ダブルペイン

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わたしは今ややこしいことになっている。

先週の金曜日、背中から腰にかけて筋膜炎を発症したことから、土・日・月と静かにおとなしく過ごしていたわたし。そのせいか、ガチガチに固まっていた背面がなんとなく和らいできた感じがするのだ。

さすがに「治った」とはいわないが、それでも歩行速度は老婆から一般人にまで格上げされたわけで、気分も体も悪くない。

そんな脅威の回復をみせたわたしだが、やはり腰の痛みはしつこく残っていた。人間というのは、体のどこかに痛みがあると何をするにも億劫になる。

「トイレに行こうかな。あ、でも腰が痛いからやめておこう・・」

「仕事しようかな。あ、でも腰が痛いからやめておこう・・」

このように、「やりたいこと」や「やらなければならないこと」を我慢しなければならないストレスは、自ずとQOLを低下させるのである。

それにしても、ガチガチだった筋肉はかなり緩んできた。その証拠に、体育座りができるようになったのだから。なのにこの痛みはなんだ。寝ても覚めても腰にまとわりつく、重く激しい鈍痛は——。

とその時、わたしはあることに気が付いた。もしやこの腰の痛みは、筋膜炎ではなく別の痛みなのではなかろうか。では、なんの痛みかというと・・・そう、生理痛だ。

オンナには月に一度、生理という厄介なイベントがある。とはいえ、厄介なのは表面的なことだけで、これがなければ生命誕生も子孫繁栄もあり得ないことから、人類にとって最も重要なマンスリーイベントといえる。

そして運悪く、わたしは筋膜炎と生理を同時に発症したため、この紛らわしい腰痛がどちらが原因なのか分からぬまま、苦痛に悶えていたのだ。

「だったら鎮痛剤を飲めばいい」

確かにその通り。しかし我が家には、痛みを和らげるために薬のストックがない。なんせ怪我や病気で医療機関を受診しても、なぜかカッコつけたがるわたしは鎮痛剤を処方してもらわないからだ。

「先生、怪我をしてるんだから痛いのは当たり前です。わたしは、ありのままを受け入れて、痛みに誠実に生きていきたいんです」

などと、ドラマの主人公のような歯の浮くセリフを吐いて、痛みに顔を歪めながらクリニックを後にするわたし。その都度、「やっぱり、痛み止めをもらいに戻ろうかな・・」と迷うのだが、あんなカッコつけたことを言ってしまった手前、どの面下げて処方箋を依頼すればいいというのか。

——ダメだ、できない。

こうしてわたしは、いつだって鎮痛剤など使わずに怪我や病気から回復してきたのである。

だが今みたいなときに、「鎮痛剤の一欠けらでもあれば・・」と悔しい思いをすることとなる。そう、患者はカッコつける必要などない。痛いものは痛いのだから、素直に科学の力にすがるべきなのだ。

とはいえ、どうしようもないのに無駄な感情に浸るほうが無駄である。ならばせめて、この痛みがどちらに由来するものなのか探り当てようじゃないか。

背面の筋肉を動かすと、ビリリと痛みが走る。この痛みと腰部の鈍痛は異なる。だが、体を丸めたときに感じる鈍い痛みは、生理痛のそれと似ている。これを見分けるには、いったいどうすればいいのか——。

いや、むしろどっちの痛みというか、腰の痛みでなければいいのだ。生理痛とは長い付き合いであり、もはや「痛み」という類のものではない。どちらかというと、長時間正座をしたときの足のしびれのようなもの。そうなって当たり前なのだから、気にすることはないのである。

＊

というわけで、どうやっても分からないことに時間を割くほど、わたしは暇ではない。

そして一つだけ、忘れてはならないことがある。それは、痛みというのは日々軽減するということだ。つまり、明日になればこの鈍痛は減っている。

・・さてと、寝ることにしよう。

Illustrated by 希鳳

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