先日、競艇(ボートレース)以外の目的で訪れることのない土地・平和島でカレーの店に入った。シリー・ガネーシャという名のその店は、店員全員がインド人と思われる、異国情緒あふれる店だった。
わたしは、「三度の飯がカレー」という状況が一週間続いてもまったく問題ないほどのカレー好きで有名。種類についても、インド風のスパイスたっぷりなスープカレーも好きだが、日本風の具材ゴロゴロ家庭の味カレーも捨てがたいわけで、カレーであればどんな種類でも満足できるほど、カレーを愛して止まないのである。
そんなわけで、インドカレー店にありがちな黄色や赤の派手なカラーリングの入り口をくぐり、店内へと足を踏み入れた。時間的にランチタイムの終了間際だったことからも、客がいない代わりに店員たちがテーブルに座り、スマホをいじって時間をつぶしている。しかし、突如われわれが現れたことで、やや困惑した表情を浮かべながらも、笑顔で招き入れてくれた。
さっそく、テーブルに置かれたメニューに目を通すと、インドカレー店にありがちな「セット」がメインとなるオーソドックスなラインナップだった。
この日のわたしは、2種類のカレーとナンに加えて小さなライスとデザート、そしてドリンクが付いているCセットを選んだ。さらに、ナンをチーズハニーナンに変更することで、ナン自体がデザートとしても満喫できる仕様に変更した。
ちなみに、この店の特筆すべき点は「ナンの種類の多さ」だろう。チーズナンやガーリックナンはどの店でも見かけるが、ここにはココナッツやゴマのほかに、「アル」と呼ばれるジャガイモのナン、そしてわたしが選んだ「チーズにはちみつを練り込んだスイーツナン」が用意されていた。
ナンが甘ければパンケーキの親戚である。パンケーキマニアのわたしからすれば、ナンというのは甘ければ甘いほど美味しい食べ物になる。おまけにインドカレーはスープのようなものだから、それ単体で楽しむことができる。よって、ナンはナン単体で味わうことで、小麦粉やバターの風味、そして窯の内側に貼り付けて焼き上げる、独特の歯ごたえを味わうことができるのだ。
——待つこと10分。わたしのスペシャルCセットが到着した。チーズハニーナンはその構造上、一般的なベロンと長いナンとは異なり、まん丸の生地を四分割された状態でトレーに積まれていた。
まずは「本日のカレー」と「ほうれん草チキンカレー」を一口ずつ味わい、その味が間違いないことを確認すると、大きくすくって口へと流し込んだ。なお、Cセットには小さなライスが付いている。TKG(卵かけごはん)には不向きだが、カレーとの相性抜群であるインディカ米の一種・バスマティライスが添えられているのだ。
このパラパラ米をスプーンですくい、カレーの海にドボンと漬けるとアラ不思議!カレー自体の風味を邪魔することなく、咀嚼の強度をアップさせることで、しっかりとカレーを味わうことができるのだ。
こうして、あっという間にバスマティライスは消え去った。そして手つかずのチーズハニーナンとわずかに残るカレーとを見比べながら、わたしはナンの一片をつまみ上げると半分に折り曲げて齧りついた。
(・・う、うまい!!!)
ナンの端から中央まで、余すところなくチーズが張り巡らされた上に、贅沢すぎるほどたっぷりと塗りたくられたハチミツ。これはまぎれもなくスイーツだ。チーズハニーナンだけで楽しめるほど、十分な味わいとボリュームそして満足が詰まっている。
念のため、カレーの残り汁にチーズハニーナンをちょんちょんしてみるが、やはりカレーとチーズハニーナンという二種類の食べ物を感じるだけだった。ここへきて改めて、バスマティライスの存在感が光る結果となり、もう少し慎重に配分バランスを考えるべきだったと後悔するのであった。
とどのつまりは、カレーというのはライスとの相性が抜群であり、ナンはナンとして味わうことで、さらなる贅沢を堪能することができるのだ。そしてナンは、カレーの付け合わせという立場ではなく、それ単体でスイーツとなりうるポテンシャルを持ち合わせていることを、忘れてはならない。
パンケーキやクレープ、ドルチェピッツアに続く「チーズハニーナン」というスイーツの存在は、わたしに「新たなインドカレーの魅力を教えてくれた」といっても過言ではないだろう。
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