わたしのルーツはフランスにあると思っている。とはいえ、見た目や振る舞いはどう考えてもフランスではないし、「フランス」と入力すると、なぜか「腐乱す」が第一候補に出てくるあたり、フランスと対極的な立場にいるといっても過言ではない。
だが、食べ物の好みの一部がフランスであり、それは日本人には信じられない習慣だからこそ、やはりルーツはフランスなのではなかろうか、と思うのである。
その食べ物とは「バター」だ。わたしはバターが大好物で、キンキンに冷えたバターをフォークに突き刺して、そのままモグモグと食べるのが至福の時なのだ。
もちろんパンも好きだが、美味いバター(たとえばエシレなど)が出てきてしまったら、パンがおまけでバターがメインに早変わりしてしまう。そのため、フレンチの店へ行けば何度もバターをお代わりするため、「すみませーん」とわたしが声をかけると、なにも言わずに店員がバターを持ってくる始末。
そういえば先日、「あんバターサンド」なる邪道なメニューを見たわたしは、「カネはいくらでも払うから、あんこの代わりにバターを差し込んでくれないか?」というオーダーをしてみた。その結果、「バターバターサンド」の誕生に成功したのである。
(こうなったら、もはや「パンは要らないからバターだけ出してくれないか?」と頼んでみるべきだったか・・)
さらに、パリジャンといえば「カフェ・オ・レとクロワッサン」に象徴されるように、エスプレッソを愛する国がフランスである。そしてわたしは、毎日10杯はコーヒーを飲むカフェイン中毒者のため、バターとコーヒーというたった二つのアイテムだけでも、いかにフランスの血が流れているのかが分かるのだ。
そんなわたしに向かって、ある友人が宣戦布告をしてきた。
「私のルーツは、イギリスだと思うんだ」
はぁ、そうですか。見るからに可愛らしい大和撫子だが、いったいどこにイギリスの要素があるというのか。
「私、ティーが好きなの。しかも緑茶は飲まないのに紅茶は好きだから、きっと前世はイギリス人だったはず」
なるほど、これはわたしでいうところのバターとエスプレッソに当たるわけで、一概に否定はできない。そんな彼女がコンビニで、とあるペットボトルを指さした。
「これ美味しいから、ちょっと飲んでみて」
その名も、「午後の紅茶 季節のご褒美FRUITS TEA グレープ」というもので、濃い紫色のパッケージが高級感と巨峰のジューシーさを見事に表現している。葡萄も紫色も大好きなわたしは、騙されたと思って友人の誘いに乗ってみた。
コンビニを出るとすぐさまキャップを捻り、まずは一口含んで舌の上で転がしてみる。・・うん、巨峰の豊潤な香りが高貴な気分を感じさせてくれる。そして、風味や喉ごしはぶどうジュースに近いが、嚥下したあと舌に残るかすかな渋みが、間違いなく紅茶であることを物語る。これは、美味い——。
友人曰く「フルーツジュースも美味しいけど、飲み終えたあとの喉ごしが甘ったるいでしょ?でもフルーツティーは最後の渋みで〆られるから、すごくいい」とのこと。
言われてみるとその理屈は理解できる。まぁ、わたしは甘ったるいままでも一向に構わないが、たしかにこの紅茶は喉ごしがサッパリしていて好感が持てる。ティーってやつも、悪くないな・・。
*
翌日、わたしはコンビニで「紅茶花伝 さわやか果実のシトラスティー グレープフルーツ&レモン」を発見した。今まで、ドリンクコーナーといえばヨーグルト系か乳製品にしか興味はなかった。だが昨日の衝撃で、なんとなくティーを探すようになってしまったのだ。
しかもこのシトラスティーは、グレープフルーツとレモンの果肉入りというわけで、今すぐストローをぶっ刺してチューチュー吸い上げたい欲望を抑えて、わたしは無人レジへと走った。
そして支払いが済んだ瞬間、容器をシャカシャカ振るとすぐさまストローを突き刺し、鼻息荒くシトラスティーを吸い込んだ。
——う、うまい!!!
これこそ、グレープフルーツジュースといっても過言ではないほど、爽やかでジューシーでゴクゴク飲める。それはもうほんの10秒で飲み干してしまったわけで。
(やはり、ティーってやつは悪くない!)
まぁ、フランスもイギリスも同じヨーロッパの仲間だ。ちょっとはイギリスかぶれになるのも悪くはない。しばらくの間、コーヒーからティーへ路線変更といこうか。
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