ベランダにブルーシート、レンガで重石とくれば

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正月早々、大量の食糧が届く。

こんなめでたくも嬉しいことがあるだろうか。

 

帰省を拒否した母親が罪悪感から「代わりに食べ物を送る」と言うが、思いもよらぬごちそうが続々と届くため、こちらからお断りする始末。

本日も朝からクール宅配便の配達員が忙しく我が家を訪れる。

かれこれ4人が荷物を置いて行った。

 

じつは我が家、冷蔵庫がない。

 

正確に言うとあるにはある。

だがワンドアの小さな冷蔵庫、よくホテルに設置されている「ミニバー」というやつだ。

それゆえ、冷凍室がないので自宅でアイスを食べることができない、という不便さを感じながら生活を送っている。

 

ではクール宅配便で送られてきた大量の食糧をどのように保管するのか、気になるだろう。

この時期限定ではあるが、自然の恵みを利用するのだ。

 

冬だけ利用できる大冷蔵庫、ベランダ。

 

すでにいくつかの食糧が大冷蔵庫で保管されている。

昨日購入したホールのケーキ、段ボールいっぱいのリンゴなどが陣取っている。

 

外気が10度未満のため、実際の冷蔵庫とさほど変わりないのだが、直射日光は遮断しなければならない。

 

そこで活躍するのがブルーシート。

 

気温7度、直射日光をブルーシートで遮ることで立派な天然大冷蔵庫が完成。

シートの端っこをレンガや木材でおさえれば、風でめくれる心配もない。

 

(・・よし)

 

一歩離れて食糧たちを見下ろす。

ブルーシートで保護された姿は、まるで死体を隠しているかのよう。

 

ベランダのなかでも日陰となる位置へ、一列に並べたその長さは約1メートル50センチ。

ちょうど人間が横たわっているような長さと立体感だ。

 

まぁそれはそれで良しとして、届いたばかりのモチを手土産に友人の家へ向かった。

 

 

表参道のタワーマンションに住む友人の部屋には、モチを焼く機械があった。

正確には、焼き鳥やハマグリを焼く卓上コンロ。

だが網の上にモチを置けば、モチはきれいに膨らむ。

 

次々とモチを並べては膨らませるのだが、ここでモチの好みが分かれた。

 

友人は焦げ目のついたザ・モチという感じの焼き方が好みらしい。

それに対して私は、焦げ目も硬い部分も一切ない、やわかくて白いモチが好み。

 

友人なりの最高の焼き加減で出してくれたモチは、残念ながら私にとっては失敗作。

その後は私がモチ焼き機を陣取り、自分好みのモチを焼き続けた。

 

ところで、友人の家の冷蔵庫はデカい。

立った状態で中の物が取り出せるほか、冷蔵室と冷凍室、野菜専用室やチルド室が付いている。

そして冷蔵庫の中には電気がついており、明るくて見やすい。

 

今どきの冷蔵庫はそれが当たり前だ!と叱られそうだが、我が家のミニバーには照明などついていない。

夜中にごそごそと飲み物を取りに行くと、冷蔵庫を開けても真っ暗でなにも見えない。

 

ただし大した物も入っておらず、見えなくてもどこに何があるかは分かるため、さほど困ってはいないのだが。

ましてやベランダでブルーシートを被せた状態を「大冷蔵庫」などと開き直っている私にとっては、これ以上の文明の利器は存在しないだろうと言うほどに驚いた。

 

そういえば、(友人は)なんて無駄なことをしているんだろう、と眉をひそめたことがある。

市販の食器用洗剤をオシャレな容器に入れ替えて使っていたことだ。

なぜそのような手間をかけて無駄なことをするのか尋ねると、

 

「生活感を出したくないんだ」

 

なるほど。

だからシャレた外見の日用品ばかり並べてあるんだな。

 

ちなみに私は、トイレやバスルーム、キッチンをピカピカにしておくことが得意。

キレイなものはキレイな状態で保ちたいのだ。

キッチンなど元から使わないので、年がら年中ピカピカ。

これこそが数少ない我が家の自慢でもある。

 

話はモチ焼き機に戻る。

この滅多に活躍しないであろう調理器具の、どこが気に入っているのか聞いてみた。

 

「煙が出ないところかな」

 

モチ焼き機は電熱線の下に水が溜まっており、網の上で肉を焼けばそのアブラが水へと落下する。

そのため、煙の原因となる「アブラが燃えること」を防いでくれるのだそう。

何を焼いても室内が臭くならないのはそのためらしい。

さらに網をどかせばそのまま串焼きを炙ることもでき、料理のレパートリーが増えるわけだ。

 

モチ好き・肉好きの私にとっては喉から手が出るほどほしい一品。

とはいえ、まずは普通の冷蔵庫を買うべきだということも承知している。

 

(モチや肉を焼く時にココへ来ればいいだけのことだ。決して盗んだりはしない)

 

 

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