ベイマックスっぽいスノーマンの、なんとも哀れで短い人生

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(ベイマックスとスノーマンって、やっぱ似てるよな・・)

近所のスーパーに設置されたクリスマスコーナーを物色していたところ、腹にキャンディーが2粒入ったスノーマンが売られていた。胸の部分に"もみの木のボタン"が付いており、それを押すと顔の表情がクルクル変わる——いわゆるスピナーになっており、カチャカチャ押すたびに色んな表情を見せてくれる・・と思ったら、なんと"もみの木のボタン"が途中で引っかかって戻らないではないか!!

 

ちょっと前にベイマックスの話題で盛り上がった友人へ、プチ・クリスマスプレゼントとして贈ろうと思ったのだが、これではボタンを押すたびにスノーマンの顔が変わるどころか、その都度イライラを発生させてしまう・・うぅむ、ならばあっちのサンタはどうだろう——。

スノーマンの隣に並ぶサンタクロースを手に取ると、同じく胸のボタンを押してみた・・おぉ、勢いよく回るじゃないか! しかも手のひらサイズにもかかわらず、ゴーッと見事な回転音を轟かせているわけで、こちらが本来の回転速度というかスピナーのパフォーマンスなのだろう。

 

ところが、棚の奥まで頭を突っ込んで探すも、スノーマンは最初に手に取ったアレしか見当たらない。そもそもサンタクロースのほうも残り5つくらいで、こんなおもちゃのキャンディー容器ごときがまさかの大人気の模様。

(仕方ない、店員に聞いてみるか・・)

近くで値引きシールを貼っていた店員に、スノーマンの在庫がないか確認したところ、「こちらは現品限りで、時期的にも新たに入荷する予定はないんです・・」と申し訳なさそうに謝られた。ならばやむを得ない、サンタクロースにするか——。

 

そう思ってサンタに手を伸ばしたが、どうしてもスノーマンの表情とフォルムを捨て去ることができないわたしは、思わず壊れたスノーマンを掴んでしまった。

(何度かカシャカシャやってたら直るかもしれない。叩いて直す昭和のテレビばりに・・)

そんな"神話のような物理的ショック"でスピナーが直れば、それこそ修理屋など必要ないだろう。案の定、何度ボタンを押しても戻りが悪かったり、押したまま止まってしまったりと、この商品の特徴ともいえる回転機能は不完全なままだった。——さて、どうするか。

「あのぉ、もしもご購入いただけるようでしたら、半額にさせていただきます・・」

なかなかスノーマンを諦めないわたしに向かって、先ほどの店員がおずおずと近づくとそう告げた。うーん、とはいえそもそも350円なんだよな・・。

 

値引きの提案に傾いたわけではないが、壊れたスノーマンは三カ所を小さなネジで留めてあるだけなので、帰宅したらドライバーで開けてみよう・・と思ったわたしは、値引きされたスノーマンを握りしめてレジへと向かった。

(どうせ簡単な作りだろうから、わたしの手で直るならばそれが最も確実で早いからな)

あぁ、頼むから直ってくれ——。

 

 

(・・・これは、そもそもの部品が悪いんだ)

帰宅するとすぐさまスノーマンを解体してみたが、スピナーを回転させるためのバネや棒、留め具などをバラすも不具合は見当たらない。だが、そもそも部品の幅が足りていないではないか。

——これはさすがに直せないわ。

 

手先の器用な男子やアイディアマン、もしくは機械系の学校を出た者ならばなにか代替案が浮かぶのかもしれないが、しがない一般人であるわたしにはお手上げだった。

友人を喜ばせようと、なんとかしてベイマックス・・いや、スノーマンを渡したかったが、さすがにスピナーが不十分なコイツにギフトの価値はない。残念だがあきらめよう・・。

 

スノーマンの機嫌がいいと稀に勢いよく回転するが、何度かカシャカシャするうちに固まってしまうわけで、「あぁ、こんな簡単なおもちゃですら、わたしには直すことができないのか」と、己の無力さを嘆きつつ行き場を失った哀れなスノーマンを見つめた。

(かといってこのままゴミ箱っていうのも、なんだかなぁ・・)

 

——結果的にわたしは、なんとも捨てにくいゴミを買ってしまったのであった。

 

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