洗濯物が湿る頃

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ここ最近、洗濯物の乾きが明らかに悪くなっている。それと呼応するかのように、我が家に設置された2台の除湿器の、水の溜まり具合が異常に早くなっている。・・そう、恐るべき湿気地獄が近づいてきたのだ。

 

夏暑く冬寒いことで有名な我が家は、コンクリートとガラスでできた拷問部屋と呼ばれている。だがここ最近は、暑くも寒くもないちょうどいい季節が到来したため、エアコンの世話になることもなかった。そのため、電気代の無駄遣いをすることなく、節約生活を送ることができて満足していたのである。

今ぐらいの気候ならば、科学の力を使わずとも衣服の着脱で体温調節が可能。さらに、窓の開け閉めによって体感温度の低下も図れるため、こんなにも快適かつ節電が実現する日々に感謝しながら過ごしていたわけだ。

 

そして、気温の高低もさることながら、同じくらいに、いや、それ以上に気を付けているのが「湿度」である。我が家にはわたし以上に湿気に厳しい奴がいる。・・そう、ピアノだ。奴は寡黙で堅物だが、湿気でカビようものなら高額な手術代が発生する。よって、それだけは避けるべく365日除湿器をフル稼働させて湿気を排除しているのだ。

そして夏の間は、長ければ一週間放置しても除湿器のタンクは満タンにならなかった。おまけに洗濯物が乾くのにも、さほど時間はかからなかった。たとえば夜中に洗濯機を回しても、下から除湿器でガンガン仰げば翌朝にはカラッと仕上がるほどに。

それなのにここ最近は、洗濯物は午前中には乾かない。それどころか、昼を過ぎてもやや湿っている。夕方近くになってようやく、取り込めるくらいに乾くという体たらく。

 

おまけに朝、目が覚めると除湿器が止まっていることが増えた。いったい何分、いや、何時間止まっていたのか——。このタイムラグのせいで、洗濯物が生乾きの刑に処されたのだから許せない。そして再び電源を入れるも、除湿器はうんともすんとも言わない。・・つまり、タンクが満水ということだ。

これこそがわたしが最も恐れる事態である。洗濯物の真下で除湿器を回した場合、ほぼ毎日タンクの水を捨てなければ除湿器は止まる。無論、毎日排水すればいいだけのことだが、如何せんわたしは面倒くさがりの頂点にいるわけで、必要に迫られなければ排水などしたくはない。そんなことだからダメなのだと分かってはいるが、それでもなぜか失念してしまうのだ。

 

(あぁ、また半乾きか・・・)

とくにズボンの股やシャツの脇など、布が厚かったり重なったりしている部分は乾きが遅い。厚手のタオルも、ハンガーと接する部分が湿っている。おまけに靴下も、かかととつま先がなんとなくスッキリしない——。

あぁ、このイライラはなんとも度し難い。時にはドライヤーで熱を加えることもあり、こんな無駄で古典的な方法を用いなければならないとは、この季節を恨むところだ。

 

いっそのこと、もう少し気温が下がってくれれば否が応でもエアコンのスイッチを入れることとなる。そうなれば、部屋の温度は上がらずとも空気は乾燥するため、洗濯物も乾きやすくなるし除湿器の排水頻度も多少は抑えられる。

どうせならもう5度くらい、いや、10度くらい下がってくれれば、ちょうどいい湿度管理ができるのだが——。

 

結局、人間にとって心地いい気候が洗濯物にとっても最適な季節とは限らない・・ということだ。

こうなると贅沢な話ではあるが、腕や足が痒くなるほどカッサカサに乾燥する、アメリカ西海岸の気候が懐かしい。どれほど保湿クリームを塗りたくろうが、気が付くと白い粉を吹くあのドライな空気が。

除湿器などなくとも、部屋干しすること4時間で分厚い道着が乾くという奇跡。さらに、額から流れ落ちる汗はアゴに到達することなく蒸発し、誤ってアスファルトに転がり落ちたミミズは数分後には干からびて絶命する、あの驚異の乾燥地獄が愛おしい!!

 

・・などという現(うつつ)を抜かしながら、除湿器のタンクを外すのであった。

 

サムネイル by 希鳳

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