人生初の過呼吸、救急車…と思ったが。

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2年前、人生初の「過呼吸」を経験した。

 

初めての経験なので、ソレが過呼吸かどうかすら、判断できなかった。

 

**

 

夜中の2時過ぎ。

寝ていた私は、苦しくて目が覚めた。

こみ上げてくる極度の緊張感と、堪えられない恐怖みたいなものが、私を襲った。

 

(なんだこれは、悪夢でも見たのか?)

 

とりあえず、電気をつけて、立ち上がってみた。が、とにかく息が苦しい、呼吸がしづらい。

 

(部屋の酸素が薄いのか?)

 

ベランダに出る。

夜景が綺麗だ。

いや、今はそこじゃない。

 

酸素は潤沢にありそうだ。しかし、全然楽にならない。それどころか、死ぬかもしれない、という不安が脳裏を過ぎった。

 

(そもそもココ8階だし、飛び降りたらアスファルトだから、まず死ぬだろうな)

 

下を見下ろすと、木とか駐輪場とか、そういった障害物が、残念ながら見当たらない。そんな、死を覚悟しなければならないほどの恐怖を抱きながら、とりあえず、携帯で

 

「息が苦しい 対処法」

 

みたいな検索をしてみた。

 

色々出てきた。

 

まず、呼吸は、

「大きく吸う前に、しっかり吐ききること」

らしい。

吐ききると、吸わざるをえないので、吸う。人が死ぬとき、呼吸は「呼」で終わるらしい。つまり、吸えるということは、生きてる証だ。

 

「口からながーく息を吐いて、ぺったんこになったお腹をフッとゆるめるように、鼻から瞬間的に、吸う」

 

なるほど。

 

この方法を何度か繰り返した。こちらは、死活問題なので、真剣に、サイトに書かれたとおりに実践した。

 

(お腹ぺったんこになってるかな?フッて戻すとき、もっと速い方がいいのかな?ゆっくり吐く、って、やりすぎて酸欠なりそうなんだけど…)

 

などなど、そこに記載されている腹式呼吸を、指示通りにやれているかどうかが気になって、むしろ、呼吸が苦しかったことを忘れていた。

 

(もしや、気を紛らわせる作戦か)

 

とりあえず、普通になったので室内へ戻る。

ネットによると、仰向けは良くないらしいので、ひとまずソファに座り、気分を明るくするために、明日の天気を調べてみた。

 

(明日は、曇り時々晴れか…)

 

とくに、明るい気分にはならなかったが、恐怖心が戻ってこないように、少しでも他のことに意識を向けることが大事だと考えた。

 

世界中の天気予報を調べて尽くし、もうそろそろ寝ようかな、と横になった途端、また、なんとも言えない苦しさがこみ上げてきた。

 

(第二波がキタ)

 

これはもう、救急車だと思った。

まずは、身なりだ。この部屋着ではマズい。かと言って着替えたら、不自然だ。

 

以前、消防士の友人が言っていた。

「ドアの鍵、壊してまで駆けつけたらさ、その女性、バッチリメイクで寝てんだよね。服装もキチンとして。

あー、救急車呼ぶほど緊急事態のわりには、メイクとかできるのね、って、なんか微妙な空気が流れたわー。

女性って、そういうとこあるよねー」

 

この教訓は守らねばなるまい。

緊急事態であることに変わりはないが、かと言って、あまりにラフすぎても印象が悪いし、かといって、ちゃんとしすぎてたら、緊急事態じゃねーじゃん、と思われるし、その中間を狙うべきだ。

 

…あ、ゴミ捨ててない。玄関先にゴミをまとめて置いてある。救急隊が来た時、あのゴミは邪魔になるし、かつ、コイツはゴミも捨てられないんか、と思われて、署内で噂されるだろう。

 

キッチンも片付いていない。玄関から、キッチンを通ってここまで来るわけで、視界にキッチンはどうしても入ってしまう。そうなると、夕食の皿やコップを明日の朝洗おうとしていたことがバレる。すぐに片付けないオンナなんだな、と思われる。

 

・・・ダメだ。

どうしても、救急車は呼べない。もう一度、自力で治そう。

 

 

再度、症状を入力して、ネット検索した。

 

これはどうやら「過呼吸」らしい。過呼吸は、酸素が足りないのではなく、二酸化炭素が足りないために起きる現象らしい。

 

(そういえば昔、部活で過呼吸になった子が、ビニール袋を口に当てられて、それが膨らんだりペチャンコになったりするのが、なんとなく、フグとかフクロウみたいだな、と思ったことがある)

 

ビニール袋に自分の息を吐き、その二酸化炭素を吸うわけだ。自家発電、ならぬ、自己CO2製生だ。

 

だが、

私にはその勇気がなかった。

ほぼ、過呼吸であることに違いはない。

 

が、

仮にビニール袋に息を吐き、それを吸っても改善しなかった場合、私はどうなるのだろう。それこそ、「死」という文字が、再び浮かび上がってきた。

 

 

できない。

もう、精神力で乗り切るしか、方法が見つからない。

 

通常の呼吸だと、およそ2分で体内に二酸化炭素が行き渡るらしい。何らかの影響で、呼吸自体が浅くなり、トータルの呼吸量が減るため、そもそも僅かしか入ってこない二酸化炭素が、さらに減ってしまった結果、「息苦しい」という症状が現れるらしい。つまり、理論上、通常の呼吸を2分続ければ、過呼吸は治まる。

 

と言っても私の場合、鏡で自分を観察しても、一見、普段と何ら変わりはない。普通の顔で、普通に呼吸し、普通に鏡を見ている。

つまり、側から見たら「普通」でしかない。

 

 

ーー試練

 

 

そうだ、これはきっと、試されているんだ。

過呼吸と見せかけて、いかに平然としていられるか。そして、これがもし試合中だったらどうするのだ?中断などできない。ビニール袋でスーハーすることなど、できない。

 

(平静を装うんだ)

 

過呼吸がなんだ、静かに呼吸を続ければ、およそ2分で元どおりじゃないか。

2分後に死ぬなら、焦る。

しかし、逆に2分後に生き返るわけで。

 

 

(これは、精神の鍛錬だ)

 

 

内心、鬼の形相だが、顔は笑顔をキープした。鏡の前で延々と。苦しい顔をしてはいけない、平然としていなければ。他人に気づかれてはお終いだ。その隙にやられるに違いない。

 

 

ーー気がつくと朝だった。いつのまにか、床で寝ていた。

 

 

こうして私は、過呼吸を乗り越える術を身につけた。

 

**

 

ちなみに翌日、呼吸器科で、肺活量や心肺機能などの検査をした(念のためね)。

ドクターが衝撃の事実を告げた。

 

「22歳、男性(の数値)…以上!」

 

 

・・・検査結果によると、私の数値は、22歳男性と同レベルだった。つまり、心肺機能や呼吸器の問題ではなく、確実に、過呼吸だったようだ。

 

過呼吸はメンタルから来る、と言われる。つまり、過呼吸になったら、逆に「メンタルで元に戻す」が有効だと、私は気付いた、という話。

 

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5件のコメント

いやネットで調べての自己診断はよろしくない、救急車を呼ぼう。または#119でどうしたらよいか専門家の指示を仰げ。
その前に11の譲渡書類を作成しておいてくれ。

やっぱ対処法知っとかなきゃ危ないですね!
いつくるかわかんないですし
救急車呼ぶときの身なり、お風呂ですっぽんぽんでシャンプーあわあわのとき地震とか火事になったらどーしよーって良く考えるから、わかります(笑)

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