cookbad(クックバッド)

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私は、電子レンジでいけるのではないかと踏んでいた。

「フライパンは使わなくてもいい」と言ってもらえると信じていた。

ゆえに、失敗するなどとは夢にも思わなかった。

 

 

スーパーの精肉コーナーで、「自家製手造り生ハンバーグ」なるものが売られていた。呆れるほどのウーバーイーツ利用率を反省し、たまには自炊してみようと手を伸ばす。

ーーしかしハンバーグ2個で350円とは、日ごろから食べているハンバーグはいったい何でできているんだ。

 

ハンバーグにプラスして白米をカゴに入れ、レジへと向かう。合計は505円。これをどこかのレストランで食べようものなら、プラス1,000円は払わされるだろうに。驚くべき自炊の安さよ。

 

帰宅するや否や、友人にハンバーグの画像を送る。

「どうやればいい?レンジ?フライパン?」

空腹の私は「こう言ってもらいたい」方法を先に伝えた。つまり、レンジでチンすればいいよ、と言ってもらいたいのだ。

「フライパンで焼こう」

・・・チッ

 

我が家には、食用油が存在しない。キッチンをガサゴソするとオリーブオイルを発見する。だが賞味期限が1年ちょっと過ぎており、なんとなくやめた方がいいだろう。

友人に「油がないのでダイレクトにフライパンへ乗せる」と告げると、

「ほんとは油をつかいたいけど、そのまま焼くしかないね」

渋々、了承を得る。

 

我が家には、肉をフライパンへ乗せる器具がトングしか存在しない。やむを得ずトングでそっとハンバーグをつまみ、フライパンへと移動させる。

ジューーーー

思わず想像する。これがもし自分ならば相当熱いのではなかろうか。油も引かずにダイレクトに鉄板へ放り込まれたら、それはもうとんでもないことに。

 

その時ふと気が付いた、火力ってどうするんだろう?友人に尋ねる。

「中火で焼き目をつけて肉汁を閉じ込めて、フタをして火を弱めて蒸し焼きにするの」

素朴な疑問が浮かぶ。

(なぜ肉汁を閉じ込めなければならないんだ?)

ネットで検索すると、肉汁はアミノ酸や脂肪などの「うま味成分」と呼ばれるものらしい。ハンバーグにナイフを入れるとジュワッっとあふれ出す、アレだ。さらに余計なことを思い出す。

 

過去に顧問先のフレンチの社長が言っていた。

「食品偽装とか言うけど、ジュワッとあふれ出る肉汁を求めてるのは、お客さんのほうだからね」

 

某レストランがハンバーグに後から肉汁を仕込んでいた、と報道されたときの話だ。そのことについて「食品偽装」とマスコミが叩いたが、飲食店経営者サイドからすると、肉の脂を注入したことだけをもって「偽装」と言われるのは心外だ、という反論。

そもそも「肉汁があふれ出るから美味い」は、単に視覚に訴えかけたプロモーション。肉汁が出ないからまずいわけでもなく、調理方法の違いなだけ。

それをメディアのプロモーション戦略にはまり、「ジュワッとあふれ出す肉汁こそが美味さの象徴」と思い込んだ顧客が、肉汁の出ないハンバーグにクレームをつける始末。

 

フレンチの社長は、

「本当のうま味も知らずに、肉汁が出ればいいと刷り込んだのはマスコミの責任」

と冷たく突き放した。

 

まぁ、いまの私にはどうでもいいことだ。肉汁以前に、目の前にあるハンバーグはまだ赤色でほぼ生肉なわけで。

ところでフライパンに接する面の肉は、先ほどから確実に熱せられている。

「これ、いつひっくり返すの?」

焼かれているハンバーグの画像と共に、友人へ質問する。

「焦げ目がついてきたらひっくり返して」

 

(焦げ目がついてるかどうかなんて、どうしたらわかるんだろう・・)

 

ハッとした私は、慌ててトングでハンバーグをつまみ上げる。すると、やはり!というか、なんと!というか、真っ黒。

「焦がすな!!!!火が強い!!!!」

比較的温厚な友人が激怒。その後は頻繁に「焦がしてない?」と確認してくる。

 

表面が黒焦げのハンバーグを見つめながら、ふと、中身はどうなっているのか気になった。トングで割り開けてみる。

ーー真っ赤だ

この分厚いハンバーグ、最初の火力が強すぎたせいで表面が焦げ、中まで火が通っていない。そんな状況を伝えると、

「なんで割るのよ!!!」

またもやキレられる。たしかにトングで割ったときに大量の肉汁、もとい、うま味成分があふれ出た。それがもったいないのだと友人はキレる。

だが私は、この肉の塊が食べられればいいだけなので、うま味成分などはあまり気にしない。

 

それより何より中が生ではいただけない。割った断面をフライパンに当て、さらに加熱。

黒く焦げた楕円形の肉の塊が四つ、フライパンにそびえ立つ。

(まるで欧米の墓石みたいだ)

 

ーーそして数分後。

 

「できた!」

皿に移したハンバーグ、いや、黒焦げの肉の断片画像を送る。

「これはなんだ!!!」

どうやら料理上手な主婦のお眼鏡にはかなわなかったらしい。そして、私にはやはりウーバーイーツが必要なのだということが分かった。

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2件のコメント

ヤバい、漫画みたいに見事な失敗ですね(笑)
なんでも出来るりかさんものニガテを発見しました!

アタシの方がビックリだよ!こんなことってあるの?!
失敗の域を超えてるよね・・・

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