その昔、親から「みんながやってるんだから、あんたもやりなさい!」などと言われると、「じゃあ、みんなが死んだらあんたも死ぬの?」と反発していたわたし。
多くの親(殊に日本人)というのは、子どもを納得させるための説明ではなく、「みんながやっているから」という意味不明な理屈で何かをやらせようとする習性がある。
あれは語彙力のなさからくるものなのか、それとも単に説明が面倒だからなのか、いずれにせよ「みんながやっているから」という”謎の協調性”を強要されることに、とてつもない嫌悪感と殺意を抱いていたのである。
そんなわたしが、「みんながそうだから」という理由で安心するという、逆転現象に見舞われた。
二週間ほど前から、体調不良というわけではないが体が怠くなり、精神的にもパッとしない日々を過ごしてきたわたし。とにかく体が重いし、断続的に眠気に襲われるという最悪の状態に、精力的な活動はおろか日常生活すら低空飛行状態となっていた。
なんとなく「季節的なものだろう」と予想していたものの、もしもこれが年齢的なものだとすると、この先の人生が真っ暗ではないか——そんなことを思いながら、とある20代の後輩へ愚痴をこぼしたところ、
「マジすか?じつは俺もそうですよ。しかも昨年もそうでした」
と、まさかの共感を得たのだ。しかもその内容が、わたしのソレとそっくりだったことから、「やはり季節的なものなのか」という考えに一票が入った。
また別の日に、同年代の友人に「謎の体調不良で、生命活動に支障が出ている」という相談をしたところ、
「えー、それは私も同じだよ!いつもこの時期にそんな感じになる」
と、これまたまさかの共感を得たのである。程度の多寡はあれど、ほぼ同じような症状であることから、わたしのこの「疲労困憊うつモード」はどうやら季節的なものが原因である可能性が高まった。
それどころか、事あるごとにこの話をしていたところ、ほぼ百パーセントの確率で「自分も同じことを感じている」という答えが、待ってましたとばかりに返ってくるではないか。
つまり、年齢、性別、職業問わず、わたしの周りの多くの人間が同じような体調不良・・というかダウナー系の状態に陥っていたのである。
この傾向から考察するに、ここ最近の”秋をすっ飛ばして冬まっしぐら”の寒暖差のせいで自律神経のバランスが崩れ、体に不調が生じていることを多くの者が感じているわけで、決してわたし一人が被害を被っているわけではない——そうか、みんながそうなら安心だ!
*
小学生の頃、あれほどまでに「みんがやっているから」「みんながそうだから」という、根拠に欠ける稚拙な屁理屈を忌み嫌っていたにもかかわらず、ここへきて「みんながそうだから、大丈夫」という、非科学的な共感というか同調意識に救われたわたし。
その結果——なんと、体調不良はどこかへ吹っ飛んでしまったではないか!!
思うに、「自分だけが体調不良で、しかも重大な病気の兆候だったらどうしよう・・」という漠然とした不安を抱えていたにもかかわらず、「みんなもそうなら、これが普通なんだ!」という安直かつ楽観的な解決に至ったことで、急に脳が活性化し始めたのだ。
”病は気から”というが、まさにその通り。周囲の者の多くが、体調不良や精神的な落ち込みを感じている・・と知ったことで、急に気持ちが軽くなり、急に調子が良くなったのだから。
自律神経というのは、われわれの意志とは無関係に体をコントロールする機能であり、スイッチでいうところのオンとオフの役割を果たしている。
そのため、体温を一定に保とうとする自律神経の働きにより、朝晩の冷え込みや日中の温かさといった寒暖差に対応するべく、体温調整機能が頻繁にオンオフを繰り返す——言い換えれば「自律神経のスイッチング」を強いられたことで、神経自体が疲弊しバランスが乱れた結果、倦怠感や不眠、頭痛などの症状が表れたのだ。
(なーんだ、みんながそうなら気にすることないや)
——というわけで、急に活力を取り戻したわたしなのであった。




















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