
――まるで、戦隊モノだ
ここに、何故か、紫にオレンジの線が入った、カッコいいユニフォームの人が混じっていた。
この人は、レース序盤はずっと先頭を走っていた。
しかも、かなりゆっくり。
さらに驚くことに、この人だけは電動自転車だった。
――こんなズル、許されるのだろうか
ところが、なぜかこの人は、レース途中で消えて行った。
(・・なんの役割の人だったんだろう)
――競輪は、奥が深そうだ。
*
女子は、競輪を知らない。
周りの女子どもに、
「競輪って知ってる?」
と、アンケートをとってみた。
①松戸市在住ジェンヌさん
「競馬の自転車バージョン、脚が女性のウエストくらいある、中野なんとか(有名な選手)」
②新宿区在住カートさん
「中野浩一、橋本聖子、太ももパンパン」
③中野区在住女王様
「足太い、トレーニングきつそう、中野浩一」
④那須塩原市在住マイクさん
「大ケガ、脚がパンパン、個人競技」
⑤横浜市在住ジョノさん
「競輪選手には簡単にはなれない(周囲で数人、競輪選手を目指したが、全員落ちた)」
⑥流山市在住リチャードさん
(※リチャードは自転車歴5年のため、一般的な女子枠ではない)
「ギャンブルの中で一番、体力と心理戦がモノをいう。
エンジンは己の足」
以上のような結果となった。
なお、ポールにも同様の質問をしたところ、
「金の奪い合い」
と、ロクでもない答えが返ってきたので、聞かなかったことにする。
そこで、かなりの女子が認識している中野浩一という人物について、調べた。
――中野浩一、またの名を「ミスター競輪」。
過去に、自転車トラック競技の個人スプリントにおいて、世界選手権10連覇の偉業を達成。
競輪では、G1と呼ばれる大きなレースを12勝(うち、グランプリ1勝含む)している。
さらに、賞金王には6回も輝いている。
――余談だが、グランプリは正式名称を「KEIRINグランプリ」といい、バンクを4~5周走って1億円稼ぐことのできる、競輪界最高峰の賞金獲得レースだ。
そして、驚くべきことに、レジェンドエキシビジョンに登場した「紫×オレンジ」のユニフォームで、先頭をゆっくり走っていた電動自転車の人こそ、この中野浩一さんだったのだ。
現在、64歳の中野さん。
現役はとっくに引退されており、その後は、競輪界の向上と発展に寄与されている。
そんなレジェンド中のレジェンドであるミスター競輪が、後輩レジェンドたちを従えてのエキシビジョンだったことに、ちょっと感動を覚えた。
*
ポールが送ってきた動画を改めて見直す。
とりあえずミスター競輪を先頭に、
←(ミスター競輪) 白―橙 緑―黒―青 黄―赤
このような感じで、2人か3人で仲間になり、一本棒になって走っている。
何周かクルクルしたところで、鐘が鳴り始める。
(ジャンジャンジャン・・・)
お。
いきなり、一本棒だった選手たちが動き始めた。
とりあえず、ぐちゃぐちゃになったが、道中、3つのパートに分かれていた仲間同士は、その塊のまま動いている。
←黄―赤 緑―黒―青 白―橙
こうなった。
と思ったら、ものすごい勢いで、最後方から 白 が飛んできた。
しかも、バンクの高いところから、傾斜を使ってスピードに乗って下りてきた(山おろし)。
ヒューンと、あっという間に先頭に出る。
その結果、
緑―黒―青
←白―橙 黄―赤
こんな感じになった。
もはや、二車線だ。
最後の4コーナーを曲がると並び順は崩れ、全員が「われ先に!」とばかりに前のめり。
――敵6人による強襲はあれど、先頭の 白 は全力で逃げ切り、なんとか1着を守り抜いた!!!
結果、
1着・・・白
2着・・・橙
3着・・・黄
となった。
*
1着の白は、吉岡稔真(よしおか としまさ)さん。
世界最高峰の自動車レースといえば、F1。
そのF1を連想させる、超高速な走りでぶっちぎる吉岡さんは、デビュー当時から「F1先行」の異名を取った。
桁外れのトップスピードと持久力を武器とし、圧倒的に不利な展開からでも、驚異の脚力で巻き返してしまう、競輪界のスーパースター。
G1優勝13回、うちグランプリ2回優勝。
賞金王3回。
生涯獲得賞金は、なんと、16億8866万4299円。
2006年の競輪グランプリを最後に、引退を決めた吉岡さん。
その後は、
「お世話になった競輪界に恩返しがしたい」
と全国各地を回り、競輪の解説やイベントに積極的に参加されている。
昨日のレジェンドエキシビジョンへの参加も、こういった想いからだろう。
*
競輪素人の私は、レースの展開や選手のコメントの意味が分からず、競輪を楽しむには至らなかった(棒読み)。
しかしレース後、久々と思われる「上がっていない胴上げ」を見て、なんかいいなとほっこりした。
――当時、意地とプライドを賭け火花を散らしたライバルたち。
それがいま、和気藹々とエキシビジョンで共演できる。
これはファンにとっても実に嬉しいことだ。
選手それぞれの持ち味があり、それを見るのもまた、勝負とは別の「競輪の面白さ」といえる。
*
ちなみにメインレースの「第63回オールスター競輪」は、ファン投票3位、広島の松浦悠士が、熾烈な番手まくりを制してAS初制覇。
同時にグランプリ2020の出場権を手に入れた。
優勝候補と目され、昨日バンクレコードを叩き出した怪物・脇本雄太は、原田研太朗率いる中四国ラインに完璧に合わせられる形で競り負けた。
ゴール直前、脇本は全力でハンドルを投げるも、わずか3/4車身届かなかった。
(以上、スポーツ新聞風ゴール回顧でした)
――私はその昔、足の太さでガールズケイリンにスカウトされたことがある、ということは秘密にしておこう。
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