私は、社労士。

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「職業」を聞かれるのが嫌いだ。

理由は、そのイメージで話が進むから。

 

何かにカテゴライズされることがとにかくキライだ。

 

 

そんな私のメインの仕事は、社労士。

サブの仕事は、会社(アスリートのキャリアサポート)の社長。

そして、仕事というかお小遣いをもらってるのが、ライター。

 

 

私の中で仕事はドライなもの。

人と戯れることなく淡々とこなすもの。

イメージとしては、「終わらせるために進めるもの」という感じ。

 

その点、ライター業は異質。

とてもウェットで生きている感がある。

だからと言って、好きとか得意なわけではない。

ただ、私自身に影響を与えるのはこの仕事だ。

 

 

**

 

 

ある日、「職業社労士」の筆者は、ハローワークを訪れた。

筆者の自宅から割と近いこの場所は、言ってみれば「庭」みたいなもの。

 

その日の筆者(社労士)のファッションは、以下のとおり。

 

(上から順に)

・金髪

・クロムハーツのネックレス(ゴツイやつ)

・タンクトップ(DIESEL)

(腕ムキムキ)

・ダメージ加工のデニム(G-STAR)

・サンダル(ビルケンシュトック)

 

 

完璧な路上ファッションだ。

これぞまさに戦闘態勢。

 

そしてその日は、助成金のちょっとした確認をしたかっただけなので、手ぶらで訪れた。

 

いまどき財布など不要だ。

ケータイ一つで電車もバスもタクシーも乗れる。コンビニもイケる。

 

つまりケータイ一つで、本当に手ぶらで、ハローワークを訪れた。

 

 

助成金と外国人関係の窓口のある階で、順番待ちのチケットを引いて待っていた。

しかし、待てど暮らせど順番が来ない。時期が時期(コロナ)だけに、助成金窓口は大繁盛。「4時間半待ち」と、フザケタ貼り紙がされていた。

 

(仕方ない、一つ聞きたいだけだから、知り合いの職員でも探すか)

 

筆者は社労士である。

社労士たるもの、ハローワークに知り合いの職員くらいいるものだ。

今こそ、社労士としての威厳を誇示しようではないか。

 

キョロキョロしながら、カウンター内の職員らの顔を見渡した。

 

すると、

 

「お客さん、ここから先は入らないで」

 

ガードマンにつまみ出された。

 

(チッ)

 

往生際の悪い筆者は、つまみ出されながらも職員の顔を見回した。

すると、最後に一人の女性職員と目が合った。

 

知らない顔だが、彼女は筆者のほうへ向かってくる。

 

(ナイス!援軍確保!)

 

部屋の外までつまみ出されたとき、その女性職員が追いついた。

彼女は笑顔でこう言った。

 

「ごめんなさいね、わかりにくい案内表示で。

お客さまは多分、1つ下の階ですね。

ご案内しますね」

 

(え?そうなの?

社労士専用窓口とかあったんだ・・・)

 

親切な彼女は、下の階へつながる階段まで案内してくれた。

 

「この階段を下りて、右に曲がると窓口がありますよ」

 

「そうなんだ、ありがとう」

 

筆者は優越感に浸りながら、何時間も待たされ、疲労と絶望でいっぱいの、哀れな小市民を脇目に、颯爽と階段を下った。

 

 

(えっと、下りたら右・・・と)

 

 

ものすごい数の人間がいる。

年齢も、老若男女と呼ぶに相応しいラインナップ。

そして、目の前に広がる、壮大な窓口。

 

窓口の案内表示には、デカデカと

 

「失業の認定」

 

 

・・・そうか。

筆者は「失業者」だと思われたのだ。

まさか、ハローワークの職員ですら「先生!」と呼ぶ立派な社労士だとも知らず、外見で判断したところ、コイツは立派な失業者に違いない、ということか。

 

 

「本日認定日ですか?」

 

忙しいのにまた新たな失業者来たよ、と言わんばかりの乾いた笑顔で、職員が声をかけてきた。

 

筆者は、無視をした。

 

もしこれが、スーツやワンピースで、革のバッグにヒール、メガネをかけて金のバッジでも付けていれば、間違いなく、

 

「先生!先生は上の階でございます!」

 

と言われるんだろう。

 

それが、よりによって失業者

 

小さくため息をつき、なんとなく周りを見渡してみた。

みんな、死んだ魚の目をしてる(失礼な)。

耳にペンを差してるオッサンもいる(競輪場か)。

無活気が集まりすぎて、逆に活気づいてる、変な集団だ。

 

そしてふと思った。

 

上の階よりこっちの階ほうが、なんていうか、自然だ。

自然体でいられる。

 

 

筆者は、「先生」などと呼ばれる社労士にはなりたくない。

失業者と間違われるほうが、性に合ってる。

思い返せば、過去にも幾度となく似たような経験をしている。

 

 

「ここは社労士の窓口だから、あっちへ行きなさい(いや、私社労士だし)」

 

「社労士の浦辺先生ー、浦辺先生ー(目の前にいますが)」

 

「(ZOOMで)あとは、社労士さんだけですね(いや、既にいる)」

 

「書類の書き方、わかるかな?見本あげようか?(何十回も書いてるわい)

 

 

**

 

以上、とりあえず仕事においては見た目は大事だぞ、という実体験から来る教訓でした。

 

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