巷のスーパーでは、赤いイチゴと黄色の柑橘類がカラフルに売り場を彩っている。だがイチゴは高価な果物であり、腹を満たせるほど買い漁ることはできない。
時たま、サイズがあべこべなイチゴが安価で売られているが、こちらからすればどれほど不揃いだろうが不格好だろうがまったく問題ない。むしろ、そんなくだらないことで値段が下がるのならば、わたしは率先して見た目の悪い嫌われ者をカゴへと放り込むだろう。
とはいえ、わが家の近所のスーパーは"クイーンズ伊勢丹"という高級スーパーゆえに、わたしが願うようなお手頃価格のイチゴが並ぶことはない。
そのため、真っ赤なイチゴを恨めしそうに横目で見ながら、その裏側にどっさりと積まれているデコポンやポンカン、せとかといった柑橘類で喉と胃袋を満たすしかないのだ。
(今日もイチゴは高いな・・・)
それでもイチゴ好きのわたしは、もっとも安いイチゴのパックを手に取るとカゴへとおさめた。——あぁ、イチゴを4パックほど一気食いしたいなぁ。
しかたなく、いつも通りデコポンの袋詰めに手を伸ばそうとしたところ、右側の棚にキウイのパックが置かれていることに気がついた。
だからといってそれが特に珍しいわけでもなく、普段はイチゴばかりに気を取られているせいで、ここにキウイが静かに並んでいることに気がつかなかっただけだろう。
だが今日は、なんとなくイチゴとミカン以外の果物も食べたい気分だった。それでいて、刃物を使わずにそのままかぶりつけるラクな果物があれば——。
(ハッ!キウイはそのまま食えるんだった)
・・そう。わたしはキウイを食べるのに、ナイフを使わずとも皮ごと食べられる「とある方法」を知っているのだ。
そもそも"果物は皮ごと食べる主義"のため、バナナやパイナップル以外は可能な限り"皮ごと丸のみ"を敢行している。だがキウイフルーツに関しては、表面にびっしりと生えそろった細い毛を恐れて、昨年末までは半分に割ってスプーンでくり抜いて食べていた。
そんなわたしに朗報が入った。それは「キウイの表面をクシャクシャにしたアルミホイルでこすり、細かい毛を落としてから丸かじりする」という方法だ。これならばナイフもピーラーも不要、つまり調理器具などなくてもキウイを満喫できるわけで、まさにわたしのための食べ方といえる。
さらに、この食べ方ならばキウイの95%が可食部となり、生ごみも果硬部(ヘタの部分)のみで済むわけで、非常にエコである。
・・というわけで、神奈川県産のSweet Verde(スウィートヴェルデ)という品種のキウイフルーツを購入した。国産であることに加えてこちらは「農薬や除草剤を使っていない」とのこと。よって、皮ごと食べるにはうってつけの商品である。
さらに、「食べ頃をお届けするために、農園で丁寧に追熟をしました」と書かれてある。——おぉ、なんと親切な生産者だろうか。
帰宅するとすぐに、アルミホイルを丸めてクシャクシャにすると、簡易ヤスリを完成させた。そして水道でキウイを洗いながら、アルミホイルヤスリでゴシゴシと擦った。
スウィートヴェルデという品種のせいなのか、それともたまたまなのかは分からないが、力強くゴシゴシしても皮が破れることはなかった。それどころか、表面の柔毛がみるみる取れて、あっというまにツルツルのジャガイモのような姿に変身したではないか。
そんな"色味の悪い小ぶりなジャガイモ"にかじりつく。——あ、甘い!!
果実が硬めだったので、てっきり酸味が強いものだと思い込んでいた。ところが、そんなネガティブな予想を覆すかのように、キウイはとても甘くて美味だった。さらに歯ごたえもしっかりしているため、十分な食べ応えに満足できる。
(これほど簡単に口にできるとは・・キウイ恐るべし!)
*
言うまでもなく、あっという間に一パック(5個)を平らげたわたしは思った。
「イチゴ一パックとデコポン一袋、そして、キウイ一パックがほぼ同じ金額だとすれば、満腹度と生ごみの少なさからもキウイを選ぶべきだろう」
キウイの表面をアルミホイルでこすることで、皮ごと食べられるという事実を知ってからは、キウイの評価がひそかに爆上がりした。その理由として、「皮ごと食べられる」という部分が大きいと思われる。
とどのつまりは、魚も果物も「皮」が美味いのである。
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