乳、大ピンチ

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自分史上最大のピンチが訪れた。こんなセクシャルかつセンシティブな話題を、恥じらいもなく堂々と発表していいものか・・と迷う気持ちもあるが、躊躇する間もないほどにピンチなのだから、これはもう言わずにはいられない。

いったいどのようなピンチかというと・・なんと、乳が垂れてきたのである!

これは笑い事では済まされない。長年続けてきたノーブラ生活の影響で、いつの間にかわたしの乳は重力に逆らえなくなっていたのだ。

 

ではなぜこの事実に気づいたのかというと、それは"やけに大胸筋が目立つことに、ふと疑問を抱いたこと"が発端だった。普通ならば、大胸筋が立派ならばそれだけ乳も引っ張り上げられるはずである。それなのに、なぜか隆々たる筋肉だけが派手な主張をし、肝心のふくよかな膨らみが姿を消していたのだ。

(・・あれ?オッパイってこんなに下にあったっけ)

中央から両サイドに向かって、まるで北斗の拳のように筋が入った大胸筋の下に、申し訳程度に女性のシンボルである乳がくっ付いている。その異様な光景に、一瞬ゾッとしてたわけで。

鏡がおかしいのかもしれない——いや、そんなことはない。では呪いかなにかの類か?——それも違う。であれば、加齢によりバストの位置が下がった・・ということじゃないか!!!

 

バストの位置が下がる、それすなわち"垂れ乳"とは、果たしてどのような状態なのだろうか。VENUS BEAUTY CLINIC(ヴィーナスビューティークリニック)のコラムによると、

理想的なバストは、鎖骨の中心から両方の乳頭を線で結んだ際に綺麗な正三角形になりますが、垂れ乳だと二等辺三角形になっている状態です。美しいバストの条件として以下のようなものがあります。

①バランスが良く、鎖骨の中心から両方の乳頭を線で結んだ際に正三角形になっている
②ハリがある
③胸の輪郭であるバージスラインがある
④肩から乳頭までの長さが肩から肘の関節までの長さの半分より短い

上記の条件をチェックして、全て当てはまらなかった場合には垂れ乳の可能性があります。

・・このような目安で垂れ乳を判断するのだそう。しかも垂れ乳の開始年齢は、なんと20代半ばからで、美バストを誇れる時期は想像以上に短いことが明らかになった。

 

それにしても、これは我が人生最大の大ピンチである。オンナの象徴であるバストが垂れ下がってしまっては、まだ来ぬモテ期を夢見ることすらできない。しかも最悪なのは、垂れ乳を改善するには「大胸筋を鍛えるか、美容整形をするかの二択」しかないことだ。

わたしの場合、これ以上大胸筋を鍛えたところでバストの位置が上がるとは思えない。ましてや、長年のノーブラ生活により損傷したと思われる「クーパー靭帯(乳と大胸筋や皮膚とを繋ぐ組織)」の修復は不可能であり、残された選択肢は「下垂乳形成(乳房吊り上げ術)」しかないじゃないか——。

 

これはまさかの大出費である。美容クリニックのサイトをハシゴしたが、どこも80万円~150万円という恐るべき金額で、庶民にはとてもじゃないが手が出ない。だからといって、このまま放置していいはずがない。これ以上の崩落を防ぐためにも、なんらかの手を打たねば。

(・・そうだ、アレを試そう!!)

わたしはすぐさま"ナイトブラ"をググった。なんせ「垂れ乳 予防」と検索すると「ナイトブラ」の文字が躍るわけで、このくらいの金額ならば外科手術よりも安価で済む。とにかく、これ以上の大惨事を避けるべく、わたしは血眼になってナイトブラを選んだのである。

(無防備になっている乳を優しく包み込み、本来の位置に固定するのか・・)

おっと、ナイトブラだけではダメだ。日中もしっかりとブラジャーを着用し、24時間体制でバストの下垂を阻止せねば!!!

 

 

こうしてわたしは、今さらながらブラジャーの意義と価値を知ったのである。なんせ、巨乳組は必然的にブラジャーを着用することになるが、微乳・貧乳組にとってはさほど必需品ともいえないわけで、まさかここへきてこんな罠が待ち受けているとは、思いもよらなかったのだ。

あぁ、もう少しバストに配慮する人生を送ればよかった——。

 

Illustrated by 希鳳

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