球か、暖か。

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とうとう冬本番を迎えた・・ということだろうか。室内にいても足元が冷えるようになってきた。今年はスペシャルアイテムである「ヤクの靴下」を入手したことで、つま先の保温は完璧なのだが、スウェットパンツの部分が寒いのだ。

本来ならばズボンを重ね履きするなど、衣服の枚数を増やせばいいのだが、これだと布団に入るときにいちいち脱がなければならない。とにかく面倒くさがりなわたしは、こういう動作すらも面倒なのだ。

 

というわけで、壁にのめり込んだ役立たずのエアコン以外の、足元を暖める暖房器具を使用するしかないため、カーボンヒーターのスイッチを入れたのである。

——ところが、問題はその数秒後に勃発した。

 

わたしは数日前に、今のところ史上最高の椅子となるバランスボールを購入した。腰痛持ちのわたしにとって、尻と接するアイテムは非常に重要となる。過去にもさまざまなクッションやマットレスなどを試してきたが、「完璧だ!」と唸らされるほどの逸品に出会ったことはない。

そんなシビアでナーバスなわたしが、「こ、これは!」と目を見開くほどの驚きを感じた椅子こそが、直径65センチのバランスボールだったのだ。

なにがイイって、バランスボールは不安定ゆえに、尻への圧力が一定にならず常にフラフラ揺れている。おまけに、ボールの上に正座をすれば、若干なりとも寒さをしのぐことができるのである。

何時間座っていても尻や腰への違和感および痛みを感じないこの椅子は、今のところ歴代一位の満足度を誇るといっても過言ではない。そんな限りなく完璧に近いバランスボール椅子が、まさかの元凶となったのだ。

 

わが家のカーボンヒーターは縦長タイプのため、足元から腹あたりまでをじんわり暖めてくれる。風も出ないので空気が乾燥することもなく、近づけばより暖かさを感じることができるスグレモノだ。

そして、目の前にはデスクとパソコンが陣取っているため、カーボンヒーターは横か後ろに置くこととなる。こうやって仕事中に暖を取ってきたわけだ。

 

ところが、いつもと同じようにカーボンヒーターの電源を付けた途端、わたしの体よりもカーボンヒーターの近くに存在する奴がいた。そう、バランスボールである。

ボールは球体だから、足を揃えて座っていればわたしの横幅よりも外へはみ出るに決まっている。「ならば」と足を開いて座ってみても、球体とカーボンヒーターとの距離はさほど離れていないので、球の表面がみるみる熱せられていくではないか。

(このボール、耐熱性はどうなんだろう。でもゴムか樹脂でできているから、熱には強くないだろうな・・・)

当たり前だが、バランスボールを暖めて"いいこと"などないだろう。ましてや素材の劣化を招く可能性もあるわけで、なるべくならばヒーターの近くで使わないほうがベター。ということは、足元が冷たいままわたしは座り続けなければならないのか——。

 

カーボンヒーターを横に置こうが後ろに置こうが、なんなら前に置こうが、一番最初に暖まるのは「球」である。どうしたって球より先にわたしを暖めることなど不可能だ。かといって、せっかく見つけたお気に入りの椅子を手放すことはできない。優先順位的にも椅子のほうが上である。

(となると、このカーボンヒーターは今後も使い道がない・・ということか?)

 

コンクリートで囲まれたわが家はエアコン一つ、いや、二つでは暖まらない。正確には「上空は」暖まっている。立って手を伸ばせば、そこは暖かな空気で溢れているのだから。

しかし椅子に座ったり床に寝転んだりすれば、一気に極寒地獄へと叩き落とされるのである。たかが一メートルの差でも、気温というのはずいぶん違いが出るものだということを、わたしはこの家に引っ越してから知ることとなった。

 

・・そんな話はさておき、この冷たい手足を温めるための"暖"と、デリケートな尻と腰をケアするための"球"と、どちらをとるのか究極の選択を迫られているのである。

とはいえ、球を手放す気などさらさらないわけで、答えは必然的にカーボンヒーターとなる。だがしかし「下半身の冷えをどうするのか問題」とともに、カーボンヒーターの出番が金輪際なくなる・・というのも受け入れがたい現実だ。

いったいどうすれば——。

 

 

こうして悶々としながら、真冬の深夜を震えて過ごすのであった。

 

サムネイル by 希鳳

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